はす

インドの昔話

水中の宝を手に入れるには、水に飛びこむ勇気が要ります。じっと待っているだけではだめなんですね。

浦島太郎の竜宮城に限らず、水の底に宮殿がある昔話や伝説は世界じゅうにあります。この話では女神が住んでいます。浦島太郎では乙姫さまですが、ここの女神はおそらくヒンドゥー教のラクシュミーか、仏教の吉祥天でしょう。

はすは、インド原産で、インドの国花でもあります。
インダス文明のころから、聖なる花とされてきたそうです。

この話が記録されたのは、インドのグジャラート州。
マハトマ・ガンジーの出身地です。

高学年向きに再話しました。


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語りが聞けます。

ペトロシネッラ

イタリアの昔話

グリム童話の「ラプンツェル」やイタリアの「プレッツェモリーナ」の類話です。ATU310「塔の中の乙女」。その類話でも、『ペンタメローネ」の「ペトロシネッラ」は、記録された中ではいちばん古い形です。

前半のストーリーは、「ラプンツェル」と同じですが、後半は呪的逃走のモティーフですね。三枚のお札と同じです。

「プレッツェモリーナ」のページも併せて読んでください。こちら⇒

出典の『ペンタメローネ』について、ちょっと説明しておきますね。

『ペンタメローネ』

イタリアのジャンバッティスタ・バジーレ(1575~1632)によって集められた説話集(1634~1636年成立)。
枠物語(こちら⇒)で、10人が1日1話語った物語を50話集めてあるので、『五日物語』といわれています。
「長ぐつをはいた猫」「眠れる森の美女」「シンデレラ」なども収められていて、その古い形を知ることができます。
物語の舞台はナポリで、ナポリの風俗や習慣、信仰など、人びとの生活を、ナポリの方言で生き生きと表現されています。
バジーレは、小説家ですが、民俗学の先駆者とも考えられています。


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語りが聞けます。

とらのまつ毛

朝鮮半島の昔話

虎のまつ毛をかざして見ると、人間の本性が分かる。

日本の昔話「狼の眉毛」とそっくりの話です。「狼の眉毛」は国内のあちこちで記録があるのですが、外国の話ではこの1話しか見つけられませんでした。それがふしぎで珍しいので紹介したいと思い、再話しました。

日本の場合、狼が呪宝をくれる呪宝譚のひとつです。
狼は、日本の伝承では神さま、もしくは神さまに近い存在です。こちら⇒《昔話雑学》。自然神ですね。
では、虎は?
朝鮮半島や中国では、虎はやはり神さまに近い存在です。
日本の話が朝鮮半島に渡って換骨奪胎されたのでしょうか。

日本の「狼の眉毛」では、狼の眉毛を手に入れた主人公は、眉毛を使って幸せになります。でも、朝鮮半島の「とらのまつ毛」では、まつ毛はたいして役に立っていませんね(笑)

そのうち、「狼の眉毛」も語れるように再話したいと思っています。


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語りを聞けます。

勇敢な娘

オランダの昔話

ゆうかんなむすめ

題名の通り、とっても勇敢な娘の話です。寂しいお城でひとりきりで留守番をするお手伝いの娘。そこへ盗賊団が忍び込もうとします。
娘が、とびらの下から潜り込もうとするどろぼうの首を、斧の一撃で切り落とすところは、ぎょっとします。けれども、血も流れないし、むしろ、どろぼうたちのあたふたぶりがユーモラスです。昔話の平面性が現れているところで、切り紙細工のように描かれます。

後半は、ロマンチックな展開かなと思いきや、恐ろしい屋敷に連れ込まれます。頭に銀のふたの乗っている若者は、盗賊の一味というより、彼岸からの存在のように感じます。
この屋敷からの逃走譚は、日本の昔話「油取り」と同じです。でも、油取りの主人公とは異なり、娘は、あくまでも勇敢です。

スリルがあって、怖くて、笑える話です。
高学年にどうぞ。
ATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」


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旅の仲間

たびのなかま

ノルウェーの昔話

ノルウェーのペテル・クリスティン・アスビョルンセン(1812~1885年)は、大学生のころグリム童話を読んで昔話に興味を持ち、友だちのヨルゲン・モーといっしょに、ノルウェーに伝わる伝承を集めました。それは、『ノルウェーの民話』として出版されました。正60話と続50話、あわせて110話です。これは、グリム兄弟にもいい物だと評価されたそうです。

「旅の仲間」は、続編に入っています。これは、ジョージ・ダセントによって英訳されていて、ここから再話しました。

長い話ですが、ストーリーは一直線に進みます。そして、氷の柱に閉じこめられた死体や、一度座ったら離れないいすや、三人の魔女の持つ呪物(剣・金の糸玉・ぼうし)、トロル山に住むトロルなど、つぎつぎと現れるモティーフに、わくわくします。

