「異界へ行く話」カテゴリーアーカイブ

お月さまをさがしに行くはなし

おつきさまをさがしにいくはなし

パプア・ニューギニアの昔話

イリモというのは、東南アジアに生えている高木です。
「イリモ」というのは、パプア・ニューギニアでの呼び名で、日本では「エリマ」と呼ばれて合板の材料として輸入されています。大きいものは高さ70メートルにもなるそうです。

この話は、月の満ち欠けについての伝承です。
幼い子に、月は満ち欠けがあるんだよと教える話ですね。
月や太陽についての由来ばなしは、いろいろな民族が持っています。天体に物語を見る、素朴な空想が楽しいです。


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ガラスの山

がらすのやま

フランスの昔話

フランスのロレーヌ地方の話です。ロレーヌ地方は、ドイツ語ではロートリンゲンといいます。ちょうどフランスとドイツのあいだにあって、かつてはひとつの国でした。そこで、独自の文化が残っています。

ATU400「いなくなった妻を捜す夫」
この話型の話はとても人気があるようです。グリム童話にも3話入っています。(KHM92「黄金の山の王様」、93「からす」、193「太鼓たたき」)
どうして妻(姫)がいなくなったか、探す旅の道中の出来事、妻を奪還するための戦い、と、ストーリーが進むので、長い話になります。
いろいろなおなじみのモティーフが組み合わさっていって、いかにも昔話らしい話になっていきます。

ここでは、冒頭が、羽衣のモティーフで始まります。日本の「天人女房」とそっくりです。そして、見てはいけないというタブーを冒したために、妻は白鳥になって飛び去ります。

妻を捜して旅する伯爵は、極端に年とった隠者三人に出会います。3回のくりかえしがあります。
とちゅうで、動物たちの分配をアドヴァイスするというモティーフがあります。
動物たちは、お礼に贈り物をくれますが、その贈り物が、妻を救い出すのに、ぴったりの力を持っています。状況の一致ですね。
魔法がとけるときには、場所の一致や時間の一致が奇跡を感じさせてくれます。
竜の頭が七つあるとか、竜の命のありかが図形的であるとか、まるで昔話の語法のオンパレードですね。


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ガムバール

アルメニアの昔話

この話の主人公は、貧しい若者ガムバールです。彼の人生を導くのは、かしこい妻(皇帝の娘)です。
ストーリーはガムバールの行動に沿って進みますが、ほんとうの主人公はかれの妻ではないかという気がします。

物語の真ん中で、ふしぎな井戸が現れます。けれどもそれを中心に物語が進むのではなく、ガムバールと妻の行動に焦点が当てられています。

これらのことから、この話は、とても小説的な雰囲気を持ちます。
それで、彼岸や彼岸の援助者が登場するけれども、まほうの話ではなく、人間たちの話に分類しました。

「たとえ十メーラくれるといっても不正直な仕事は断るんですよ」「愛する者こそが、常に美しく見える」「あなたたちも、自分の幸福は、待たねばなりません。」など、ところどころに、印象的な文言が出て来ます。

結末句もすばらしいです。


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おんどりが屋根の上で鳴くわけ

おんどりがやねのうえでなくわけ

朝鮮半島の昔話

日本の天人女房とそっくりの話です。
水浴びをしている天女の羽衣を盗んで、男は、天に帰れなくしてしまう。ところが、天女は羽衣を見つけて天に飛び去ります。
男は、天女を求めて天に上って行きます。
天上でさまざまな試練があって、男は天から落ちてしまうという話ですね。このさまざまの試練には、天の神さまの妨害とか難題とかがあります。
「おんどりが屋根の上で鳴くわけ」は「浦島太郎」のような形になっています。この結末の形も世界じゅうに分布しています。

ATU400「いなくなった妻を捜す夫」に分類されます。


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ヤーノシュと天までとどく木

ヤーノシュとてんまでとどくき

ハンガリーの昔話

ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。

竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。

天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。

http://shamana.jp/wp-content/uploads/2019/09/3-1.jpg


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ペドロのふしぎな話

ぺどろのふしぎなはなし

ベネズエラの昔話

不思議な雰囲気を持つ話です。
まず盗賊を追いかけている男がいったい何者なのかという疑問が、暗闇の中に浮かび上がります。

川を越えると、そこは知らない土地。
水が異界との境界になっている話はよくあります。
「かしこいモリー」の髪の毛一本橋。橋だから、川をわたるんですね。
「浦島太郎」の、海の向こうにある異郷の地。
グリム童話の「踊ってぼろぼろになった靴」では、地下に湖があって、それを越えてお城に着きます。
などなど。
三途の川もそうですね。

