おはなしを始めたころは、テキストにある言葉通りにきちんと覚える努力をしてきたと思います。
語りのことばに慣れて、語りをしっかり身につけるためです。
時間はかかりますが、とても大切な作業です。
いっぽう、語りの経験を積んでくると、テキストに手を入れたくなることがあります。つまり、部分的に言葉を変えたくなることが出てきます。
必要ならば、テキストに手を入れてもいいと思います。
むしろ、自分の語り、自分のテキストを作ることは大切ですし、語り手として自然なことだと思います。
ただし、そんなときは、まず、なぜ手を入れたいのかをよく考えましょう。
覚えにくいからという理由で変えることは決してよくありません。
覚えやすい言葉に変えていくと、どんどん安易なほうに流れていって、自分のことばを鍛えることができないからです。これでは、よい語りにはなりません。
しかも、聞き手に焦点があっているわけではなく、語り手の都合でテキストを変えてしまうことになります。
これは、聞き手中心の語りの精神から離れた態度だと思います。
では、どんなときにテキストに手を入れてよいのでしょうか。
1, 聞き手がイメージしにくいとき。
2, ことばづかいが文法的に間違っているとき。
3, ことばのリズムが口調にあわないとき。
このうち、2は正解がすぐにわかりますが、1は聞き手の立場に立たなければできないことなので、少々難しいです。3は音楽的な問題です。
次回から、ひとつひとつ具体的に、くわしく見ていきます。