ここに登場する入江は、氷河の作ったフィヨルドです。フィヨルドの風景を写真などで確かめると、金の橋の光景が目に浮かぶでしょう。

最後に、主人公がわが子を切ろうとする場面、旅の仲間が去ってゆく場面は、感動的です。

ATU507「怪物の花嫁」


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金のとさかのおんどりとひき臼

きんのとさかのおんどりとひきうす

ロシアの昔話

小学2年生くらいまでの幼い子むきのおはなしです。

貧乏だけど善良なおじいさんとおばあさん。
木の実が芽を出して天までとどく。木を上って行ったら空に着いた。
空を歩いていると、金のとさかのおんどりがいて、ひき臼があったので持って帰る。ひき臼は、クレープとパイを出してくれる。
どこかで見たことのあるような、ファンタジックなモティーフが、軽快に続きます。

後半は、悪い旦那さんと金のとさかのおんどりの、ひき臼をめぐる闘いです。もちろん、おんどりが勝ちます。
「半分のにわとり」とよく似ていますね。類話です。でも、前後のモティーフが異なると、物語の雰囲気がずいぶん変わります。

このおんどりは、天にいて金のとさかを持つから、彼岸者です。

STU715A「すばらしいオンドリ」


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語りを聞けます

海の水はなぜからい

うみのみずはなぜからい

ノルウェーの昔話

ATU565「魔法のひき臼」

クリスマス・イヴのこと、貧しい弟が、金持ちの兄さんに食べ物を乞います。
いじわるな兄さんは、ベーコンをくれますが、「まっすぐ地獄へ行っちまえ」といいます。なんだかみじめで最低の状況です。
ところが、そのおかげで弟は地獄でまほうの引き臼を手に入れて、大金持ちになるのです。

この類話は世界中にあって、日本でも古くから語られています。
もともとは、北欧が発祥ではないかといわれています。

グリム童話では、KHM103「おいしいおかゆ」が類話です。
ずいぶん雰囲気が異なりますね。「おいしいおかゆ」では、地獄ではなく森の中。悪魔ではなく、おばあさん。やっぱり彼岸者ですが、援助者です。いじわる兄さんではなくお母さんです。お母さんにできないことを、小さな女の子がやってのけて、みんなをおかゆから救う。幼い子が満足できる話です。
「海の水はなぜからい」は、もう少し複雑な構造になっています。小学2年生くらいから楽しめるのではないでしょうか。クリスマス会や新年会にどうぞ。


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ゆびの五人兄弟

ゆびのごにんきょうだい

ルーマニアの昔話

幼い子向きのおはなし。

子どもには、自分の体への好奇心があります。それで、手遊び、指遊びがたくさん伝承されています。指の名前を覚えるのも楽しみます。
この話は、そんな指を登場人物にした、かわいい冒険物語です。
この指たちはとても小さな存在ですが、力を合わせて大きなくまをやっつけます。いかにも昔話ですね。
また、それぞれの指たちにそれぞれの個性があるのもおもしろいです。

語られたのはルーマニアなので、ヤシの実は珍しいと思います。珍しいから貴重だという見方もあるし、異国情緒もあるんだと思います。


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とうもろこしおばさん

アメリカ・インディアンの昔話

北米インディアンには、トウモロコシの起源に関する話がたくさんあります。部族によってさまざまなヴァリエーションがあるようです。再話したのは、クリーク族に伝わる話。独特の雰囲気を追ったこの話は、昔話というより、神話というところでしょうか。

もともと、トウモロコシは、原産地が北アメリカです。人びとにとって重要な穀類でした。だから、おばあさん(女神)の愛が現れた物と考えたのかもしれません。

日本では、『古事記』に、穀物の起源神話があります。逃げてきたスサノオにオオゲツヒメが、鼻や口から食べ物を出してきて食事を与えますます。怒ったスサノオはオオゲツヒメを殺します。すると、オオゲツヒメの頭からカイコが生まれ、目から稲、耳から粟、というふうに、体の部分部分から様々な穀類が生まれるのです。


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地のはての井戸

ちのはてのいど

スコットランドの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」少女が継母からひどい仕打ちを受け、とてもつらい仕事をしなければならない。少女は彼岸者から幸をもらい、継母は実子にも同じことをさせるんだけど、不親切な実子は、不幸をもらう。というお話。

グリム童話KHM13「森の中の三人のこびと」、KHM24「ホレばあさん」(こちら⇒)、アメリカの昔話「ものをいう卵」(こちら⇒)などが類話です。
いろんな話型のエピソードと結びついているので、バリエーションが豊富です。

「地のはての井戸」には、ホレばあさんにあたる彼岸者は出て来ませんが、馬とウニに出会います。ウニが娘に幸せを与えてくれます。他の類話では、ウニではなくてしゃれこうべだったりします。

低学年から聞けると思います。


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