「ふしぎな話」カテゴリーアーカイブ

山神さま

やまがみさま

鹿児島県の昔話

話型名は「山神と童子」
子どもが山神に弁当を与えることによって福を得る話。

沖永良部島の話では、山神は三日間弁当を食べ、そのお礼をするから天竺の寺へ参れといいます。山のてっぺんではなくて天竺の寺です。仏教と関りがありそうです。
その道中、長者の娘の病気を治す方法、宿屋の三段花の二本が枯れた理由、渡し守の女が昇天できない理由をたずねて来てくれと頼まれます。課題が三つですね。
今回紹介した甑島の「山神さま」は課題が二つですが。

ここで思い出すのが、グリム童話KHM29「三本の金髪をもった悪魔」です。
そうなんです。「山神さま」はこの類話なのです。ずいぶん雰囲気が異なりますね。

ATU461「悪魔の三本のあごひげ」
類話は世界じゅうにあって、多くは、グリムのように、前半に予言のエピソードがあります。日本の話にはこのエピソードはありません。そのため、ドラマチックさに欠けるのですが、おかげで、話のテーマがくっきり見えてきますね。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

みそ買い橋

みそかいばし

岐阜県の昔話

夢の知らせによって宝を発見する致富譚の一話型です。「みそ買い橋」とか「夢の橋」とかいわれます。
とっても日本的なストーリーのように思われますが、実はヨーロッパを中心にたくさんの話が伝わっています。

ATU1645「宝は自分の家にあり」。
古くは13世紀のペルシャ語の文献にあるそうです。
グリム兄弟の伝説集にもこの話はありますが、よく知られているのは、イギリスのジェイコブスの昔話集に入っている「スウォハムの行商人」です。

じつは、この「スウォハムの行商人」が、大正時代、日本語に翻訳されて『世界童話大系』に収録されました。それを読んだ岐阜県高山市の小学校の先生が、換骨奪胎して、高山のふるさとの話として子どもたちに語りました。それが日本じゅうに「みそ買い橋」として広がったのだそうです。
『世界童話大系』は第1巻が1925年ごろの出版ですから、「みそ買い橋」は日本の昔話としては新しいのですね。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語の語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

わらしべ長者

わらしべちょうじゃ

広島県の昔話

わらしべ一本を、たまたま出会った人と次々に交換して、最後は幸せになる話。
この話の面白さは、「たまたま」にあります。そんなうまくいくはずがないと笑ってしまうような出会い。それも、奇跡というような大きな出会いではなく、小さな出会いです。昔話によくある状況の一致が次々と連鎖しています。
そして、その交換には、主人公の親切、というより無欲があります。
もともと、観音さまに出世を願ったはずですが、主人公は手に入れたものをあっさり手放します。もし途中で欲を出して、例えば布を売るとか馬を使って仕事をするとかしたとしたら、この連鎖は切れてしまいます。

どうにも生きていかれなくなったときに、主人公は観音さまに願をかけました。そして、お告げを信じ、自分の運命を信じて歩いて行った。
最後の屋敷の主人は、ひょっとしたら観音さまの化身ではなかったかと思ったりもします。若者の出発点だった西に向かって行ってしまったのですから。

類話はいろいろあります。
親に追い出されて、ハスの葉や三年みそ、刀と交換する話は「三年味噌型」と呼ばれています。
観音さまのお告げを受けて、アブ、みかん、反物、馬と交換するのは「観音祈願型」。これは、『今昔物語集』巻16に、第28「長谷に参りし男、観音の助けに依りて富を得たる話」として入っています。古いですね。平安時代です。わたしが幼いころ絵本で読んだのも「観音祈願型」だったので、嬉しくて、この広島県の話を再話しました。

話型名「藁しべ長者」。世界的には、全く同じ話型のものは少ないそうですが、ATU1655「有利な交易」が近いということです。韓国の「藁縄一本で長者になる」話が似ているそうです。残念ながら未見。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

日常語の語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

化け物問答

ばけものもんどう

長野県の昔話

問答というのは、問うことと答えること。
ここでは、おまえは何者かと名前を問い、化け物が答えます。
話型名「化物問答」
言葉の力によって化け物を退治するという話型です。

岡山県に伝わる類話もおもしろいのですが、まずは、比較的短くて、小さな子でも聞いて分かり易いあまり恐くない長野県の伝承を紹介します。

言葉のリズムを楽しみながら語るといいと思います。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ

とほう

新潟県の昔話

原題は「鼻たれ小僧」。話型名「竜宮童子」です。

竜宮からもらってくる小僧の名前は、ここでは「とほう」ですが、ほかに、「はぎわら」「よげない」「ひょうとく」「うんとく」「うん」などの名前があるそうです。その土地の言葉で何か意味がありそうですが、調べようがありません。

海や川に、花や薪を投げ込んで、亀や魚に竜宮に連れて行ってもらい、お土産をもらってくるという話は、だいたい三つの種類があるそうです。

ひとつは、この「竜宮童子」。子どもをもらってくる。これがいちばん分布が少なくて、現在、新潟,岩手、熊本に限られているようです。

ふたつ目は、「竜宮小槌」。呪宝をもらって帰り、幸せになって終わる。

三つ目は、「竜宮子犬」。富を生み出す子犬をもらって帰る。隣人または兄弟がうらやんで子犬を借りるが失敗して殺してしまう。主人公が子犬の亡骸を庭にうめると、木が生えて、富を落としてくれる。

三つとも設定がよく似た話ですが、結末が異なります。ラストが違うと、ずいぶん雰囲気も違いますし、テーマも変わってきますね。おもしろいです。

下のボタンからテキストをダウンロードできます。

日常語での語りが聞けます。

⇒ 本格昔話一覧へ