「女の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

鬼の面、お福の面

おにのめん、おふくのめん

愛媛県の昔話

話型名「孝行坂」

お面をかぶって悪者から逃れる、という知恵の働きをテーマとする話を「孝行坂」または「鬼の面」といいます。
全国で語り継がれているそうです。

愛媛県に伝わっているこの「鬼の面、お福の面」のストーリーは、「孝行坂」の典型的な形ですが、娘が鬼の面をかぶるのは、山賊を恐がらせることを意図したものではなく、煙を防ぐためで、偶然でした。テーマは「知恵の働き」ではありません。

病気の親に代わって出稼ぎに行く小さな娘、親に何か悪いことがあったのではないかと悲壮な思いで家に向かう娘、真っ暗な夜道。峠に灯りがひとつ、そこにいたのは恐ろしい悪党たち。最悪の状況で、鬼の面が娘を救ってくれました。

たくさんのお金を手に入れて母親の病気も治って幸せになるという、それまでとは極端な幸福で物語の幕は下ります。
どんなときでも、目の前のことに真剣に向き合えば幸せになれるよ、というメッセージを感じます。


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お雪といちご

おゆきといちご

山梨県の昔話

まま母にいいつけられて雪の山へいちごをつみに行く娘。雪の中でこごえそうになったとき、おじいさんの家に導かれます。いろりを囲んで、十二の月の精たちが座っています。スロバキア民話の「十ニの月のおくりもの」を思い出しますね。

このお雪の話は、日本ではここでしか語られていないそうです。昭和11年刊の『続甲斐昔話集』所収です。山梨県の郷土史家土橋里木氏が聞き書きされました。この話を土橋氏に語った人は、もしかしたらヨーロッパの「十二の月のおくりもの」をどこかで聞くか読むかして、語りのレパートリーにしたのでしょうか。

情景描写が少なく、ストーリーは短いですが、きちっとした継子話(こちら⇒)になっています。そして、ヨーロッパの伝承では森の中のたき火ですが、ここでは、山の一軒家のいろりになっています。日本らしい換骨奪胎といえます。

ATU480「親切な少女と不親切な少女」。グリム童話の「ホレばあさん」の類話です。


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娘のくりひろい

むすめのくりひろい

新潟の昔話

話型名「糠福米福」。全国で非常に多く語られている継子話です。「米福粟福」ともいいます。栗拾いではなく椎の実拾いだったり、援助者が旅のお坊さんではなくて、山姥、おばあさん、神仏、亡くなった母親の霊である鳥だったりします。
ところで、グリム童話「灰かぶり」に登場する白い鳥が、亡母の霊だったことを思い出してください。舞踏会に行く美しい衣装と靴を出してくれますね。お坊さんのくれた小箱も同じまほうです。灰かぶりは靴を残していきますが、ここでは下駄になっています。そっくりですね。
そうです、「糠福米福」は、世界的に見ると、ATU510a「シンデレラ」に属します。シンデレラは、世界的にもっとも広く分布しているといわれる継子話です。
継子話を、自分を支配する存在(母親)から迫害を受け、あるいは阻害され、自分にとって唯一の援助者の力を得て、幸せをつかむ話、と考えると、だれもに心当たりはあり、渦中にいるとき、大きな希望になるのではないかと思います。だから、普遍的に広がっているのではないかと思います。
内容的に、高学年向きでしょう。

 

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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うりひめの話

うりひめのはなし

長野の昔話

話型名は「瓜子姫」。全国に分布しています。子どもに語ると、冒頭で「ももたろうと同じだ」と声が上がります。どちらも異常誕生に分類されています。
瓜子姫は大きくふたつの型に分けられます。うりひめが殺されてしまうものと、この話のように結婚するものとです。前者はちょっと残酷な描写があります。柳田国男は、後者が古い形で、もともとは外国から入ってきたのではないかといっています。ATU番号は408「3つのオレンジ」。そういえば、あまんじゃくは、偽の花嫁ですよね。
あまんじゃくが殺されて、その血でソバとカヤの根元が赤くなったという結末もあります。
この話は、瓜子姫が幸せになることと、あまんじゃくが罰せられないことがいいなと思って再話しました。

共通語テキストは、『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。⇒書籍案内

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