「女の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

トロットリーナとおおかみ

イタリアの昔話

ATU333「赤ずきん」の類話です。幼児から低学年向きの話として再話しました。
 
とげの道といばらの道がファンタジックだなと思います。また、「トロットリーナ、トロットリーナ、三時におまえをつかまえる」「おおかみ、おおかみ、そうはいかない」の掛け合いは、まるで鬼ごっこの囃子言葉か童歌のようです。内容は恐い話ですが、子どもがよろこぶ恐さだと思います。
 
グリム童話の赤ずきんは、おおかみに食べられますが、トロットリーナは、「おしっこをしたい」といって、うまくおおかみから逃げだします。「便所に行きたい」で思い出すのは、「三枚のお札」「天道さん金の鎖」ですね。訳者の剣持弘子先生は、『イタリアの昔話』のあとがきで「本来この話は逃走譚ではなかったかとさえ思えてくる」と書いておられます。
 
トロットリーナという女の子は「赤ずきん」の主人公とはずいぶん違います。まず、お母さんが病気になったので生活は彼女にかかっています。そのきびしさからか、トロットリーナは花を摘んで道草をするようなことはありません。お母さんに化けたおおかみを見ても、すぐに正体を見破ります。そして、知恵を使ってひとりでおおかみから逃げだします。おばさんのスカートの中に隠してもらいますが、それも彼女の知恵です。
強いトロットリーナ、かっこいいですね。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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ものをいう卵

ものをいうたまご

アメリカの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」に分類される話です。
この話型の昔話は、世界じゅうに分布しています。グリム童話「ホレおばさん」⇒こちら、ロシアの「ババ・ヤガー」⇒こちら、「馬の首」、イギリスの「地の果ての井戸」⇒こちら、ハイチの「川の母」など、私たちにおなじみのパターンです。

「親切にはよい報いがあり、不親切には悪い報いがある」というメッセージには、道徳的な効用があるのでしょう。

ただ、今回紹介したこの話の中のお母さんは、ずいぶん自分勝手な人に見えますね。ローズとブランシへの対応が、手のひらを返したみたいに変わります。幼い子は、親から認められたいという強い思いがあります。ところが、自分は何も悪いことをしていないはずなのに、ブランシのように理不尽に叱られることがあります。だから、ブランシがきれいなものを持ってかえって来たとき「お母さんは大喜びしました」というのは、子ども側から見ればご褒美なのです。
 
ところで、親切(または不親切)にする相手が人間ではなくて彼岸の存在であることに注目すると、もっと深い意味があるような気がします。森の奥や、井戸などの水の底といった彼岸は、自然界をあらわすと考えることができます。たまたま自然界に入りこんだ人間がどのように行動するかということに焦点を当てると、とても興味深いです。人と自然のモラルを教える話が、世界じゅうで愛されてきたことに、意味があるのではないでしょうか。

同じ話が偕成社文庫の『アメリカのむかし話』(渡辺茂男編訳)に入っていますが、残念ながら絶版です。そこで、皆河宗一氏がA・フォーチャー編『ルイジアナ民話』から翻訳されたものを原話にして、ここに再話しました。ぜひ語ってみてください。。聞きなれていれば5歳児から聞けると思います。
 
音声は図書館のお話会、3歳から7歳まで12人です。小さい子にわかるように語っているので、テキストと少し違っていますが、テキスト通りに語るのが理想形。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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てんとう虫のおじょうさん

てんとうむしのおじょうさん

ウズベキスタンの昔話

中央アジアのウズベキスタンのおはなしです。タシュケントやサマルカンドといえばイメージがしやすいかと思います。
 
シルクロードを行き来する人たちが伝えたおはなしには、ヨーロッパの本格的な魔法昔話にそっくりの話もあれば、この「てんとう虫のおじょうさん」のようなかわいい話もあります。
原題は「てんとう虫娘」なのですが、黄色いくつにお花のような服を着て、ねずみのだんなに愛される彼女だから、すてきなオシャレなおじょうさんと呼びたくて、こんな題をつけました。
 
