katarinomori のすべての投稿

父親を助けた息子

ちちおやをたすけたむすこ

ナイジェリアの昔話

日本では「姥捨て山」という話型名で、全国に残っています。このホームページでも《日本の昔話》に奈良県吉野郡の伝承として「おばすて山」を再話しています。解説にこの話型についてコメントしていますので読んでくださいね。

ナイジェリアの「父親を助けた息子」は日本の姥捨て山の難題型に当たります。「姥捨て山」は純日本風の話だと思っていたので、アフリカに見つけたときは驚きました。調べてみると、世界的にはATUの981番「隠されたお爺さんの知恵が王国を救う」という話型名で、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南アメリカに類話が発見されています。紀元一世紀に記録されていると注があって、またもや驚きました。キリスト教者ユスティノスの『ピリッポス史』という書物にあるそうです。確認できなくて残念です。
 
ところで、以前にこの《外国の昔話》のページで、朝鮮半島の類話「親すて山」を紹介しています。これは、日本では姥捨て山のもっこ型にあたり、ATU980「恩知らずな息子」に当たります。おそらくユダヤ起源だと書かれています。これも驚きです。
 
世代間の相克はいつの時代もどこの民族でも頭を悩ませるものなのですね。
 
難題のモティーフは、民族性が出ていておもしろいです。
 
あちこちにことわざがちりばめられているのも、アフリカの昔話らしくていいなあと思います。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。



⇒ 人間たちの話一覧へ

ものをいう卵

ものをいうたまご

アメリカの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」に分類される話です。
この話型の昔話は、世界じゅうに分布しています。グリム童話「ホレおばさん」⇒こちら、ロシアの「ババ・ヤガー」⇒こちら、「馬の首」、イギリスの「地の果ての井戸」⇒こちら、ハイチの「川の母」など、私たちにおなじみのパターンです。

「親切にはよい報いがあり、不親切には悪い報いがある」というメッセージには、道徳的な効用があるのでしょう。

ただ、今回紹介したこの話の中のお母さんは、ずいぶん自分勝手な人に見えますね。ローズとブランシへの対応が、手のひらを返したみたいに変わります。幼い子は、親から認められたいという強い思いがあります。ところが、自分は何も悪いことをしていないはずなのに、ブランシのように理不尽に叱られることがあります。だから、ブランシがきれいなものを持ってかえって来たとき「お母さんは大喜びしました」というのは、子ども側から見ればご褒美なのです。
 
ところで、親切(または不親切)にする相手が人間ではなくて彼岸の存在であることに注目すると、もっと深い意味があるような気がします。森の奥や、井戸などの水の底といった彼岸は、自然界をあらわすと考えることができます。たまたま自然界に入りこんだ人間がどのように行動するかということに焦点を当てると、とても興味深いです。人と自然のモラルを教える話が、世界じゅうで愛されてきたことに、意味があるのではないでしょうか。

同じ話が偕成社文庫の『アメリカのむかし話』(渡辺茂男編訳)に入っていますが、残念ながら絶版です。そこで、皆河宗一氏がA・フォーチャー編『ルイジアナ民話』から翻訳されたものを原話にして、ここに再話しました。ぜひ語ってみてください。。聞きなれていれば5歳児から聞けると思います。
 
音声は図書館のお話会、3歳から7歳まで12人です。小さい子にわかるように語っているので、テキストと少し違っていますが、テキスト通りに語るのが理想形。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

トーレ・エッペの幽霊

トーレ・エッペのゆうれい

スウェーデンの昔話

夏の怪談話にいかがですか。

教会の中に幽霊や化け物が出るという話はたくさんあります。日本の場合は、お寺、それも住職がいなくなった古寺ですね。洋の東西を問わず、恐い話は好まれるようです。そして、必ず恐いもの知らずの者が肝試しに行って、成功してお金持ちになります。

スウェーデンのこの話は、主人公が、豪胆な男性ではなく、娘なのが嬉しいです。しかも、まっくらな谷川まで行って、幽霊の頼みごとをきくというように、二重の肝試しです。きっと川の中から聞こえて来た声のぬしも幽霊ですね。

なんとなくロマンスを感じるので、あまりおどろおどろしく語らないほうがいいと思います。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

めんどりちゃん

イギリスの昔話

ジェイコブスの昔話は日本でもたくさん紹介されているし、ストーリーテリングのテキストになっています。
この話は「Henny-Penny」という題で、めんどりのペニーという意味だけれど、ペニーというのが最小のお金の単位のこと。それで、めんどりちゃんと訳してみました。
 
累積譚→こちらで、原話はもっとくりかえしが多いのですが、英語では歌うようなリズムがあるのに比べて、日本語にするとくどくなってしまうので、ちょっと省略しています。
 
しちめんちょうとがちょうとあひるが食べられてしまうので、ショックでないようにカラッと語ります。主人公は助かったのでめでたしめでたし。
幼い子ども向けです。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ

