絵本テキスト

語るためのテキストを選ぶとき、語るために書かれたものではなく、絵本から選ぶことがあります。その場合の注意点を書いてみます。

絵本と語りとでは、ジャンルが違います。物語を伝える方法が異なっているのです。まずそのことを念頭に置くことが、基本です。

どのように異なっているか、確認します。
語りの場合は、聞き手が語り手の声(と表情)のみから想像して、物語の世界に遊びます。絵本の場合は、聞き手は、絵を見て声を聞いてその世界を楽しみます。そして、絵本の絵は、お飾りではなく、文章では表しえないことや物を描いているといいうことです。

だから、当然、それぞれの文章(テキスト)作りの方法にちがいがあります。

語りのテキストの場合は、聞いて分かり易いことが、何より優先されます。それに対して、絵本は(特に良い絵本)は、絵と文章は切り離すことが難しいほどに一体化しています。 

では、絵本を語りのテキストにしたいときは、どうすればいいのでしょう。

まず、文章のみを取りだして書いてみてください。

そして、
1、聞いて分かり易い文章になっているかどうかを確認します。

さらに、
2、文章にはなくて絵で表現しているものはないか確認してください。つまり文章でぬけ落ちている部分です。

また、
3、ページをめくることで時間の経過をあらわしたり、期待させたり、予想させたり、等、しているところはないかを確認します。

そのうえで、
1と2と3の問題点を解決すべく、文章に手を入れてください。聞いて分かりにくい部分を書きかえる、欠落していることばを補う、という作業をするのです。

その際、注意しなければならないのは、元の文章の持っている語調やふんいきを損なわないことです。作家が練りに練った文章に手を入れるわけですから、これは、とても高度な作業になるでしょう。けれども、できないわけではありません。

語り用のテキストができあがったら、複数の人に聞いてもらって、感想や批評を受けましょう。 

もしうまくテキストを整理できたとしましょう。次は、そのテキストを覚える段階で問題点があります。覚えるとき、絵本の絵を思い浮かべるのではなく、あなた自身の想像力を使わなければなりません。 
絵本の絵は、画家の想像力が作り出したものです。けれども、語りでは、語り手の想像力と聞き手の想像が出会って始めて物語が動きだすのです。
絵本の絵から離れなければなりません。

絵本を読んで、おもしろいと思い、語りたいと思うことはあります。そんなとき、これは、「絵本だからおもしろいのではないか」と、立ち止まって考えることが大切だと思います。

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