「由来話」カテゴリーアーカイブ

沼神の手紙

ぬまがみのてがみ

岩手県の昔話

話型名は「沼神の手紙」。「水の神の文使い(みずのかみのふみづかい)」とも言います。
水の神に手紙を届けたために、財宝を得るという昔話。

東日本に多く伝わっているそうです。
沼や池の伝説として伝わっていることが多いといいます。今回紹介した話も、伝説的です。黄金をひる馬が駒ヶ岳になったと、地名由来の伝説として語られていますね。

沼の主は、大蛇や河童ですが、女性になって出現します。

手紙の書き換えのモティーフが中心になっていて、グリム童話の「三本の金髪をもった悪魔」や「手を切られた娘」のようなヨーロッパの昔話を思い出させます。いわゆるウリアの手紙のモティーフですね。こちら⇒《昔話雑学》
ただ、「沼神の手紙」の類話では、手紙を書き換えないでそのまま持って行って、しかも財宝を手に入れるというパターンもあります。

高学年から大人まで楽しめる、夏向けのおはなしです。


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たからげた

岡山県の昔話

呪宝譚です。こちら⇒《昔話雑学》

一本歯の下駄は、山伏や天狗が履いているイメージですね。最近、健康にいいと人気が出ているそうですが(笑)。
この話に出てくる下駄は,履いて転ぶとそのたびに小判が出てくるという不思議な力を持っています。ただし、転ぶたびに身長が縮みます。

最後のオチに出てくるゴンゾウムシは、ゾウムシの一種で、米くい虫とも呼ばれる害虫です。無農薬玄米を買うと、たまに入っています。

短い話ですが、ファンタジックでしかも深いメッセージがあります。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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ねこの口ひげ

広島県の昔話

とらは、もともと日本にはいない動物なのですが、昔話やことわざなどで、身近なものとして登場します。「ねこの口ひげ」のとらも、中国からやって来ますね。

話型名「狐と獅子と虎」。
日本のきつねと、唐(中国)のとら、天竺(インド)の獅子が、だれがいちばん強いか、また速いかを比べる話です。
前半は駆け比べ、後半は力比べです。後半で大声で吠える競争をして、獅子は大きな声を出しすぎて、首が飛んでしまいます。きつねが獅子の首を日本に持って帰って、獅子舞の頭にしたという由来ばなしになっています。

前半だけで終わる話もたくさん伝わっています。
「ねこの口ひげ」もそうですね。勝利を得る方法は、きつねが仲間に終点の所で待っていてもらうというもの。
きつねととらだけでなく、とらとかめ、くじらとなまこ、唐の鵜と日本の鵜、などがあるそうです。
後半まである類話では、きつねが虎のしっぽにくっついて行くという方法で勝ちます。

二匹の動物が競争する話は世界じゅうにあります。
《外国の昔話》に、アフリカ・コンデ族の「かめとぞうのかけくらべ」を紹介しているので、こちらの解説も参考にしてください。(こちら⇒

また、小さな動物が大きな動物に勝つ話について、マックス・リュティの解説を《井戸端会議》で紹介しています。(こちら⇒


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あまがえる

茨城の昔話

全国に残っている昔話です。朝鮮半島や中国にもあるそうです。
話型名は「雨蛙不孝」といいます。親不孝を戒めるおはなしですね。
子どもが親に口答えしたり、いうことを聞かないことが重なると、祖父母がこんな話をしたのかなあと想像します。じかに説教をするのではなく、物語で教えようとする文化を取りもどしたいです。
この話は蛙ですが、トンビやハトの場合もあります。また、親のいうことを聞かない男の子が、あまがえるに生まれ変わったという伝承もあります。


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いのししとかめ

長野の昔話

来年の干支「いのしし」の話です。お正月に間に合うように再話しました。短いのですぐに覚えられると思います。これは長野県の伝承ですが、どうぞご自分のお国言葉になおして語ってください。
幼い子ども向きの由来話です。
いのししは、東北から沖縄まで広く生息していて、古来から人々の生活に深くかかわっていたそうです。狩りをして食料にもしますが、田畑に害を及ぼす困った存在でもありました。となると、やはり、神としてあがめられたのです。鹿や熊など人間のそばにいる他の野生動物たちと同じです。山の神が白いいのししとなって現れるという伝承もあったそうです。

共通語テキストは、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。⇒書籍案内

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