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くるぞくるぞ

アルメニアの昔話

この話は、ある地方の伝説です。
同じような伝説や昔話が世界じゅうにあるようです。

崖や川べりなど、人里に近い自然の中から、気味の悪い声が聞こえて来て、だれも近づかなくなる。
あるとき、勇気のある者が出かけて、その声に応えると、声の主が現れる。
その正体は金貨や宝物だった、という話。

だれにも使われなかった隠されたお金は、化けるのです。
経済活動の必要を説いているのでしょうか。
また、自然界に宝を見つけよということでしょうか。

ATU326「怖さとは何か知りたがった若者」の類話です。
『日本昔話通観』では、IT106「危ない危ない」に分類されています。


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主がそうなら道具もそう

あるじがそうならどうぐもそう

パキスタンの昔話

「主がそうなら道具もそう」というのは、パキスタンのことわざのようです。
人の行為は、時代や国の政治情勢や環境に強い影響を受けるということです。
日本にも同じ意味のことわざはあるでしょうか?寡聞にして知りません。

王の夢判断という課題が3回くりかえされます。
お百姓は蛇の助言によってほうびをもらいますが、へびに対する思いが3回とも異なっていて、ハラハラさせられます。
「あんたのしたことは、あんたのせいじゃない」というへびの言葉に、ホッとすると同時に、社会に対してよく目を見開いておかねばという教訓を感じました。

高学年から大人向きの話です。


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魚がくれた子ども

さかながくれたこども

チリの昔話

ATU303「双子または血を分けた兄弟」

グリム童話KHM60「ふたりの兄弟」の類話です。
「ふたりの兄弟」についてはこちら⇒も見てください。

おじいさんがとって来たものいう魚の進言に従うと、おばあさんが双子を生みます。それだけで、この兄弟には特別の力があることが分かりますね。

生命の標識のモティーフ、貞節を表す抜身の剣のモティーフ、命の水のモティーフと、つぎつぎに展開していきます。
グリムのほうは長すぎて語れませんが、これは語れます。原話を見つけたときは、ほんと、うれしかったです。

2年生くらいから聞けるとおもいます。


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うさぎとライオン

タゲスタンの昔話

タゲスタンはカスピ海の西、カフカス山地の東、ロシアの一部です。
小さな者が強い者に知恵を使って勝つ話はどこにでもあるのですね。

みんなが、ライオンに食べられても仕方がないと思っているのに、うさぎだけは自分から食べられに行くなんてまっぴらだと考えます。この生き方に共感して再話しました。
このうさぎはトリックスター(こちら⇒)として登場しています。


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かめ女房

かめにょうぼう

ギリシアの昔話

漁師の若者が亀を連れて帰ると、留守の間に家のそうじや炊事がばっちりてきている。かくれて見ていたら、亀の中から美しい娘が出て来た。
このシチュエーション、亀を魚や狐に取りかえても、成り立ちますね。しかも、日本でもヨーロッパでもよくあるシチュエーションです。
妻が異類の、異類婚姻譚です。

ただし、日本の異類女房のように結末は離別ではありません。むしろ、後半は絵姿女房にそっくりです。
王さまが、妻を手に入れようとして無理難題を出します。けれども、妻は亀の化身で、海の女神である母と弟の豆ちゃんが力を貸して解決してくれます。
この豆ちゃん、かわいいでしょう?かわいくて、子どもに聞かせたくて再話しました。
全体に地中海の明るさを感じます。


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マルーラ

ギリシアの昔話

太陽の神、金のりんご。明るい雰囲気なのは、地中海の話だからでしょうか。

母親との約束で、太陽の神ヘーリオスは十二歳になったマルーラを連れ去ります。このモティーフはよくありますが、誘拐するのは魔女や悪者であることが多いようです。けれども、ヘーリオスは恐ろしい存在ではありません。悲しんでいるマルーラを見て、家に帰らせます。

マルーラを家まで送る動物として、ライオン、きつねは失格で、しかが送ることになります。
木の上のマルーラの姿が水にうつっているのを見て、魔女の娘が自分の姿だと勘違いするモティーフ。魔女の娘は三人です。
帰宅のとき、マルーラに気付くのは、犬、ねこ、おんどりです。
3回のくりかえしが重なって、リズムが生まれていますね。

マルーラが結局は母のもとに帰ることを思えば、この話を喜ぶ年齢は、あまり高くないと思います。


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海でも陸でも走る船

うみでもりくでもはしるふね

ノルウェーの昔話

ATU513B「水陸両用船」

王さまが、海でも陸でも走るふしぎな船を造ったものに、姫と結婚させるというおふれを出します。3人兄弟が挑戦しますが、末っ子が成功する話。よくあるパターンですが、どうやって成功するのか、その成り行きにわくわくします。

魔法の船については、空を飛ぶ船や、絵にかいた船が動きだすという話もあります。
古くは、紀元前250年ごろのギリシアのロドス島の詩人アポロニウスが書いた英雄叙事詩「アルゴナウティカ」に出て来るそうです。

主人公は、とちゅうで出会った男たちを船に乗せて行きます。男たちは、並外れた能力をもっています。その男たちに主人公は助けられます。
グリム童話の「六人男世界をのし歩く」を思い出しますね。話型的にはとっても近いです。


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注:語りは上記のテキストと表現が異なる部分があります。
これから語られる方は、テキストのほうが語りやすいと思います。




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福の神はくさったさくらんぼの中に

ふくのかみはくさったさくらんぼのなかに

マケドニアの昔話

ATU「宝は自分の家にあり」
夢で「ある場所に行けば好い事がある」と聞いて行ってみるが見つからず、そこで出会った人から「夢など信じるな」といわれてその人の夢の話を聞く。その夢のおかげで、宝は自分の家にあることが分かるという話。

この話型は、ヨーロッパでは、橋と関わって語られることが多いです。夢に見て出かけて行く所が、イギリスのロンドン橋やチェコのカレル橋、ドイツのモーゼル橋などなど。
日本の「みそ買い橋」(こちら⇒)は、イギリスの昔話「スウォファムの行商人」からの翻案です。

「福の神はくさったさくらんぼの中に」には、橋は出て来ません。さて橋のあるのと無いのと、どちらのほうが古い形なのでしょう。


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主人と召使い

しゅじんとめしつかい

アルメニアの昔話

力や立場の弱い者が、知恵を使って強い者に勝つ話です。
このテーマは、昔話にはよくあります。おそらく、このような話を語りついだ人びとは、社会的弱者だったのでしょう。そして、社会的弱者は、世間の人口の大多数だったと思います。だから、支持されて語りつがれたのでしょうね。
主人が腹を立てては言い訳をする姿が痛快です。

昔話はファンタジー(架空の話)ですが、必ずしも魔法が出て来るとは限りません。この「主人と召使い」のようなどこにでもありそうな(でも常識ではあり得ない)話もあるのです。


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かも女房

かもにょうぼう

アラスカの昔話

アラスカの異類婚姻譚です。

妻が異類である場合、日本の昔話では、妻は去り、二度ともどって来ることはありません。「つる女房」「かえる女房」「こい女房」などなど。

ヨーロッパの昔話では、夫は妻を探しに行き、見つけ出します。「蛙の王女」「七羽のはと」などなど。

アイスランドの「あざらし」は日本の話とよく似ています。

アラスカの場合は・・・読んで(聞いて)みてくださいね。

異類婚の話、とっても興味があります。


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