ぬすっとにんぎょう
熊本県の昔話
ふしぎな人形です。呪宝と考えてよいのでしょうが、人のものを盗むというか、主人公を盗人にする力を持つ人形です。しかも、盗人になった主人公は、父親に認められます。このあと、主人公はどんな人生を送るのだろうと、思わず考えてしまいます(笑)
この話は二人兄弟の弟ですが、三人兄弟の末っ子の類話が多くて、「三人兄―弟盗人型」という話型です。全国に伝わっています。
昔話には、さまざまな思いがけない主人公が登場しますね。
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やまんばあとまごどん
話型名「牛方山姥」「馬方山姥」
牛も馬も、農耕や運搬に重要な役割を果たす家畜でした。生活を共にし、世話をしました。
商品のぶりだけでなく、そんな大切な馬を、やまんばあは食ってしまったのです。馬子どんが復讐するのも無理はありません。
ストーリーは、前半が逃竄譚(⇒《昔話雑学》)で、怖い山姥。ハラハラドキドキさせてくれます。
後半は、一転してこっけいな山姥。馬子に簡単に手玉に取られます。
山姥の二面的性格が面白いです。
こういう笑い話化は、聞き手の要求に応えるものではないかと言われています。
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話型名「鳥呑み爺」。動物の力によって富を得る本格的な話のひとつです。全国に伝わっています。
おじいさんは、意図せず思いかけず鳥を飲みこんでしまいます。これが古い形で、意図的に鳥を殺して食べる話もあるそうですが、それは新しい形だそうです。
鳥は、カモ、シジュウカラ、ヤマガラなど。紹介した話では、単に「鳥」となっていますが、歌の中に「しじゅうがらがら」とあるので、シジュウカラなのでしょう。
鳥の歌は、ほんとに多様です。たとえば、
「あやちゅうちゅう、錦のおん宝おん宝、助かった」
「しじゅうからからすっぺらぽん、鴨食てポン、どじょう食てポン、のどがこそばゆいチンカンポン」など。
ここは、聞かせどころ、笑わせどころですね。
上手く語れば、子どもたちはいっしょに歌ってくれるでしょう。
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いのししをはなしたはなし
形式譚で「はなし」とよばれる話群に属します。
聞き手にもっとお話をしてとせがまれたときの話です。
かつての語り手たちは、さまざまな工夫をしています。鼻に椎の実が入って「はなしい→はなし」とか、口を開けたら歯がなくて「はなし」とか、だいこんに葉がなくて「はなし」とか。
「きもだめしのはなし」⇒こちらも、結末が「はなし」ですね。
「いのししを放した話」は、形式譚「はなし」より崩れた形になっていますが、しゃれ落ちであることには変わりありません。
昔話は語り手と聞き手がつむぐものということが、とてもよくわかるお話ですね。
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