主人公は、主体的で行動的な女性です。そして愛する夫を悲しませたくない強い心を持っています。彼女が幸せになって、ほんとによかったです。

幼稚園の年長から低学年に語ってみたいと再話しましたが、もっと上の学年でも楽しんでくれるかもしれません。
これからの季節にどうぞ。


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ハヴローシェチカ

ロシアの昔話

話型はATU511「ひとつ目、ふたつ目、三つ目」。
シンデレラ話のひとつで、古くは16世紀にドイツ語圏での記録があるそうです。
 
グリム童話130番「ひとつ目、ふたつ目、三つ目」も類話です。同じ類話でも、「ハヴローシェチカ」に比べ、グリム童話は長く、重く感じられます。グリム童話では、主人公は「ふたつ目」で、「ひとつ目」と「三つ目」のふたりの姉妹が主人公をいじめます。ひとつ目であること、三つ目であることは、宗教的・心理的に意味があるようですが、いっぽう、主人公がふたつ目であるために、ふたりが異常であるという印象があたえられ、身体的な差別を感じてしまいます。が、「ハヴローシェチカ」の相手は三姉妹で、「ふたつ目」も主人公をいじめるのです。単に目の数が、1、2、3であるというだけなので、記号的で軽く感じます。差別感もありません。グリム童話ではなくこの話を語ろうと思った理由のひとつがそれです。それでも印象は強烈ですね。
 
音声は小学2年生です。3年生にも語りましたが、2年生のほうが面白がってくれました。グリムの「ひとつ目、ふたつ目、三つ目」は長く、こうはいきませんね。
 
主人公の持つ、骨から再生させる力は、シャーマンを思い起こさせます。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

2年生のライブが聞けます。




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七羽のはと

ななわのはと

ドイツの昔話

森の中で道に迷ってこまっていると灯りがひとつ見えます。洋の東西を問わず昔話によくあるシチュエーション。状況の一致。

主人公は、池に水浴びにきた七羽のはとが美しい乙女になるのを目撃します。そして、いちばん美しい娘の肌着を盗んで、その娘を妻にします。羽衣をうばわれて天に帰れなくなった天女の話を思い出しませんか?そうです、日本では「天人女房」とよばれる話型の話で、たなばた伝説や羽衣伝説で有名ですね。

よく似た話が世界中にあるのがふしぎです。この「七羽のはと」は、ATU(国際昔話話型カタログ)では、400番「いなくなった妻を捜す夫」に分類されています。313番「呪的逃走」と結びつくことが多いそうです。「七羽のはと」も、伯爵と妻は、ばらの花と茂み、礼拝堂と神父に変身して、追っ手を出しぬきますね。呪的闘争のモティーフを持っています。

この話の最後に、魔女が、別れていく娘に贈り物をします。娘を自立させる母親の心境になって、ほろっとします。


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白い子ねこ

しろいこねこ

オーストリアの昔話

恐ろしい魔女。魔法の力で城は岩山に変わり、王と城の人たちはカラスに変身させられ、岩山の周りを飛びつづけなければならない。城の周りの湖は凍りつき、だれも寄せつけない。そのつめた~い雰囲気が気に入って再話しました。
主人公は女の子。可愛がっている四匹の白い子ねこの力を借りて魔法を解きます。


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猟師の息子

りょうしのむすこ

マルタの昔話

昔話にはよくタブーが出てきますね。七年間口をきいてはいけないとか、13番目の部屋だけはあけてはならないとか。そして、タブーは必ず破られます。昔話では、タブーは破られるためにある。
この話でも、王さまが決して言ってはいけないといった言葉を、お姫さまが口にしたために、花婿が去ります。そこからストーリーが動きだす。
聞き手もそのことが分かっているので、どうやってタブーが破られるのか、タブー違反の後、どうやって幸せな結末にたどり着くのかに興味を集中させます。


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