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かきねの戸

かきねのと

ドイツの昔話

わたしの再話のなかでも大ヒット作!絶対に外さない(笑)。 音声は3年生のライブです。

兄妹がかきねの戸を外して出かけるところで、聞き手の子どもたちはこの話が笑い話だとわかります。4歳児でもわかる。ところが、森で迷子になるあたりから緊張しはじめます。恐いのです。それが私には意外でした。あくまでもちょっとした笑い話として語っているからです。木の下に泥棒がやってくるあたりから緊張は高まって、息をつめて聞きます。だからこそ、「 おしっこ 」 「 うんこ 」 で緊張が緩和して、ドカッと笑うんですね。桂枝雀さんの落語の理論とおなじです。

それから、兄妹がどろぼうたちの置いていったお金をみんな持って帰るところ、「 悪~っ 」 て言った子どもたちがいたのです。これも意外でした。な んて正義感が強いんだろうと思いました。そう、たとえどろぼうがおいていったものでも持って帰ったらどろぼうになるのです。ところが、それを知ったお母さんが大喜びしたっていうところで、子どもたち、笑ったんです。このユーモア感覚、すごいと思いません?

そのお金で一生楽に暮らしましたっていうと、「 ああよかった~ 」 と大満足します。昔話の主人公の幸せ = 富の獲得と身の安全で、めでたしめでたし。ほんのおまけの話として再話したのに、子どもたちのおかげで実のあるしっかりした、上質な笑いを引き出す話になりました。


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テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』にも掲載しています。こちら⇒書籍案内

3年生のライブが聞けます。



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矢のくさり

やのくさり

アメリカ・インディアン トリンギット族の昔話

原話の出典には、「トリングギット族」とありますが、一般的には「トリンギット族」。北アメリカ大陸の太平洋岸に暮らしている先住民族です。彼ら自身は「リンギット」と呼び、「人間」を意味します。おなじみのトーテムポールを作る人たちです。日本のアイヌと似た文化を持っていて、交流が続いているそうです。

狩猟民族だから、たいせつな「矢」には特別の価値があるのでしょう。シンボルとしての矢には、「保護。自分を守る」という意味があります。クロスした二本の矢は「友情」。折れた矢は「平和」を意味します。

村長の息子が月への畏敬の念を忘れたために、月が罰をくだします。その罰は、村長の息子自身を痛めつけるというものではありません。むしろそれをたしなめた友達をさらって痛めつけるというものでした。このことが「罰」であるためには、少年たちの友情の深さが根底になければなりませんね。

主人公である村長の息子は、友人をすくうために危険な旅に出ます。月、星、矢、葬式の太鼓・・描かれる情景は澄みきった冷たい空気を感じさせます。テーマの扱いとともに、異文化の新鮮な発見があります。

にもかかわらず、おばあさんがくれたいくつかのものを後ろに投げながら逃走するモティーフは、日本の昔話「三枚のお札」とおなじ。帰ってきたら自分の葬式をしていたというモティーフは奈良の昔話「天狗のまな板石」とおなじ。
《日本の昔話》で確認してください。

高学年の子どもたちに聞かせたいお話です。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




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半分のにわとり

はんぶんのにわとり

ロートリンゲン(フランス)の昔話

音声は小学2年生。

ロートリンゲンは、フランスのドイツ国境近くの地域です。フランス語ではロレーヌ地方。

にわとりが半分になっても生きているのが不思議なのですが、昔話には半分の人間の話もあるし、子どもたちは、え~っ!と驚きながらも、おもしろそうにストーリーについてきます。

にわとりのからだは、きちんと二つに分かれて血も流れない、横から見たら図形的には丸ごと一羽と変わりはない。《昔話の語法》のページ「図形的に語る」の項を見てください。平面性があらわれているところです。⇒こちら

にわとりが出かけるのは、貸したお金を返してもらうためです。「外的刺激」によって旅立つのです。
とちゅうで、鳥、オオカミ、池と道づれになり、からだの中にいれて、自分の力にします。

鳥、オオカミ、池の特性にぴったり合った難題がふっかけられ、みごとクリアします。状況の一致ですね。

用がなくなったら、鳥もオオカミも池も元に戻ります。援助者は必要なときに必要な場面でのみあらわれるのです。友達になっておつき合いを続けることはないのです。

主人公は本質的なものと出会うために旅に出なければならない、のです。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

