「異界に行く話」カテゴリーアーカイブ

息子とかみなりさま

むすことかみなりさま

岩手県の昔話

笑い話です。
話型名は「源五郎の天昇り」。
主人公はなすびの大木を登って天に着きますが、なすびではなくて、まめ、そば、桃などの大木を登っていく話もあるそうです。
木登り以外にも、桶屋がたがにはじかれたり、傘屋が傘につかまって風に飛ばされたりして、天に行きます。

大木を登ってが天まで行くというモティーフは、「ジャックと豆の木」「天までとどいた木」こちら⇒など、世界じゅうにありますね。

ここでは天から落ちて、桑の木に引っ掛かりますが、他の話では、海に落ちて竜宮に行ったり、琵琶湖に落ちて源五郎ブナになったり、五重塔に引っかかったりと、さまざまな形に展開しています。

空間を越えて物語が展開する壮大さと、雷が鳴ると桑の枝を軒端にさすという身近な風俗の由来の組み合わせがおもしろいです。

七夕まつりのおはなしでもあります。
たなばたのおはなし会でどうぞ。


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お雪といちご

おゆきといちご

山梨県の昔話

まま母にいいつけられて雪の山へいちごをつみに行く娘。雪の中でこごえそうになったとき、おじいさんの家に導かれます。いろりを囲んで、十二の月の精たちが座っています。スロバキア民話の「十ニの月のおくりもの」を思い出しますね。

このお雪の話は、日本ではここでしか語られていないそうです。昭和11年刊の『続甲斐昔話集』所収です。山梨県の郷土史家土橋里木氏が聞き書きされました。この話を土橋氏に語った人は、もしかしたらヨーロッパの「十二の月のおくりもの」をどこかで聞くか読むかして、語りのレパートリーにしたのでしょうか。

情景描写が少なく、ストーリーは短いですが、きちっとした継子話(こちら⇒)になっています。そして、ヨーロッパの伝承では森の中のたき火ですが、ここでは、山の一軒家のいろりになっています。日本らしい換骨奪胎といえます。

ATU480「親切な少女と不親切な少女」。グリム童話の「ホレばあさん」の類話です。


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寅千代丸

とらちよまる

鹿児島の昔話

鹿児島県の沖永良部島で伝承されていた昔話。
もとの語り手がつけた題は「神様の申し子」です。
赤い花が咲けば男の子、白い花が咲けば女の子が生まれるという予言や、駿馬に乗り、七人力の刀をたずさえて彼岸に出かけて行くというモティーフなど、ヨーロッパ的な雰囲気がありますね。まるで竜退治のようです。
この話型の話は、南西諸島の限られた地域にだけ残っているそうです。
日本の話では、アイヌの話と南の島の話が他と違うスケールを持ったものが多いです。
名前など、言葉が耳慣れませんが、内容的には4年生くらいから聞けると思います。いじめにあった寅千代丸がどのように生きて幸せになるか、勇気づけることができればと思います。

 


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地獄めぐり

じごくめぐり

徳島の昔話

話型名は「閻魔(えんま)の失敗」といって、日本全国に伝えられています。笑い話で、『日本昔話通観』では、その「誇張」に分類されています。笑い話は短いものが多いのですが、「閻魔の失敗」譚は、長いですね。旅の職業人によって、改作されながら伝えられたのではないかといわれています。
徳島県のこの話では、お医者と、山伏と鍛冶屋が地獄送りになりますが、ほかに、歯医者、軽業師が出てくる話もあります。
地獄に送られた三人は、それぞれ自分の特技を生かして、切りぬけます。剣の山では、鍛冶屋が金(かね)のわらじを作って剣をこわします。熱湯の釜では山伏が水の印を結んで水に変えます。鬼の口の中では、医者が薬をまきます。条件の一致がそのまま笑いになっています。
落語の世界でも江戸時代から話されていたとのことです。いまは、関西では、『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』という演目で、一時間以上かかる大ネタです。この落語をもとに作られた絵本『じごくのそうべえ』(田島征彦作/童心社刊)は、子どもたちに人気です。


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こぶとりじいさん

大分の昔話

話型名は「瘤取り爺」。東北から九州にまで分布している、よく知られた昔話です。古くは『宇治拾遺物語』にも載せられています。『宇治拾遺物語』では、おじいさんが山の木の洞に入って雨宿りをしていると、鬼にでくわします。全国に伝わっている話もこのシチュエーションが多いようです。今回再話した大分県のこの話は、冒頭が、ねずみ浄土や地蔵浄土のような始まり方ですね。そして、出会うのは鬼ではなくて天狗です。天狗になっている類話は比較的多いようです。
ところで、この話は、世界的にも類話がたくさんあります。ATU503「小人の贈り物」です。《外国の昔話》にオーストリアの「こびとのおくりもの」を紹介しているので、くらべてみてくださいね。

共通語テキストは、『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。 ⇒書籍案内

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