katarinomori のすべての投稿

金剛山のとら

くむがんさんのとら

朝鮮半島の昔話

金剛山は北朝鮮にある有名な山です。クムガンサンと読みます。原題は「大彪退治」。

「焦げ飯」は、ご飯をたいたときにおかまに焦げ付いているおこげのご飯のこと。朝鮮半島の説話のなかでは、猟師が狩りに出かける際には、いつもおこげを持っていくそうです。
男の子の修業もオーバーな表現ですが、とらのお腹の中がひとつの村がすっぽり入るほど大きいというファンタジーがおもしろいですね。

音声は4年生のライブです。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

三人の姉妹

さんにんのしまい

イギリスの昔話

ジプシーというのは、ヨーロッパを中心に世界のあちこちで暮らしている少数民族です。かつては、馬車などで移動して旅暮らしをしながら、芸能や芸術を伝えているというイメージが強いですが、いまは定住の傾向にあるそうです。自らはロマ、ロムとか呼んでいるそうです。
この民話集は、イギリスのウェールズ地方のジプシーが伝えた話を集めたもの。妖精の出てくる不思議な伝説もたくさん収録されています。
この話の赤い外套のおばあさんも、魔女的な存在なのですが、話の最後までくると、妖精のように感じます。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

酋長カイレ

しゅうちょうカイレ

コロンビアの昔話

不思議な話です。
娘と結婚する若者は、たぶんカイレが仕留めた死者の首が再生した者でしょう。
そして、彼が月にいちど帰っていくところは死者の国。その一族の国では、若者は鹿のすがたをしているように思えてなりません。
人と動物、この世とあの世、永遠の魂がその二つの次元をいったり来たりする世界観は、アイヌの昔話を思い起こさせます。

中学生に語りたいと思って再話しました。
子どもに語ってみると井戸端会議その1 と →その2 を読んでみてください。
あまりにも手ごたえがあって驚きました。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

魔女のミルクグレーテ

まじょのミルクグレーテ

スイスの伝説

この話は昔話ではなくて伝説です。

昔話の魔女には、人間に恩恵を与えてくれる場合と、害を与える場合の二面性があります。日本の山姥と同じですね。彼岸から訪れて、主人公を援助してくれる、または敵対して困難を与える。
 
でもこの話の魔女ミルクグレーテは、そう単純にはいきません。魔女のまねをした主人公を罰したのです。ただそれだけの話です。欲が深いのを戒めるだけの話にも思えません。何が言いたいのでしょう。
そうです、魔女の領域に入ってくるなということです。
伝説では彼岸とこちら側の世間とのあいだには、くっきりとした境界があります。昔話がふたつの次元の世界をたやすく行き来できる一次元性を持つのと対照的ですね。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

七羽のはと

ななわのはと

ドイツの昔話

森の中で道に迷ってこまっていると灯りがひとつ見えます。洋の東西を問わず昔話によくあるシチュエーション。状況の一致。

主人公は、池に水浴びにきた七羽のはとが美しい乙女になるのを目撃します。そして、いちばん美しい娘の肌着を盗んで、その娘を妻にします。羽衣をうばわれて天に帰れなくなった天女の話を思い出しませんか?そうです、日本では「天人女房」とよばれる話型の話で、たなばた伝説や羽衣伝説で有名ですね。

よく似た話が世界中にあるのがふしぎです。この「七羽のはと」は、ATU(国際昔話話型カタログ)では、400番「いなくなった妻を捜す夫」に分類されています。313番「呪的逃走」と結びつくことが多いそうです。「七羽のはと」も、伯爵と妻は、ばらの花と茂み、礼拝堂と神父に変身して、追っ手を出しぬきますね。呪的闘争のモティーフを持っています。

この話の最後に、魔女が、別れていく娘に贈り物をします。娘を自立させる母親の心境になって、ほろっとします。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

とらとほしがき

朝鮮半島の昔話

朝鮮半島では有名な話です。
日本ではパク・ジェヒョンの絵本(光村教育図書)がよく読まれています。

『国際昔話話型カタログ』によると、ATU177「泥棒とトラ」という話型です。
インドの説話集『パンチャ・タントラ』(西暦二百年ごろ成立)に記録があるので、古い話ですね。
ヨーロッパにはなく、アジア特有の話のようです。

とらが、その言葉を知らないために恐がるのは、ここでは「ほしがき」ですが、ほかに、「飴」「たそがれ」などがあるそうです。
日本では「雨もり」です。

日本の昔話「古屋のもり」は全国に伝わっているし、みなさんもご存知だと思います。古くは江戸時代の『奇談一生』(1768年刊)に「猿面赤無尾(猿のつら赤く尾なし)」として、類話が出ています。漢文なので、現代語にして語れるように再話しました。⇒こちら「さるの顔はなぜ赤い」

音声は3年生のライブです。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

3年生のライブが聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ

年とった栗毛の馬

としとったくりげのうま

北米インディアンの昔話

先住民族の残している昔話は、広大な自然の中で展開する話が多いように思います。この北米インディアンの話も、遥かな大草原と、そこを移動するバッファローの群れが目に見えるようです。
そしてそこには、神話的な空気が漂います。骨を積み上げて再生させるのは、シャーマンの業です。

極端に貧しい、村社会の底辺にいた少年が、勇気とまっすぐな心を持ち、彼岸の力によって首長の地位にのぼります。いかにも昔話らしいハッピーエンドの物語です。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ まほうの話一覧へ

ろばの数

ろばのかず

カビールの昔話

アフリカ、カビールの笑い話です。

エチオピアの「アディ・ニハァスの英雄」(『山の上の火』岩波書店刊、所集)は、村人みんなが数の数えちがいに気づきません。

自分の近くのものは見えないものです。このような人間のまぬけさかげんを描く「愚か話」はどこにでもあります。日本にも、愚か村の話や愚か聟、愚か嫁のたぐいの話は、数限りなく残っています。
これは、他人を笑うというより、自分にも同じようなことがある、それを笑うための話ではないかと感じますが、どうでしょう。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




⇒ おかしな話一覧へ

むずかしい遺産分け

むずかしいいさんわけ

アラビア半島の昔話

算数の問題ですね。ずいぶん前に六年生に語ったとき、先生も交えてにぎやかな議論になりました。
そろそろ夏休みも終わります。宿題の最後の一問として、頭をひねってください(笑)


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。




⇒ おかしな話一覧へ

さるの裁判

さるのさいばん

朝鮮半島の昔話

話型名「恩知らずなヘビが捕らわれの身に戻される」。ATU155。

ほかの話では、とら以外に、へび、おおかみ、くまなどが、男をだます悪い動物として登場するようです。
「善い行いに対して悪い行いで報いてよいのか」ということがテーマですね。
さるの裁き、すかっとします。

北欧からアジア、アフリカまで、世界じゅうに伝わっている話です。
ところが、なぜか日本にはありません。「恩を仇で返す」ということわざはありますけれど。

ところで、イソップにはこんな話があります。
・・ひとりの農夫が、寒さにこごえたへびをみつけました。あわれに思った農夫は、へびをひろいあげてふところに入れてやりました。あたたまって本性をとりもどしたへびは、自分の恩人にかみついて殺してしまいました。死に際に農夫はいいました。「こうなってもしかたがない。たちの悪いやつをあわれんだのだから」・・・

哀しいですが、たしかに人間の一面を表していますね。

でも、さすがに昔話は、悪いやつがやっつけられて終わります。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りが聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