ペドロはあちらの世界で結婚し、孫も生まれ、年老いて、やっと故郷に帰ってきます。すると、ふるさとの家では、たったひと晩しかたっていないのです。
「浦島太郎」の逆バージョンです。たった3日だと思っていたのが300年たっていたというのが浦島太郎ですね。
時間の経過の点では、《日本の昔話》で紹介した「さかべっとうの浄土」こちら⇒と同じですね。でも、「さかべっとうの浄土」の主人公は、異界から帰ってきたとき、出て行った時と同じ年齢です。ところが、ペドロは異界での年数分だけ年を取って帰ってきます。

異界についての人間の想像力を面白いなあと感じます。


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井戸の底の贈り物

いどのそこのおくりもの

フランスの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」
グリム童話「ホレばあさん」やスロバキアの「十二の月の贈り物」の類話です。

井戸の底にいる女も娘たちも、彼岸者です。
主人公には贈り物をくれますが、不親切なもうひとりの娘はひどい目にあいます。

原話の解説によると、かつて娘たちは秋の収穫が終わると、娘宿という場に集まって夜なべ仕事をしながら、さまざまな話を語りあったそうです。
その娘宿の風習が、この話の背後に見えるようです。


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かも女房

かもにょうぼう

アラスカの昔話

アラスカの異類婚姻譚です。

妻が異類である場合、日本の昔話では、妻は去り、二度ともどって来ることはありません。「つる女房」「かえる女房」「こい女房」などなど。

ヨーロッパの昔話では、夫は妻を探しに行き、見つけ出します。「蛙の王女」「七羽のはと」などなど。

アイスランドの「あざらし」は日本の話とよく似ています。

アラスカの場合は・・・読んで(聞いて)みてくださいね。

異類婚の話、とっても興味があります。


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牛の子イワン

うしのこイワン

ロシアの昔話

イワンやババ・ヤガーや怪物のセリフがとってもロシアっぽいですね。
長いけれど、飽きさせない魅力のある話です。

前半がATU300A「橋の上の戦い」、後半が513A「6人が世界じゅうを旅する」という構成になっています。

ATU300というのは「竜退治の男」の話のグループで、昔話カタログのなかでは、魔法昔話の最初にあげられている話型です。超自然の敵がテーマです。
そしてその「A」となっているのは、大筋は「竜退治の男」なんだけど、少し違うグループだからです。何が違うかというと、A「橋の上の戦い」は、主人公が動物息子だというところです。
このロシアの「牛の子イワン」は題名のとおり、牛の息子です。超人的な力を持っていますが、見た目は人間と変わらないのがおもしろいところ。生まれた時から結末まで人間の姿です。

後半のATU513というのは「並外れた旅の道連れ」の話のグループです。
その「A」は、グリム童話「六人男世界をのし歩く」で知られています。
「B」は「水陸両用の船」という話型名です。ノルウェーの類話をそのうちUPしますね。


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白くま王ワレモン

しろくまおうワレモン

ノルウェーの昔話

ATU425A「動物婿」。
魔法昔話の「夫」の項「いなくなった夫捜し」の話型に分類されています。
この話型は、いろんなエピソードと結びついて、長い物語になります。
ただ、「妻による探索と贈り物」「買った夜」のモティーフは必ず入っています。

妻による探索。
お姫さまは果てしない森を歩き続けますね。まさにノルウェーの風景です。道中立ち寄った小屋で、女の子から金のはさみ、びん、テーブルかけの、三つの贈り物をもらいます。
類話には、途中で太陽や月、風、星などから贈り物をもらう話もあります。贈り物には、金のつむぎ車や宝石、ドレスなどもあります。

買った夜。
夫と魔女の結婚式の前の三晩、お姫さまは、三つの贈り物で、夫の側で夜を過ごす機会を買います。

このふたつのモティーフは、じつは、子どもの頃から知っていました。
とっても不思議で印象に残ったのです。夫が眠り薬で眠らされているそばで娘が泣く光景は忘れられません。


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