2年生のライブが聞けます。



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親すて山

おやすてやま

朝鮮半島の昔話

現代日本にもつうじる老人問題。親孝行が道徳的にとても大切にされている朝鮮半島でも、このような話が残っているのですね。《日本の昔話》に、同じ話型の話を載せています。⇒こちら「おばすて山」

グリム童話にも、夫婦が老父を邪魔にするのを見た幼い息子が、いつか両親が年老いたら同じようにしようと粗末な食器を用意をする話があります。やはりそれを見て夫婦は改心します。「おじいさんと孫」という話です。洋の東西を問わないということかな。


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オーバーン・メアリー

イギリスの昔話

ケルトの昔話。長い話です。ヨーロッパの昔話によく出てくるエピソードが次々とつながって、聞き手を飽きさせません。原題は「THE BATTLE OF THE BIRDS(鳥たちの戦争)」ですが、話型名「主人公の逃走を助ける少女」AT313にちなんで、「オーバーン・メアリー」と題しました。

開けてはいけないといわれたのに袋を開けてしまう。だれにもキスさせてはいけないといわれたのに、飼い犬がキスをする。など、禁令と禁令破りではらはらします。

主人公がオーバーン・メアリーといっしょに巨人から逃げるとき、リンゴの切れ端が彼女に変わって返事をします。巨人が追いかけてくると、馬の耳から木や小石を出して後ろに投げ、それは森や山になります。まるで「三枚のお札」です。

骨の再生は、古い宗教とかかわりのあるモティーフ。最後の古いかぎと新しいかぎもいかにも昔話らしいモティーフです。

最後の2文は結末句です。昔話雑学を参考にしてください。

こういう長いストーリーは、わかりやすい言葉でテンポよく語るのがコツ。子どもの「それで?それで?」に応えるように語りましょう。


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白い子ねこ

しろいこねこ

オーストリアの昔話

恐ろしい魔女。魔法の力で城は岩山に変わり、王と城の人たちはカラスに変身させられ、岩山の周りを飛びつづけなければならない。城の周りの湖は凍りつき、だれも寄せつけない。そのつめた~い雰囲気が気に入って再話しました。
主人公は女の子。可愛がっている四匹の白い子ねこの力を借りて魔法を解きます。


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こびとのおくりもの

オーストリアの昔話

ヨーロッパ版の 「 こぶとりじいさん 」 です。
日本の話では山の中で鬼がコブを取りますね。ここでは、森の中で小人がコブを取ってくれます。日本の話と同じく、ちゃんと踊りの歌もあるんですよ。「 月曜日、火曜日、… 」 という曜日の歌なんですけど、子どもたちはそれが気にいったらしく、すっかり覚えて道で会っても歌ってくれます ( 笑 )。
音声は2年生のライブです。


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2年生のライブが聞けます。




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ジャックと豆の木

ジャックとまめのき

イギリスの昔話

音声は、2年生に語っているところ。
だいたい3年生くらいが一番ノッてきますが、ハラハラドキドキ、笑いありなので、もっと小さい子でも楽しめます。私は、幼稚園の5歳児さんの卒園まぎわ二月に語ります。15分はかかる話ですが、子どもたちはまじろぎもせずに聞いた後、「 短~い! 」 といいますね。初めは映画や紙芝居とは違うので 「 あれ? 」 っという感じですが、すぐにストーリーに入り込みます。


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2年生のライブが聞けます。




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三びきのくま

イギリスの昔話

音声は1年生のライブ。

よく知られているのは、女の子が主人公のロシアの昔話ですね。
イギリスのこの話はおばあさんがくまの家にやってきます。だから子どもたちは主人公と一体になることはなくちょっと離れて見ています。むしろくまたち、とくに一番小さいくまに心を寄せているようです。それで、勝手に他人の家に入り込んで食べたり寝たりするおばあさんを、ちゃんと批判することができます。
二階の窓からとび出したおばあさんがどうなったか、想像して楽しそうに話してくれますよ。

三回の繰り返しのリズムが心地いいので、四歳の一学期から聞けます。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

1年生のライブが聞けます。



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天までとどいた木

ドイツの昔話

長い話です。
三人兄弟の末っ子、まぬけなヘルムが主人公。よくあるモティーフです。
このヘルムが旅をするのですが、まず木を登る途中で七人のお婆さんに次々に会います。天に上ると、そこはひとつの世界で、課題をクリアしてお姫さまと結ばれる。けれど、タブー違反を犯して、さらにはるかかなた暗闇の世界に向けて旅に出ます。そこでさらなる課題が待ちかまえています。
男の子が、まるで階段を上るように成長していく、幼さから脱皮していくことが語られています。


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