てんとう虫のおじょうさん

てんとうむしのおじょうさん

ウズベキスタンの昔話

中央アジアのウズベキスタンのおはなしです。タシュケントやサマルカンドといえばイメージがしやすいかと思います。
 
シルクロードを行き来する人たちが伝えたおはなしには、ヨーロッパの本格的な魔法昔話にそっくりの話もあれば、この「てんとう虫のおじょうさん」のようなかわいい話もあります。
原題は「てんとう虫娘」なのですが、黄色いくつにお花のような服を着て、ねずみのだんなに愛される彼女だから、すてきなオシャレなおじょうさんと呼びたくて、こんな題をつけました。
 
主人公は、主体的で行動的な女性です。そして愛する夫を悲しませたくない強い心を持っています。彼女が幸せになって、ほんとによかったです。

幼稚園の年長から低学年に語ってみたいと再話しましたが、もっと上の学年でも楽しんでくれるかもしれません。
これからの季節にどうぞ。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ

カンチルととら

インドネシアの昔話

この話は、前回紹介した「カンチルとワニ」⇒こちらの後半です。幼い子に語りたかったので、長い話をふたつに分けました。

小さくて弱い存在は、自然界では淘汰されます。人間社会でも同じようなことが言えるでしょう。だから、カンチルが、決定的な強者ワニやとらを手玉にとるこれらの話は、子どもたちには痛快なのだと思います。
ただ、ほんとうのワニやとらの恐さを知らない子どもたちは、とらに同情してしまうかもしれません。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ

カンチルとワニ

インドネシアの昔話

カンチルというのは、和名をマメジカといって、東南アジアの熱帯雨林に棲む小さな鹿です。うさぎくらいの大きさのとっても弱い動物で、森の中でいつも大型動物に命をねらわれているそうです。
その弱い存在のカンチルが、知恵を使って強い動物をやっつける物語が、インドネシアやマレーシアに伝わっています。「マメジカ説話」といって、ほんとうにたくさん残っているそうです。

ATUでは58番「ワニがジャッカルを運ぶ」に分類されています。
ワニを数えるのは、カンチルだけではなく、ジャッカルであったり、うさぎであったり、猿であったりします。が、だまされるのはいつもワニです。
この類話は世界じゅうに広がっているわけではなくて、アジア、アフリカに限られているようです。

後半、ワニが丸太のふりをしたり枯れ木のふりをしたりするモティーフも面白いですね。昔話ではよく死んだふりをするのですが、このワニはとってもユーモラスです。

音声🎵は4年生に語っています。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

4年生のライブが聞けます。




⇒ 動物たちの話一覧へ

水の精ネックと少年

みずのせいネックとしょうねん

スウェーデンの昔話

水の精は、水にまつわる妖精、精霊のことです。北欧に伝わる水の精はネックと呼ばれています。ただし、ネックは男性の姿をしていて、女性の水の精はニクシ―と呼ばれるそうです。

かつては、日本でも、川の神、海の神、山の神、田の神とか神木など、人間の周りの自然環境のなかに神がいました。そこへ仏教などの宗教が入ってきたりして、古来の神が妖怪として扱われるようになっていったそうです。カッパは、水の神の零落した姿ですね。

ネックは精霊だから、一種の妖怪ですが、古来の神に近いのかなと感じます。でも、この話のなかでは、ちょっとまぬけで親しみ深く、憎めない存在ですね。

幼児から低学年向きに再話しました。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

悪魔の話

あくまのはなし

フランスの昔話

この話のはじまりは、「ヘンゼルとグレーテル」にそっくりですね。
ATU327「子どもたちと鬼」という話型に属します。ここでは、子どもたちが行き着くのはお菓子の家ではなくて、人食いの悪魔の家です。このあたりは「かしこいモリー」などと同じです。

木に登ると灯りがひとつ見えたというのもよくあるシチュエーションですが、孤立的で、いかにも昔らしい展開です。

指輪と寝場所を取りかえるというのは、ナイトキャップの取りかえのモティーフですね。子どもたちは知恵を出して悪魔の家から逃げだします。

援助者としてマリアさまが出てきますが、日本ではあまりなじみがないですね。敵が「悪魔」だからでしょうか。
 
最後の所も子どもたちは知恵を出します。子どもにいわれた通りに刈り入れの用意をしてやってくる百姓も何だかまぬけですが、すっかりだまされる悪魔もまぬけですね。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

ウトレストの妖精の島

ウトレストのようせいのしま

ノルウェーの昔話

レストは、ノルウェーのロフォーテン諸島の一番南のはずれにある孤島で、町の名前でもあります。ロストとも呼びます。ウトレストはレストの向こうという意味。つまり海のかなたの異郷、仙境をいいます。ノルウェーは海洋民族の国なので、海のかなたや海の底にユートピアがあると想像したのでしょう。日本も同じです。竜宮ですね。日本ならタイやヒラメの舞い踊りですが、このノルウェーのはなしでは、カニやタラです。
 
妖精は気まぐれです。だから、なぜイサクを助けてくれたのか根拠がはっきりしません。偶然なのでしょうか。昔話的にいえば「主人公だから」ということでしょうが、これは伝説です。貧しい漁師がたまたま妖精に富をさずけられた奇跡を語っています。だから、読後、ふしぎな気持ちになります。
 
大きい人たちに、クリスマスのプレゼントとして再話しました。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