数年前、ある高等学校でのことです。
保育科の授業で、生徒たちが保育園の子どもたちに読み聞かせの実習をするというので、その手ほどきに、講師として行ってきました。多くの生徒たちが幼いころに絵本を読んでもらった経験を持っていましたが、まずは「読んでもらう体験」を思い出してもらおうと、何冊かの本を読みました。
『ぐりとぐら』(福音館書店)『いないいないばあ』(松谷みよ子)『かにつんつん』……。キラキラした目を見開いて嬉しそうに聞いてくれる様子は、図書館に来る小さな子どもたちと少しも変わりません。純真さに驚き、心動かされました。
その日は講義で終わり、次の週は、生徒たち自身が本を選んで持ってきて、みんなの前で読むことにしました。できるだけ地域の図書館に行って、たくさんの本のなかから自分の目でよく見て選んでくるようにといっておきました。
当日、生徒たちが持ってきた本は、『しろくまちゃんのほっとけーき』『ねずみくんのちょっき』『11ぴきのねこ』『しろいうさぎとくろいうさぎ』『はらぺこあおむし』『しょうぼうじどうしゃじぷた』などなど。
どれも長く読み継がれているいわゆる古典ばかりでした。
最近、小学校の読み聞かせの時間に、ボランティアのお母さん方が選ぶ本は、新しい目先の変わったものに流れる傾向があります。子どもにワッとウケると読んでいて楽しいし、よろこんでくれていると錯覚するのでしょう。その傾向をずっと苦々しく思っていました。そして、高校生たちも同じ傾向にあるのではないかと思っていたのです。ところが、この結果です。
生徒たちの絵本を見る眼に深く安堵しました。そして、幼いころ読んでもらったよい絵本こそが子どもたちの心に残るのだということも、あらためて確信しました。心に残った絵本が基準となって、それにそって、自分が読む本を選んだのです。
私にとってもよい学びの場となった2日間でした。
古典に学ぶ……絵本選びでも大切なことです。
それから5年以上たった今も、毎年同じ高校に行っていますが、高校生たちの選ぶ絵本は変わりません。
がんばろう~! ボランティアのおとなたち!