こぶたのリコション

フランスの昔話

ATU124。「家を吹き飛ばす」という話型名です。
わたしたちはこの話型の話としては「三匹のコブタ」がなじみ深いですね。世界じゅうに類話が伝わっていますが、口承としてはアジアには少ないようです。

子どもたちは、「三匹のコブタ」の面白バージョンと感じるようです。
低学年までの幼い子向けの話だと思うし、またそのようにも再話しました。けれども、まずは「三匹のコブタ」を聞かせたいと思います。

音声は、2、3年生です。学童保育の子どもたちで、元気いっぱいに聞いています。わたしの語りもどんどんスピードが出ています。聞き手が乗ってくると、語りも早くなります。でも、言い間違えてはいけませんね(笑)

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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美しいユーラリ

うつくしいユーラリ

フランスの昔話

冒頭、主人公の若者は、兵役を終えて国に帰るところです。このシチュエーションは、ヨーロッパの昔話でよく見かけます。グリム童話の「くま皮」は、クビになった兵隊ですね。

「美しいユーラリ」は、イギリスの昔話「鳥たちの戦争」の類話です。このホームページでは、「オーバーンメアリー」として紹介してあるので読んでみてください。とてもよく似ているでしょう。「鳥たちの戦争」にある古い宗教的な要素は、「美しいユーラリには見当たりません.それに、短いので、こちらのほうが語りやすいかもしれませんね。

ATU313、話型名は、「呪的逃走」。この話型では、さまざまな導入のエピソードが、「呪的逃走」と「忘れられた婚約者」というふたつの主部に結びついています。


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おんどりときつね

イタリアの昔話

ATU122「嘘の言い訳で獲物が逃げることができ、動物は獲物を失う」という話型です。
この話型は、多くのヴァリエーションがあります。
 
たとえば、きつねががちょうをねらっていると、がちょうたちが、死ぬ前にお祈りをさせてくれといって、つぎからつぎへとお祈りをしていつまでも終わらないという「きつねとがちょうたち」。これはグリム童話です。
 
トロルに出くわしたヤギが、後からもっと大きなやぎが来るといって逃げる「三匹のやぎのがらがらどん」も同じ話型です。
 
「私が太るまで待って」とか、「食べる前に私を洗って」とか、「口を洗ってから食べて」とか、「自分で飛びこむから、口を大きく開けて待っていて」など、弱い動物が生き延びるために、知恵を使って言い訳します。短い話ばかりですが、含蓄がありますね。
 
「カッタンネオー」というのは、どこの地名かは分からないそうです。語り手が自分の知っている地名を入れて語ってもいいそうです。


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かにの親子

かにのおやこ

イソップ寓話

これは昔話ではありません。イソップ寓話と呼ばれるものです。
寓話とは、平たく言えば、たとえ話の事です。人の行いを正したりさとしたりするために作られたものです。
昔話は、作者がいるわけではありませんが、この話はイソップが作ったものです。

イソップは、紀元前6世紀の人だといわれています。だからとっても古い話です。でも、少しも古臭く感じないのは、人間ってあんまり進歩していないからなのでしょうか?

「かにの親子」は日本の昔話にもあるので、昔話通観でさがしたのですが、見つかったのは数話にすぎませんでした。しかも再話する程のしっかりした伝承ではなかったので、もともとのイソップ寓話を再話して紹介することにしました。
同じ話がなぜ日本の昔話にあるのか、という疑問があります。
きっと、イソップの話がもとになっていると思います。というのも、イソップ寓話は、江戸時代の始めに、『伊曽保物語(いそほものがたり)』として日本語に翻訳されて広まっているからです。

これからの季節、おまけの話にどうぞ。

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プニアとさめの王さまカイアレアレ

ハワイの昔話

ハワイ島に伝わるおはなしです。
ハワイ島が、アメリカ合衆国の州になったのは、いまから120年余り前のことだそうです。18世紀にキャプテン・クックがハワイにやって来て以来、イギリス、フランス、中国、日本などと関りがあって、もとの独特の文化も変化していったと思われます。

この「プニアとさめの王さまカイアレアレ」が、ハワイのもとの文化をどれほど反映しているのかはわかりませんが、勇気ある少年プニアも、おそろしいさめのカイアレアレも、南洋の明るさを感じさせます。島と海の風景も、南の島を想像させてくれます。


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太陽が昇るとにわとりが鳴くわけ

たいようが のぼると にわとりが なく わけ

オーストラリアの昔話

ちょっと珍しい話を紹介します。話型も分かりません。
オーストラリアやニューギニアの昔話資料を読んでいると、「人間はどのようにして地上に散らばったのか」とか、「最初の火」とか「大地はどうやって作られたか」など、神話的な話がとてもたくさん残っていることが分かります。
現代科学に至る前の、人間の自然への探求心がうかがえておもしろいです。

この「太陽が昇るとにわとりが鳴くわけ」の原題は、「太陽の誕生」です。
エミューのたまごの中身がどれほど黄色いのか知りませんが、それが燃えるような明るさをもたらしたというのが、いいなあと思って再話しました。
天に「よい神さま」がいたというのも、心があたたかくなります。

