命のろうそく

いのちのろうそく

岡山県の昔話

印象的な話ですが、『日本昔話通観』には3話しか載っていない、珍しいものです。
話型名「寿命のろうそく」

ろうそくの長さが人間の寿命を示していて、ろうそくが消えるとき、その人の寿命も終わるという設定で、ストーリーが進みます。
ここで紹介した広島の話では、はしごを登って天国に行きます。天国にろうそくが並んでいるのです。門番が鬼だというのが意外です。
鬼が目覚めないか、子どもたちははらはらしながら聞きます。

ろうそく=寿命というモティーフは、グリム童話にあります。KHM44「死神の名づけ親」。ここでは、ろうそくは、洞窟の中に並んでいます。ヨーロッパにはよくあるモティーフのようです。

共通語テキストは『語りの森昔話集6プレッツェモリーナ』に掲載しています。⇒書籍案内

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海幸山幸(うみさちやまさち)

日本の神話

『古事記』は、上中下の3巻で構成されています。上巻は神代の物語が、時系列でおさめられていて、「海幸山幸」は上巻の最後の話です。
主人公の山幸彦と海の神の娘トヨタマヒメとの間に生まれた男子の子どもが、初代天皇神武です。トヨタマヒメは、本当の姿は巨大ザメです。
山幸彦が天の神ニニギノミコトと土地の神の娘コノハナサクヤヒメの間に生まれていることも考え合わせると、民族多様性を実感します。

山幸彦とトヨタマヒメの結婚は、異類婚です。見てはいけないといわれたのに、お産の様子をのぞき見てしまったために、山幸彦は、妻ににげられるのです。
古いテーマなのですね。

ところで、海幸彦は、大隅隼人の祖といわれています。
隼人舞は、海幸彦が水に溺れるさまを舞にあらわしているとのことです。


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へび婿入り

へびむこいり

新潟県の昔話

話型名「蛇聟入」
異類婚姻譚です。

この話の前半、娘のもとに美しい若者が通って来るんだけれど、いったいだれだか分からない。それで、若者の着物のすそに針を付けておく。その糸をたどって行くと(紹介した話では、糸ではなく血の跡をたどります)、正体は蛇だったというストーリーは、有名です。
かの奈良の三輪山の神さまの話と同じですね。

「蛇聟入」には、2パターンがあって、夜な夜な男が通ってくるパターンは、苧環型と呼ばれます。「おだまきがた」と読みます。
おだまきは、糸を巻いた物。おだまきから糸を繰りだして、機(はた)で布を織ります。

蛇は、三輪山伝説では神さまですが、昔話では、多くが異類としての蛇です。
日本の異類婚姻譚では、結末は別離で終わることが多く、この「へび婿入り」もそうです。
ヨーロッパの昔話では、異類は魔法にかけられた人間で、ラストはまほうがとけてハッピーエンドが多いですけれど。

また、苧環型の蛇婿入りは、五月五日や三月三日、九月九日といった節句の行事のいわれに結びつくことが多いようです。神さまであった痕跡なのでしょうか。


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山伏とたぬき

やまぶしとたぬき

長崎県の昔話

近年まで、ふだんの生活の中できつねやたぬきに化かされた話が、まことしやかに語られていました。
自然の中で、人間の知恵では解明できない何事かが起こると、それを超自然の存在のせいにして納得したのでしょう。
たぬきやきつねは、家畜ではなく野生動物ですが、かつては身近にいた者たちです。
わたしも、山のふもとで、まさかと思うような迷子になったことがありますが、あれはきっと狐に化かされたにちがいないと、今でも思っています。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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沼神の手紙

ぬまがみのてがみ

岩手県の昔話

話型名は「沼神の手紙」。「水の神の文使い(みずのかみのふみづかい)」とも言います。
水の神に手紙を届けたために、財宝を得るという昔話。

東日本に多く伝わっているそうです。
沼や池の伝説として伝わっていることが多いといいます。今回紹介した話も、伝説的です。黄金をひる馬が駒ヶ岳になったと、地名由来の伝説として語られていますね。

沼の主は、大蛇や河童ですが、女性になって出現します。

手紙の書き換えのモティーフが中心になっていて、グリム童話の「三本の金髪をもった悪魔」や「手を切られた娘」のようなヨーロッパの昔話を思い出させます。いわゆるウリアの手紙のモティーフですね。こちら⇒《昔話雑学》
ただ、「沼神の手紙」の類話では、手紙を書き換えないでそのまま持って行って、しかも財宝を手に入れるというパターンもあります。

高学年から大人まで楽しめる、夏向けのおはなしです。


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