「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

ヤーノシュと天までとどく木

ヤーノシュとてんまでとどくき

ハンガリーの昔話

ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。

竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。

天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。

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ムズィカ

ウクライナの昔話

知恵が足りないと思われていても、音楽に秀でていて世の中の人を幸せにする主人公。
子どもの自然な欲求と才能を育てる大切さを思います。

まぶたに塗ると悪魔の正体が見えるというモティーフは、イギリスの昔話「妖精の塗りぐすり」にあります。
日本では狼のまゆ毛、韓国ではとらのまつ毛も同じように人間の正体を見抜くふしぎな力を持っています。

ムズィカが、おおかみにおそわれたときは、あきらめて死を受け入れようとしたのに、地獄では、悪魔たちを焼くような音楽を鳴らしてやろうと立ち向かいます。
自分の力を自覚して行動する青年に成長しています。

音楽が「悪い人の心をナイフもなしにひきさく」力を持つということばに感動しました。

ストーリーも複雑ではないし 、難解な語彙もありません。
小学生から大人まで、それぞれの年齢で感じることの多いお話です。


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コースチンの息子

こーすちんのむすこ

ウクライナの昔話

三人の息子の竜退治の話。

竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。

スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。

切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。

3年生くらいから楽しめると思います。


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おしりの金めっき

おしりのきんめっき

スイスの昔話

昔話の主人公には、けなげで誠実な子どももいるし、この話のようないたずらっ子もいます。
それは、この世の中の人間模様そのものです。
また同時に、ひとりの人間の中にあるさまざまな面を投影しているともいえると思います。
昔話を語るとき、一面だけの人間像だけ選ぶのは、もったいないと思います。
笑い話の中に秘められた少年の生きるたくましさに拍手を送りたいです。

それにしても、最初にアドヴァイスをしたおじさんは、いったいだれなんでしょうね。


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金の杯

きんのさかずき

ジョージアの昔話

ジョージア(グルジア)共和国で採録された話。

ATU467「すばらしい花(宝石)の探索」。
この話型の類話はあまり多くはないようです。

長い話ですね。
でも、呪物や彼岸者が次々に出て来て、魔法が満載で、飽きさせません。

そして、ストーリーを貫いているのは、ふたりの盗賊との友情です。
期限までに帰らなければ人質が処刑されるというのは、太宰治『走れメロス』を思い出させます。じつは、太宰は、古代ギリシャの伝承とシラーの詩をもとにメロスを書きました。つまり、この友情ストーリーは、さかのぼれば紀元前4世紀ごろからあって、その流れは今に続いているということです。
友情や誠実さというものは、常に人の心を打つもののようです。

ぜひ、高学年の子どもたちに語ってください。


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ヨーナスの馬

ヨーナスのうま

リトアニアの昔話

主人公ヨーナスを乗せて走る馬は、鳥のように、風のように、星のように走ります。
この馬は、馬小屋で一番みすぼらしい馬です。
極端な端っこの存在にもっとも価値があるのが、昔話です。
ヨーナス自身も十二人兄弟の末っ子でまぬけなヨーナスと呼ばれています。その彼が、お城のまほうをとき、お姫さまを救うのです。

ナイトキャップ取りかえのモティーフあり、呪的逃走ありでスリル満点の話です。

最後の「わたしも、お城の宴会に行って~口には入らなかったのさ。」はヨーロッパの昔話によくでてくるる結末句(こちら⇒昔話雑学)です。


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魚がくれた子ども

さかながくれたこども

チリの昔話

ATU303「双子または血を分けた兄弟」

グリム童話KHM60「ふたりの兄弟」の類話です。
「ふたりの兄弟」についてはこちら⇒も見てください。

おじいさんがとって来たものいう魚の進言に従うと、おばあさんが双子を生みます。それだけで、この兄弟には特別の力があることが分かりますね。

生命の標識のモティーフ、貞節を表す抜身の剣のモティーフ、命の水のモティーフと、つぎつぎに展開していきます。
グリムのほうは長すぎて語れませんが、これは語れます。原話を見つけたときは、ほんと、うれしかったです。

2年生くらいから聞けるとおもいます。


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かめ女房

かめにょうぼう

ギリシアの昔話

漁師の若者が亀を連れて帰ると、留守の間に家のそうじや炊事がばっちりてきている。かくれて見ていたら、亀の中から美しい娘が出て来た。
このシチュエーション、亀を魚や狐に取りかえても、成り立ちますね。しかも、日本でもヨーロッパでもよくあるシチュエーションです。
妻が異類の、異類婚姻譚です。

ただし、日本の異類女房のように結末は離別ではありません。むしろ、後半は絵姿女房にそっくりです。
王さまが、妻を手に入れようとして無理難題を出します。けれども、妻は亀の化身で、海の女神である母と弟の豆ちゃんが力を貸して解決してくれます。
この豆ちゃん、かわいいでしょう?かわいくて、子どもに聞かせたくて再話しました。
全体に地中海の明るさを感じます。


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海でも陸でも走る船

うみでもりくでもはしるふね

ノルウェーの昔話

ATU513B「水陸両用船」

王さまが、海でも陸でも走るふしぎな船を造ったものに、姫と結婚させるというおふれを出します。3人兄弟が挑戦しますが、末っ子が成功する話。よくあるパターンですが、どうやって成功するのか、その成り行きにわくわくします。

魔法の船については、空を飛ぶ船や、絵にかいた船が動きだすという話もあります。
古くは、紀元前250年ごろのギリシアのロドス島の詩人アポロニウスが書いた英雄叙事詩「アルゴナウティカ」に出て来るそうです。

主人公は、とちゅうで出会った男たちを船に乗せて行きます。男たちは、並外れた能力をもっています。その男たちに主人公は助けられます。
グリム童話の「六人男世界をのし歩く」を思い出しますね。話型的にはとっても近いです。


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注:語りは上記のテキストと表現が異なる部分があります。
これから語られる方は、テキストのほうが語りやすいと思います。




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かも女房

かもにょうぼう

アラスカの昔話

アラスカの異類婚姻譚です。

妻が異類である場合、日本の昔話では、妻は去り、二度ともどって来ることはありません。「つる女房」「かえる女房」「こい女房」などなど。

ヨーロッパの昔話では、夫は妻を探しに行き、見つけ出します。「蛙の王女」「七羽のはと」などなど。

アイスランドの「あざらし」は日本の話とよく似ています。

アラスカの場合は・・・読んで(聞いて)みてくださいね。

異類婚の話、とっても興味があります。


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