「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

おきあがりこぼし

鹿児島県の昔話

原題は「親に逆らわぬ子」ですが、この主人公は、ただ親のいうなりになって主体性を持たないおとなしい子ではありません。親の提案を自分の課題ととらえて解決していきます。

不思議なおきあがりこぼしと出会うのは、もう縁としか言いようがありません。
深く考えずにでも前向きに楽天的に歩いて行ったら道は開けるんだなあと、聞いた後、ホッとした気持ちになります。これもまた人生の一面ですね。


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三人の兄弟

さんにんのきょうだい

宮城県の昔話

話型名「三人兄弟」。兄弟の優劣、争い、協力を主題とした昔話。
そのうちでも、ここで紹介した「三人の兄弟」は、「三人兄弟・盗人型」といわれるもので、全国に分布しているそうです。

ぶっかけお椀やしゃもじなどの呪物の力で出世するところや、たまたまそれぞれの手に入れた職業・地位が、約束の期日に三人を逢わせるという状況の一致が、ファンタジーとしての面白さを創り出しています。

類話は世界じゅうにあります。
ちなみに、グリム童話では、KHM124「三人兄弟」、KHM129「腕利き四人兄弟」があります。比較してみてくださいね。


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毘沙門さまの授かり子

びしゃもんさまのさずかりご

宮崎県の昔話

話型名「一寸法師」
ATU700「親指太郎」

指ほどの大きさの男の子が冒険に出る話。どうして世界じゅうに、こんなに有名な話として伝わっているのでしょう。
昔話の主人公は、末っ子だったり、食べる物がないほど貧しくて捨てられたりして、極端な存在であることがよくあるのですが、3センチほどの大きさというのは、極端すぎますね。
日本では、たにしやかたつむりとして生まれる話もあります。
ファンタジーの楽しさが満開といえば、それまでですが(笑)

類話の「五分次郎」こちら⇒も見てくださいね。こちらの解説もあわせて見ていただくと、興味深いと思います。

毘沙門天は、軍神。戦いの神さまです。
その授かり子だから、鬼もやっつけるくらいに強いのです。


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小僧さんとねこの絵

こぞうさんとねこのえ

青森県の昔話

話型名「絵猫と鼠」
巧みに描かれた絵の中のねこが画面を抜け出して古ねずみを殺すという化け物退治譚です。

ねこの絵ばかり描くという、大人の価値観から見たらつまらないことに一生懸命になっている姿は、我が子の姿にだぶって見えます。
お寺を追放されるまで描き続ける小僧さん。
でもその絵のおかげで危機を逃れ、それどころかお寺の住職になってしまう。将来安泰(笑)。しかも、一生好きな絵を描いて暮らすことができるのです。

子育てに、このような視点は大切ですね。
子どもたちにも、勇気を持てといってやりたいです。
短いけれど、深いメッセージのあるいいはなしです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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山神さま

やまがみさま

鹿児島県の昔話

話型名は「山神と童子」
子どもが山神に弁当を与えることによって福を得る話。

沖永良部島の話では、山神は三日間弁当を食べ、そのお礼をするから天竺の寺へ参れといいます。山のてっぺんではなくて天竺の寺です。仏教と関りがありそうです。
その道中、長者の娘の病気を治す方法、宿屋の三段花の二本が枯れた理由、渡し守の女が昇天できない理由をたずねて来てくれと頼まれます。課題が三つですね。
今回紹介した甑島の「山神さま」は課題が二つですが。

ここで思い出すのが、グリム童話KHM29「三本の金髪をもった悪魔」です。
そうなんです。「山神さま」はこの類話なのです。ずいぶん雰囲気が異なりますね。

ATU461「悪魔の三本のあごひげ」
類話は世界じゅうにあって、多くは、グリムのように、前半に予言のエピソードがあります。日本の話にはこのエピソードはありません。そのため、ドラマチックさに欠けるのですが、おかげで、話のテーマがくっきり見えてきますね。

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