「心が温かくなる話」カテゴリーアーカイブ

ばらの花とけもの

ばらのはなとけもの

オーストリアの昔話

ATU425C「美女と野獣」典型的な「美女と野獣」の昔話です。
ATU425というのは、「いなくなった夫捜し」という話型名のグループです。でも、この「美女と野獣」は、夫をさがすというモティーフはありません。

「美女と野獣」については、マックス・リュティ『昔話の解釈』から、井戸端会議に報告しているので読んでください。こちら⇒

夫が野獣や大蛇など、異類であることから、異類婚姻譚と考えられますが、日本の「猿婿」「蛇婿」とは、ずいぶん異なりますね。
日本の場合、夫は、あくまでも猿やへびであって、自然界のほんものの動物です。呪いをかけられた人間ではなく、最後は殺される運命です。日本のけもの婿の話で、ハッピーエンドなのは、「たにし息子」くらいでしょうか。


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パティルの水牛

インドの昔話

パティルのすいぎゅう

話型名「運のいいハンス」
グリム童話の「幸せハンス」の類話です。
「幸せハンス」についてのマックス・リュティの興味深い解釈を、ブログ井戸端会議に紹介しています。こちら⇒

主人公が、つぎつぎに値打ちのないものと交換する話としては、ブータンのヘレーじいさんがあります。こちら⇒
これらはどれも笑い話ですが、どこがおもしろくて笑えるのかというと、思わず値打ちのないものと交換してしまうところ、そのたびに満足するところ、その愚かさでしょう。愚かさを笑うのは、優越感からと、自分にもそんな部分があるとの共感からとですね。
笑い話ならば、オチがあるはずです。オチつまり物語の結末が、類話によってずいぶん違います。語り手のの思いや、民族性によるのでしょう。興味深いです。これも井戸端会議で確かめてください。こちら⇒

重荷を下ろして楽になったハンス、嬉しい心のうちを歌いながら帰って行くヘレーじいさん。どちらも、なるほどと考えさせられますが、パティルは、物乞いにわずかだけど全てをあたえることで、全てを手に入れています。
無一文で帰って来たパティルをやさしく迎えるおかみさんは、まるで「かさじぞう」のおばあさんのようです。ふたりが翌日の朝日のもとで見た光景に、思わず涙が出ます。


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金のとさかのおんどりとひき臼

きんのとさかのおんどりとひきうす

ロシアの昔話

小学2年生くらいまでの幼い子むきのおはなしです。

貧乏だけど善良なおじいさんとおばあさん。
木の実が芽を出して天までとどく。木を上って行ったら空に着いた。
空を歩いていると、金のとさかのおんどりがいて、ひき臼があったので持って帰る。ひき臼は、クレープとパイを出してくれる。
どこかで見たことのあるような、ファンタジックなモティーフが、軽快に続きます。

後半は、悪い旦那さんと金のとさかのおんどりの、ひき臼をめぐる闘いです。もちろん、おんどりが勝ちます。
「半分のにわとり」とよく似ていますね。類話です。でも、前後のモティーフが異なると、物語の雰囲気がずいぶん変わります。

このおんどりは、天にいて金のとさかを持つから、彼岸者です。

STU715A「すばらしいオンドリ」


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ゆびの五人兄弟

ゆびのごにんきょうだい

ルーマニアの昔話

幼い子向きのおはなし。

子どもには、自分の体への好奇心があります。それで、手遊び、指遊びがたくさん伝承されています。指の名前を覚えるのも楽しみます。
この話は、そんな指を登場人物にした、かわいい冒険物語です。
この指たちはとても小さな存在ですが、力を合わせて大きなくまをやっつけます。いかにも昔話ですね。
また、それぞれの指たちにそれぞれの個性があるのもおもしろいです。

語られたのはルーマニアなので、ヤシの実は珍しいと思います。珍しいから貴重だという見方もあるし、異国情緒もあるんだと思います。


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かしこい娘

かしこいむすめ

オーストリアの昔話

ATU875「賢い百姓娘」
世界じゅうに類話が広がっています。グリム童話にもあります。KHM94「かしこいお百姓の娘」

導入部の娘と侯爵(王さまなど)出会いにはいくつかのパターンがあります。

1、妻を求めている王が偶然賢い娘に会う。
2、父親が畑で黄金のすり鉢を発見。賢い娘が止めるのも聞かず、父親はすり鉢を王の所に持って行く。王は、すりこ木ももって来いと要求する。
3、農夫と貴族との法廷での争いを解決するために、両者に謎が出される。農夫の娘は正しく答える。
4、王がある家で娘を見つける。王が彼女の親族について尋ねると、娘は機知と賢さに飛んだ答えをする。

「かしこい娘」は3のパターンですね。グリムは2のパターン。

娘は王の出した難題を解くのですが、難題には例えばこんなものがあります。

ア、裸でもなく服も着ないで、馬に乗らずに徒歩でもなく、王の所に行かなければならない。
イ、王のあごひげの値打ちを見積もらなければならない。
ウ、ほんの少しの糸だけで服を編まなければならない。
エ、ゆで卵から雛をかえさなければならない。
オ、七面鳥の肉を切り分け、家族全員に適切な部分を与えなければならない。