子どもたちに、にわとりの鳴きまねをしてはいけないと教えていますが、きっと生活の知恵なのでしょう。どんな理由があるのか知りたいです。

アジアやヨーロッパの話だけでなく、世界にはこんな話も伝えられているんだよと、高学年のおまけの話として語りたいです。


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ラ・レアールの修道院長

ラ・レアールのしゅうどういんちょう

スペインの昔話

この話は、ATU922に分類され、話型名は「羊飼いが聖職者の代わりに王の質問に答える」。ヨーロッパを中心に世界じゅうで語られているということです。

ところで、マヨルカ島は、地中海に浮かぶ大きな美しい島です。スペインに属します。
 
この話の、のんびりした、陽光を感じさせる明るさが好きでみなさんに紹介したいと思いました。
 
おそろしいほど太っている修道院長と、サトウキビよりもほっそりした王さまという極端な対比がおもしろいです。王さまは、修道院長に解けない謎を出しますが、その理由が、修道院長に頭痛を経験させてやろうというもの。これものんきな話です。主人公の料理人も、修道院長の四分の一の細さです。みごとに難問に答えますが、王さまは笑って約束のほうびをあたえます。
 
登場人物に悪者はいないし、料理人に対して、王さまも修道院長も高圧的でなく、対等の人間として扱っています。また、昔話によくある、問いに答えられなければ死刑にするとかいうような、命にかかわる事件でもありません。
 
さて、この話型の中で出される難問には、ほかに、こんなものがあります。

「この木には何枚の葉があるか?」こたえ「~~~枚あります。信じないのなら自分で数えてください」

「空に星はいくつあるか」こたえ「砂浜の砂の数と同じです。あなたが砂の数を数えられれば、星の数も分かります」
 
古今東西、老若男女、なぞなぞが好きなようですね。難問については、《昔話雑学》にほんの少し説明をしているので、参考にしてください。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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森の王

もりのおう

イギリスの昔話

ロマが伝えているおはなしです。
貧しい家に母親(または父親)と三人の兄弟が暮らしているというシチュエーションは、ヨーロッパではよくあります。そして、兄弟は順番に出かけて行き、出会った人からちょっとした課題をあたえられます。上のふたりは課題に応えられず、末っ子は親切にして課題に合格します。主人公だけが正しいキーを押すのです。

類話では、兄弟たちは旅に出ることが多いのですが、「森の王」は雪の森にたきぎを拾いに行きます。身近な感じがします。課題は、「パンや飲み物をくれ」というのがよくあるパターンですが、「森の王」では冬の泉から水をくんでくることでした。

出会うのは、小人やおじいさんが多いです。ここでも、出会うのはおじいさん。魔法で森の管理人の塔に閉じこめられていますが、末っ子が親切にしたので、魔法がとけて小人になります。この小人は、森を支配する森の王だったのです。

このように、よく似た話の中でも、ちょっと不思議な、冬の季節感のある話として再話しました。結末句もおもしろいですね。三年生くらいから聞けると思います。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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ロバの耳をした王子さま

ロバのみみをしたおうじさま

ポルトガルの昔話

ATU782「ミダスとロバの耳」という話型です。何らかの理由で主人公の耳がロバの耳になり、床屋が、その秘密を隠しておくことができないで、穴を掘って、穴に向かって秘密を打ち明ける、そこから葦が生えて、葦で作った楽器が秘密をばらす、という話です。
 
穴に向かって秘密をささやくというモティーフもおもしろいし、楽器が秘密をばらすというモティーフも興味深いです。
 
この話は、もともとは、話型名にもあるように、ギリシア神話のミダス王の話からきています。ミダス王は、半獣神のパンとアポロンが音楽の技を競い合ったときに、パンの笛のほうが美しいといったために、アポロンに、ロバの耳に変えられてしまいます。床屋が穴を掘って「王さまの耳はロバの耳」とささやくと、そこから生えてきた葦が、風にそよぐたびに「王さまの耳はロバの耳」とささやき、秘密がばれてしまったという話です。
 
ここに再話した「ロバの耳をした王子さま」は、冒頭がいかにも昔話らしく、子どものいない王さまとお妃さまの間に王子さまが生まれます。王子さまが主人公です。妖精のおくりものもよくある話ですね。
 
王子さまがなぜロバの耳になったかというと、たまたま妖精が「思い上がって偉ぶることがないように」といったからです。そして、王子さまは、結末で帽子を脱ぎ、その通りに成長したことが分かります。昔話では予言は必ず的中します。昔話の語法にのっとることで、お説教臭がないようにしたいと思って、気を付けて再話しました。

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いぬとねこと玉

いぬとねことたま

朝鮮半島の昔話

ATU560「魔法の指輪」に分類されます。
冒頭で、若者が犬とねことへびを助け、お礼に何でも願いの叶う魔法の指輪をもらうというのが典型的な形のようです。主人公は「おじいさん」ではなくて「若者」です。授かる宝物は、「玉」ではなくて、「指輪」です。ヨーロッパを中心に世界じゅうで語られてきた古い話型だそうです。
「おじいさん」「玉」「竜宮」となると、いっきに東洋的になるのがおもしろいです。

日本にも全国にたくさんの類話が伝わっていて、へびが宝をくれるもの、さるがくれるもの、竜宮でもらうものがあるようです。

ここで再話したこの話の載っている『朝鮮民譚集』は、朝鮮半島に伝わっていた口伝えの話を集めたもので、1930年に日本で出版されました。

音声は3年生です。


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