なぞなぞのすきなおひめさま
トリニダード・トバゴの昔話
ATU851「謎を解けない姫」
姫に解けない謎を出すことができた者と姫が結婚する話。主人公の男は、自分が経験したり見たりしたことをもとに謎を出します。
紹介したトリニダード・トバゴの「なぞなぞの好きなお姫さま」は、お姫さまが謎を解けずに主人公と結婚して終わりますが、お姫さまが謎の答えを知るために、寝ている主人公の所にしのびこんで、答えを聞きだすというモティーフが付くこともあります。その場合は、男は証拠としてお姫さまの着物を取っておき、あとでお姫さまの策略を暴きます。グリム童話22「謎」がこのパターンです。比較してみてください。
ところで、冒頭で、母親が毒入りの弁当を息子のジャックに持たせますね。ちょっとびっくりです。これはどう考えたらいいでしょう。
グリムの「謎」では、毒を盛るのは母親ではなく、森の中の悪いおばあさんになっています。
イタリアの類話「ソルダティーノ」では、なぞ解きに行くという息子に対して、母親はこう考えます。「王女さまに殺されるよりは、その前に、この手で息子を殺したほうがましだ」そして、パンケーキに毒を入れるのです。
ジャックの母親もこの心理だと解釈すればいいのかもしれません。でも、こじつけのようで無理があるような気がします。
そこで、この話全体がナンセンスな笑い話である、というところに解決を見つけました。
中盤の鎖のような展開は状況の一致が繰り返されます。小さな奇跡の連続です。日本の笑い話「間のいい猟師」のような展開ですね。
冒頭で母親が毒を入れた場面で、聞き手が「え~っ」とびっくりした後、考える間をあたえず、すぐさま中盤に入って行きます。驚きは笑いに変わります。
最後のジャックの出す謎は、中盤の出来事の言葉によるくりかえしです。ここも意外性があって笑えるところ。このなぞなぞの部分は遊びのようにリズミカルに語れるような言葉で再話しました。
結局、母親が毒を盛ったおかげで、ジャックはお姫さまと結婚して目的を果たすことができたのですね。
謎かけ姫については、ブログ井戸端会議で、マックス・リュティの解説を紹介しています(こちら⇒)。
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