「かわいそうな話」カテゴリーアーカイブ

蚕の始め

かいこのはじめ

山梨県の昔話

話型名は「蚕由来」といいます。二つの系統があるそうです。
ひとつは「おしらさま」として有名な馬と娘の異類婚姻譚。
もうひとつは、ここに紹介した話で、継子話でもあります。これは、筑波の蚕影神社(こかげじんじゃ)の縁起として知られている話です。
どちらの系統も、風土の伝統や宗教的な色合いが残っていて、悲しい最後になっています。
養蚕は、全国に広がる一大産業でもありましたが、それに従事する農民たちにとっては、厳しい自然の中での一家総出での重労働だったからではないでしょうか。

絹糸がどうやってできるかということとともに、高学年の子どもにつたえたい話です。


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こい女房

こいにょうぼう

新潟県の昔話

異類婚姻譚です。そのなかでも、妻が異類の話を「異類女房」と呼びます。
異類には、へび⇒「へび女房」、かえる⇒「かえる女房」、はまぐり、さかな、つる、きつね、ねこ、などがあります。それから、龍王の娘や天女⇒「天人女房」のこともあります。

たいていは、本性を知られたら去らねばならず、結末は悲劇で終わります。
この「こい女房」も、悲しい結末ですね。働き者の若者への妻の思いがあわれです。でも、夫の好奇心も責められるほどのことでもありません。

高学年や大人のおはなし会で、不思議な話として語り継いでいきたいものです。


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天人女房

てんにんにょうぼう

鹿児島県の昔話

天女が、羽衣を奪われて、男の嫁になる、異類婚姻譚です。羽衣伝説として全国で広く伝わっています。たなばたの由来話でもあります。

天人女房の類話は、15世紀の御伽草子にもあるので、とても古くからの伝承なのですね。⇒「あめわかひこ」
そういえば、後半の天にのぼってからの難題婿のモティーフは、古事記にもあります。⇒「根の堅洲の国」。古事記のほうは、主人公は天ではなくて地下の世界へ行きます。

天に飛び去った妻を求めて旅に出る話とざっくり分類すると、世界中にあります。⇒「ガラスの山」など。

古今東西を問わず人気のおはなしなんですね。


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かっこう

長野県の昔話

悲しい話です。
でも、あまり深刻にならずに語るのがいいです。

親孝行をしなさいよということを直接的に説教するのではなくて、物語に託しているのですね。昔話のひとつの役割といえるでしょう。

小鳥前生譚(ことりぜんしょうたん)といって、鳥の鳴き声や色などの由来を語る話が日本じゅうにたくさん残っています。


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幽霊和尚さま

ゆうれいおしょうさま

愛媛県の昔話

お腹に赤ん坊のいる女の人が亡くなり、お墓の中で子どもを産みますが、お乳がないので夜中に飴を買って来て育てるという話。

話型名は「子育て幽霊」

昔話として全国に広がっていますが、各地の伝説としても伝えられています。
そうして生まれた子どもは、地域の人やお寺で育てられて、有名人になったり出世したりします。むしろ、有名な人物は伝説的な出生を持つということでしょうか。
京都では、六道珍皇寺に伝説が残っていて、子育て幽霊飴が売り出されています。

ここで紹介した愛媛県の話は、四国八十八か所霊場巡りの伝統のある地で、お接待の精神が感じられます。見知らぬ巡礼を介抱し、墓に葬ってやる人情の深さが、子どもを残して亡くなる母親の情と相まって、ほろっとさせます。

類話によっては、幽霊が買いに来るのは、飴だけでなく、団子やお菓子、砂糖、餅などがあるそうです。


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