「スリルのある話」カテゴリーアーカイブ

悪魔の話

あくまのはなし

フランスの昔話

この話のはじまりは、「ヘンゼルとグレーテル」にそっくりですね。
ATU327「子どもたちと鬼」という話型に属します。ここでは、子どもたちが行き着くのはお菓子の家ではなくて、人食いの悪魔の家です。このあたりは「かしこいモリー」などと同じです。

木に登ると灯りがひとつ見えたというのもよくあるシチュエーションですが、孤立的で、いかにも昔らしい展開です。

指輪と寝場所を取りかえるというのは、ナイトキャップの取りかえのモティーフですね。子どもたちは知恵を出して悪魔の家から逃げだします。

援助者としてマリアさまが出てきますが、日本ではあまりなじみがないですね。敵が「悪魔」だからでしょうか。
 
最後の所も子どもたちは知恵を出します。子どもにいわれた通りに刈り入れの用意をしてやってくる百姓も何だかまぬけですが、すっかりだまされる悪魔もまぬけですね。


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雌牛のブーコラ

めうしのブーコラ

アイスランドの昔話

小さな男の子が、大事な雌牛を連れもどすために長い旅に出ます。
前半の三回のくりかえしが楽しく、子どもたちはくすくす笑います。
ブーコラの鳴き声がだんだん大きくなってきて、目的地に近づいていることがわかります。
やっとブーコラを見つけましたが、このまま無事に帰れるとは聞き手も思っていません。やっぱり、トロルが追いかけてきます。
「トロル」は、北欧の妖怪ですが、『三匹のやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン作/瀬田貞二訳/福音館書店刊)で知っている子どもたちがたくさんいます。

後半は、呪的逃走のモティーフです。《昔話雑学》⇒こちらで確認してください。
行きて帰りし物語。幼い子どもにピッタリのおはなしです。

音声は1年生。
子どもたちがハラハラしながら聞いているせいで、語るスピードまで上がります。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

1年生のライブが聞けます。



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三人兄弟と鬼ばば

さんにんきょうだいとおにばば

アメリカの昔話

1958年に翻訳刊行された民話集の中に見つけた話です。
主人公はたいそう貧しい、たどり着いた家は一軒、そこにばあさんがひとり。孤立的ですね。若者が鬼婆の家にたどり着き、お金をとってにげきるまでのエピソードが三回、三回とも完全に同じ言葉でくりかえされています。教会堂や畑、井戸と言葉が通じるのは、一次元性のあらわれです。あまりに昔話の語法にぴったりなのがおもしろくて紹介しました。
1、2年生向きかなと思います。
 
昔話では、主人公が彼岸者から宝を盗んで幸せになる話、よくありますね。「ジャックと豆の木」「かしこいモリー」など。「主人公は泥棒している」と感じない年齢の子どもに語りたいです。とくに、ここに紹介した「三人兄弟と鬼ばば」は、原題に「鬼婆」とあるのですが、ストーリーの中ではただの「ばあさん(原話では老婆)」としか表現されていません。兄弟の首をちょん切るところに鬼婆らしさが見えるだけです。疑問を感じさせないようにスピーディに軽快に語りたいです。


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かきねの戸

かきねのと

ドイツの昔話

わたしの再話のなかでも大ヒット作!絶対に外さない(笑)。 音声は3年生のライブです。

兄妹がかきねの戸を外して出かけるところで、聞き手の子どもたちはこの話が笑い話だとわかります。4歳児でもわかる。ところが、森で迷子になるあたりから緊張しはじめます。恐いのです。それが私には意外でした。あくまでもちょっとした笑い話として語っているからです。木の下に泥棒がやってくるあたりから緊張は高まって、息をつめて聞きます。だからこそ、「 おしっこ 」 「 うんこ 」 で緊張が緩和して、ドカッと笑うんですね。桂枝雀さんの落語の理論とおなじです。

それから、兄妹がどろぼうたちの置いていったお金をみんな持って帰るところ、「 悪~っ 」 て言った子どもたちがいたのです。これも意外でした。な んて正義感が強いんだろうと思いました。そう、たとえどろぼうがおいていったものでも持って帰ったらどろぼうになるのです。ところが、それを知ったお母さんが大喜びしたっていうところで、子どもたち、笑ったんです。このユーモア感覚、すごいと思いません?

そのお金で一生楽に暮らしましたっていうと、「 ああよかった~ 」 と大満足します。昔話の主人公の幸せ = 富の獲得と身の安全で、めでたしめでたし。ほんのおまけの話として再話したのに、子どもたちのおかげで実のあるしっかりした、上質な笑いを引き出す話になりました。


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3年生のライブが聞けます。



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オーバーン・メアリー

イギリスの昔話

ケルトの昔話。長い話です。ヨーロッパの昔話によく出てくるエピソードが次々とつながって、聞き手を飽きさせません。原題は「THE BATTLE OF THE BIRDS(鳥たちの戦争)」ですが、話型名「主人公の逃走を助ける少女」AT313にちなんで、「オーバーン・メアリー」と題しました。

開けてはいけないといわれたのに袋を開けてしまう。だれにもキスさせてはいけないといわれたのに、飼い犬がキスをする。など、禁令と禁令破りではらはらします。

主人公がオーバーン・メアリーといっしょに巨人から逃げるとき、リンゴの切れ端が彼女に変わって返事をします。巨人が追いかけてくると、馬の耳から木や小石を出して後ろに投げ、それは森や山になります。まるで「三枚のお札」です。

骨の再生は、古い宗教とかかわりのあるモティーフ。最後の古いかぎと新しいかぎもいかにも昔話らしいモティーフです。

最後の2文は結末句です。昔話雑学を参考にしてください。

こういう長いストーリーは、わかりやすい言葉でテンポよく語るのがコツ。子どもの「それで?それで?」に応えるように語りましょう。


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ジャックと豆の木

ジャックとまめのき

イギリスの昔話

音声は、2年生に語っているところ。
だいたい3年生くらいが一番ノッてきますが、ハラハラドキドキ、笑いありなので、もっと小さい子でも楽しめます。私は、幼稚園の5歳児さんの卒園まぎわ二月に語ります。15分はかかる話ですが、子どもたちはまじろぎもせずに聞いた後、「 短~い! 」 といいますね。初めは映画や紙芝居とは違うので 「 あれ? 」 っという感じですが、すぐにストーリーに入り込みます。


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2年生のライブが聞けます。




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三びきのくま

イギリスの昔話

音声は1年生のライブ。

よく知られているのは、女の子が主人公のロシアの昔話ですね。
イギリスのこの話はおばあさんがくまの家にやってきます。だから子どもたちは主人公と一体になることはなくちょっと離れて見ています。むしろくまたち、とくに一番小さいくまに心を寄せているようです。それで、勝手に他人の家に入り込んで食べたり寝たりするおばあさんを、ちゃんと批判することができます。
二階の窓からとび出したおばあさんがどうなったか、想像して楽しそうに話してくれますよ。

三回の繰り返しのリズムが心地いいので、四歳の一学期から聞けます。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

1年生のライブが聞けます。



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