フランスの昔話
ちょっと怖い話。
ラミナは、フランスのバスク地方の妖精です。ほかにもいろいろな昔話や伝説に登場します。
人の魂を奪う恐ろしい存在なのですが、案外まぬけで、失敗しては悔しがるそうです。
家から追い出すとその家が没落することもあります。遠野の座敷童子のようですね。
毛むくじゃらの背の低い、人間の姿をした妖精と言われています。
夏のお楽しみ会や怖い話のお話会でどうぞ。
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ひとりでになるグースリ
ATU850「姫のあざ」という話型。姫のあざの特徴を述べることができる人と姫が結婚することが約束される話。
この話は、約束のモティーフがふたつ出て来ます。
ひとつめは、額につののある白髪の老人との約束。
「グースリをやる代わりに、家の中で一番大切なものをよこせ」
家に帰ると、それは父親のことでした。この約束は、主人公に不幸をもたらします。が、じつは、それを契機にして、主人公は自分の人生を自分の足で歩き始めます。
ふたつめは、話型名にもなっている王さまのおふれです。
「姫の目じるしを言い当てた者と姫を結婚させる」
主人公は、つののある老人からもらったグースリを上手く使って、つまり自らの知恵で、お姫さまを手に入れるのです。
前半に登場する、かぶどろぼうの小さな男の子が、なんだかかわいいですね。後半のお姫さまも子ぶたも、かわいい。
短いけれど、子どもの自立を凝縮して描いていて、とってもいい話です。
2年生くらいから聞けると思います。
グースリは、弦楽器で、指で引いて演奏します。時代によって、弦の数や楽器の形は様々だそうです。
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ヤーノシュとてんまでとどくき
ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。
竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。
天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。
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うんめいをだしぬくはなし
誕生のときに神さまが運命を授ける話は、日本にもあります。
「七つの年の水の寿命」こちら⇒
「おおかみのまつ毛」こちら⇒
「ねずみの聞き耳ずきん」こちら⇒
定められた運は、実現する場合と、何らかの事情で実現しない場合とがあるようです。実現しない理由は、その人の努力であったり、知恵であったり、全くの偶然であったりします。
人は、いつの時代にどこで生まれるかを、自分で決めることができません。
それを不条理といいます。その不条理に気づきながらも幸せを求めて生きていくしかない。そのときに、運命だとあきらめるのか、運命にあらがって生きるのか、永遠の課題として生きているのでしょう。それが、昔話として語られるとき、さまざまな結末を持つことになるのだと思います。
「運命を出し抜く話」は、非情な運命は実現しますが、実現しつつ幸せをもたらすのです。
主人公の愛と知恵に感動します。
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おおかみといぬ
ATU101「老犬が子ども(羊)の救出者になる」とATU100「オオカミが歌って捕まる」が組み合わさっています。
ATU101では、おおかみが、犬を助けた見返りにお百姓の羊を盗む手助けをしてくれといいますが、犬は断り、おおかみの友情を失って終わります。
けれども、ウクライナのこの話では、犬は、羊の代わりに宴会のごちそうをおおかみに提供して、ATU100につながります。おかげで二匹の友情は続きますが、結局、まぬけなおおかみが自滅します。犬が歌うなと止めるのに、おおかみは歌ってさんざんなぐられるのです。うまく二つの話型をつなげていますね。
この話は、イソップ寓話にもあります。
福音館書店から絵本が出ています。
『セルコ』内田莉莎子文/ワレンチン・ゴルディチューク絵
ラストがちょっと違うんですけどね。
グリム童話のKHM「老犬ズルタン」は、家畜と野獣の違いがはっきりしています。ズルタンの番犬としての立ち位置が、対人間のきびしさを感じさせます。
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知恵が足りないと思われていても、音楽に秀でていて世の中の人を幸せにする主人公。
子どもの自然な欲求と才能を育てる大切さを思います。
まぶたに塗ると悪魔の正体が見えるというモティーフは、イギリスの昔話「妖精の塗りぐすり」にあります。
日本では狼のまゆ毛、韓国ではとらのまつ毛も同じように人間の正体を見抜くふしぎな力を持っています。
ムズィカが、おおかみにおそわれたときは、あきらめて死を受け入れようとしたのに、地獄では、悪魔たちを焼くような音楽を鳴らしてやろうと立ち向かいます。
自分の力を自覚して行動する青年に成長しています。
音楽が「悪い人の心をナイフもなしにひきさく」力を持つということばに感動しました。
ストーリーも複雑ではないし 、難解な語彙もありません。
小学生から大人まで、それぞれの年齢で感じることの多いお話です。
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こーすちんのむすこ
三人の息子の竜退治の話。
竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。
スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。
切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。
3年生くらいから楽しめると思います。
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せいじつ
バルカル・カラチャエフは、ロシアの中でも南西にある小さな共和国です。
家に住む《幸せ》は、日本で言えば福の神のようなものでしょうか。または、東北地方の座敷童子のようなものかもしれません。
真っ白な雪の中に続くほのかな足跡。
明るいモノトーンの景色を背景にして、この一家の人間らしい暖かさがすばらしい。
ふだんあまりものをいわないおとなしい末っ子の妻の願いも素敵だけれど、それを聞いてすぐに反省して賛成する年寄りや家族たちもすてきです。
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イリヤ・ムーロメツのみっつのたび
分かれ道に道しるべがあって、選んだ道で運命が決まるというモティーフがあります。日本の「やまなしもぎ」も、三本の分かれ道に笹が立っていて「行けっちゃがさがさ」「行くなっちゃがさがさ」と鳴っているという場面がありますね。
昔話は、「言葉の出来事による繰り返し」という語法があって、言われたことは出来事で繰り返されます。だから、「右へ行けば殺される」と書いてあれば、その道を選ぶと必ず殺されるのです。
ところが、この話の主人公イリヤは、運命に挑戦するかのように道を進んで行きます。しかも、もどって来て、道しるべを書きかえてしまう。
読んでいて、語法を逆手にとる(笑)痛快さと、自分の道は自分で切り開く勇敢さに、気持ちが晴ればれしました。
これはロシアの話ですが、舞台となっているのは現ロシアではなく、ソビエトよりさらに前の古いロシアです。
その頃のロシアの都はキエフでした。キエフは今はウクライナの首都です。
ロシアもウクライナもひとつの文化圏として、勇士イリヤの話に心躍らせていたんですね。国境って、いったい何でしょう。
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おしりのきんめっき
昔話の主人公には、けなげで誠実な子どももいるし、この話のようないたずらっ子もいます。
それは、この世の中の人間模様そのものです。
また同時に、ひとりの人間の中にあるさまざまな面を投影しているともいえると思います。
昔話を語るとき、一面だけの人間像だけ選ぶのは、もったいないと思います。
笑い話の中に秘められた少年の生きるたくましさに拍手を送りたいです。
それにしても、最初にアドヴァイスをしたおじさんは、いったいだれなんでしょうね。
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