語りで重要なのは、耳から入ってくる音声をくっきりとイメージできることです。何の苦労もなくイメージできれば、聞き手は、ひたすらストーリーを追っていけます。
ストーリーテリング・昔話は、ストーリーを追うことで、登場人物の経験を追体験して、テーマをつかむことができるのです。
1, 聞き手がイメージしにくいとき(つづき)
前回、前々回でお話したことに、もう少し付け加えます。
c、漢語を和語に置きかえる。
日本語は、発音が同じで意味の違う言葉がよくあります。とくに、漢語(熟語)に多いです。それで、耳で聞いているだけだと意味を誤解してしまうことがあります。そんなときは、和語(日本古来の言葉)に置きかえます。
例)
@東方からやって来る:トーホーが東方なのかどこかの地名なのか、すぐにわかりません。そこで、東の方からやって来るとします。
@日光⇒日の光、お日さまの光
@逃亡する⇒逃げ出す
d、書き言葉を話し言葉に置きかえる
これは必ずしも誤解が生じるわけではありませんが、話し言葉にすることで、耳になじみやすくなります。
例)
@しかし⇒けれども
@また⇒それから
@彼、彼女⇒(人物名)名前で言うことで、ダイレクトにだれのことか分かります。
ただし、cもdも、置きかえる語は、置きかえる前の語と意味がイコールでなければなりません。適切な語が思いつかなければ、もとのままにしておきます。
テキストに手を入れてもよい場合のふたつめと三つめです。
2 ことばづかいが文法的に間違っているとき。
これは、学校で学ぶ国語の力に頼りましょう。
助詞の使い方が間違っていたりすると、なんとなく気持ちが悪いですね。そんなとき、正しく直します。テキストにも誤植があるものです。
3 ことばのリズムが口調に合わないとき。
何度練習してもつっかえてしまう、覚えているのにつっかえてしまう場合があります。そのことで聞き手にストレスを与えるようなら、最後の手段として、言葉を置きかえます。
語り手も生身の人間ですから、うまく発音できない音(おん)もあっておかしくありません。また、土地によって発音が違ったりもします。
そんなときは、もとの文を極力変えないで、でも聞いていて自然な語りにしたいです。
以上、全4回で、テキストを整えることについての、現時点での考えをまとめました。
うまく説明できたか心もとない限りです。
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