幽霊和尚さま

ゆうれいおしょうさま

愛媛県の昔話

お腹に赤ん坊のいる女の人が亡くなり、お墓の中で子どもを産みますが、お乳がないので夜中に飴を買って来て育てるという話。

話型名は「子育て幽霊」

昔話として全国に広がっていますが、各地の伝説としても伝えられています。
そうして生まれた子どもは、地域の人やお寺で育てられて、有名人になったり出世したりします。むしろ、有名な人物は伝説的な出生を持つということでしょうか。
京都では、六道珍皇寺に伝説が残っていて、子育て幽霊飴が売り出されています。

ここで紹介した愛媛県の話は、四国八十八か所霊場巡りの伝統のある地で、お接待の精神が感じられます。見知らぬ巡礼を介抱し、墓に葬ってやる人情の深さが、子どもを残して亡くなる母親の情と相まって、ほろっとさせます。

類話によっては、幽霊が買いに来るのは、飴だけでなく、団子やお菓子、砂糖、餅などがあるそうです。


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屁ひり娘

へひりむすめ

愛媛県の昔話

話型名は「へやの起こり」といって、笑い話です。
嫁を家に連れて帰ったのち、嫁が屁をひるための丈夫な小屋を建てて、「部屋」と名付けたというオチから、この話型名がつきました。
けれども、じっさいには部屋の起こりのしめくくり部分がない話のほうが多いようです。
屁の威力をオーバーに語って楽しむのが眼目の話。

類話によっては、義母、義父、夫は、窓から外へ、大根畑や裏山まで飛ばされます。
実家に帰る途中、柿や梨を落とすだけでなく、重荷を積んで動かない馬や、ときには船をも動かします。

想像がどんどん広がって、語り手も聞き手も大笑いする話です。


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はしぼそがらすの神

はしぼそがらすのかみ

北海道(アイヌ)の昔話

ハシボソガラスというのは、ハシブトガラスより、やや小ぶりのカラスで、くちばしも細いです。ユーラシア大陸の草原に広く分布していますが、日本では、高いビルの多い街中ではハシブトガラス、田畑や原っぱなどでは、ハシボソガラスが巣をつくるそうです。

アイヌの人びとは、動物を神として祭ります。自然と調和し共存して生きているからです。
この物語のように、アイヌの人たちは、捕った獲物を全て自分たちのものにしないで、からすの分、きつねの分、鳥の分として置いて帰るそうです。
さきぼそがらすの神は、どうも他の神より位が下のようですが、主人公「わたし」は丁寧にお祭りをしています。


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六地蔵さま

ろくじぞうさま

長野県の昔話

話型名は「笠地蔵」

おじいさんが地蔵に笠をかぶせることと、地蔵にお礼をもらうことをふたつの柱にした話です。ヴァリエーションは様々あります。
地蔵の数は、1,3,6,7など。
地蔵ではなく、お正月さまや、道祖神のこともあります。

絵本で有名になった話では、六地蔵が宝をかついで運んで来ますが、ここ紹介した話では、六地蔵が旅人に姿を変えてやって来ます。
そのお礼は、いくら出してもなくならないお米のふくろだから、呪物ですね。

大晦日の夜にやってくる来訪神の話ともいわれています。


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鬼の面、お福の面

おにのめん、おふくのめん

愛媛県の昔話

話型名「孝行坂」

お面をかぶって悪者から逃れる、という知恵の働きをテーマとする話を「孝行坂」または「鬼の面」といいます。
全国で語り継がれているそうです。

愛媛県に伝わっているこの「鬼の面、お福の面」のストーリーは、「孝行坂」の典型的な形ですが、娘が鬼の面をかぶるのは、山賊を恐がらせることを意図したものではなく、煙を防ぐためで、偶然でした。テーマは「知恵の働き」ではありません。

病気の親に代わって出稼ぎに行く小さな娘、親に何か悪いことがあったのではないかと悲壮な思いで家に向かう娘、真っ暗な夜道。峠に灯りがひとつ、そこにいたのは恐ろしい悪党たち。最悪の状況で、鬼の面が娘を救ってくれました。

たくさんのお金を手に入れて母親の病気も治って幸せになるという、それまでとは極端な幸福で物語の幕は下ります。
どんなときでも、目の前のことに真剣に向き合えば幸せになれるよ、というメッセージを感じます。


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