などなど。
グリムはアのパターンです。
「かしこい娘」は難題というよりなぞなぞの答えを解くのですね。 

この話は、三重の謎になっています。
まず伯爵が出した謎、次に小百姓の子馬の謎、最後が、最愛のものは何かという謎。
この謎を解いて行く過程で娘は伯爵の愛を勝ちとって行くのですね。特に、最後の最愛のものの謎は、ロマンティックで感動的です。
でも、グリムのように重くとらえないで、笑い話のすてきなオチと考えて再話しました。謎を楽しみながら、軽く語ってください。

この話型の話は、カール・オルフのオペラ「賢い女」(1942年)によってとくに有名になったそうです。重くはなくコミカルなオペラです。

ブログ井戸端会議に、マックス・リュティによる解説をあげています。ご覧ください。こちら⇒


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いぬとねこと玉

いぬとねことたま

朝鮮半島の昔話

ATU560「魔法の指輪」に分類されます。冒頭で、若者が犬とねことへびを助け、お礼に何でも願いの叶う魔法の指輪をもらうというのが典型的な形のようです。主人公は「おじいさん」ではなくて「若者」です。授かる宝物は、「玉」ではなくて、「指輪」です。ヨーロッパを中心に世界じゅうで語られてきた古い話型だそうです。「おじいさん」「玉」「竜宮」となると、いっきに東洋的になるのがおもしろいです。

日本にも全国にたくさんの類話が伝わっていて、へびが宝をくれるもの、さるがくれるもの、竜宮でもらうものがあるようです。

ここで再話したこの話の載っている『朝鮮民譚集』は、朝鮮半島に伝わっていた口伝えの話を集めたもので、1930年に日本で出版されました。

音声は3年生です。

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父親を助けた息子

ちちおやをたすけたむすこ

ナイジェリアの昔話

日本では「姥捨て山」という話型名で、全国に残っています。このホームページでも《日本の昔話》に奈良県吉野郡の伝承として「おばすて山」を再話しています。解説にこの話型についてコメントしていますので読んでくださいね。

ナイジェリアの「父親を助けた息子」は日本の姥捨て山の難題型に当たります。「姥捨て山」は純日本風の話だと思っていたので、アフリカに見つけたときは驚きました。調べてみると、世界的にはATUの981番「隠されたお爺さんの知恵が王国を救う」という話型名で、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南アメリカに類話が発見されています。紀元一世紀に記録されていると注があって、またもや驚きました。キリスト教者ユスティノスの『ピリッポス史』という書物にあるそうです。確認できなくて残念です。
 
ところで、以前にこの《外国の昔話》のページで、朝鮮半島の類話「親すて山」を紹介しています。これは、日本では姥捨て山のもっこ型にあたり、ATU980「恩知らずな息子」に当たります。おそらくユダヤ起源だと書かれています。これも驚きです。
 
世代間の相克はいつの時代もどこの民族でも頭を悩ませるものなのですね。
 
難題のモティーフは、民族性が出ていておもしろいです。
 
あちこちにことわざがちりばめられているのも、アフリカの昔話らしくていいなあと思います。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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親すて山

おやすてやま

朝鮮半島の昔話

現代日本にもつうじる老人問題。親孝行が道徳的にとても大切にされている朝鮮半島でも、このような話が残っているのですね。《日本の昔話》に、同じ話型の話を載せています。「おばすて山」。
 グリム童話にも、夫婦が老父を邪魔にするのを見た幼い息子が、いつか両親が年老いたら同じようにしようと粗末な食器を用意をする話があります。やはりそれを見て夫婦は改心します。「おじいさんと孫」という話です。洋の東西を問わないということかな。

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とらの恩返し

とらのおんがえし

朝鮮半島の昔話

韓国のお話です。この話は1923年に現在の全州市で語られています。原話の出典の 『 朝鮮民潭集 』 は朝鮮半島が南北に分かれる前に編纂されていま す。それで、テキストには 「 朝鮮半島 」 の話としました。

動物の恩返しの話は、日本にもたくさんありますね。鶴の恩返しとか、きつねの恩返しとか、 変わったところではナマズの恩返しとか。「 とらの恩返し 」 はいかにもとららしい威勢のいい恩返しの仕方で、ユーモラスでさえあります。子どもたちはと らに親しみを感じて笑いながら聞いてくれます。それだけに、さいごの場面は胸を打たれます。

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りこうなまほうの鳥

りこうなまほうのとり

モンゴルの昔話

話の中に話が3つも入っていて複雑です。このような構成の話を、枠物語と言います。《昔話雑学》で確認してください。
語るのはちょっと難しいと思いますが、ぜひ紹介したいと思って再話しました。とても不思 議な雰囲気のお話です。
中学生以上向けです。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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