「異界へ行く話」カテゴリーアーカイブ

はす

インドの昔話

水中の宝を手に入れるには、水に飛びこむ勇気が要ります。じっと待っているだけではだめなんですね。

浦島太郎の竜宮城に限らず、水の底に宮殿がある昔話や伝説は世界じゅうにあります。この話では女神が住んでいます。浦島太郎では乙姫さまですが、ここの女神はおそらくヒンドゥー教のラクシュミーか、仏教の吉祥天でしょう。

はすは、インド原産で、インドの国花でもあります。
インダス文明のころから、聖なる花とされてきたそうです。

この話が記録されたのは、インドのグジャラート州。
マハトマ・ガンジーの出身地です。

高学年向きに再話しました。


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語りが聞けます。

旅の仲間

たびのなかま

ノルウェーの昔話

ノルウェーのペテル・クリスティン・アスビョルンセン(1812~1885年)は、大学生のころグリム童話を読んで昔話に興味を持ち、友だちのヨルゲン・モーといっしょに、ノルウェーに伝わる伝承を集めました。それは、『ノルウェーの民話』として出版されました。正60話と続50話、あわせて110話です。これは、グリム兄弟にもいい物だと評価されたそうです。

「旅の仲間」は、続編に入っています。これは、ジョージ・ダセントによって英訳されていて、ここから再話しました。

長い話ですが、ストーリーは一直線に進みます。そして、氷の柱に閉じこめられた死体や、一度座ったら離れないいすや、三人の魔女の持つ呪物(剣・金の糸玉・ぼうし)、トロル山に住むトロルなど、つぎつぎと現れるモティーフに、わくわくします。

ここに登場する入江は、氷河の作ったフィヨルドです。フィヨルドの風景を写真などで確かめると、金の橋の光景が目に浮かぶでしょう。

最後に、主人公がわが子を切ろうとする場面、旅の仲間が去ってゆく場面は、感動的です。

ATU507「怪物の花嫁」


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金のとさかのおんどりとひき臼

きんのとさかのおんどりとひきうす

ロシアの昔話

小学2年生くらいまでの幼い子むきのおはなしです。

貧乏だけど善良なおじいさんとおばあさん。
木の実が芽を出して天までとどく。木を上って行ったら空に着いた。
空を歩いていると、金のとさかのおんどりがいて、ひき臼があったので持って帰る。ひき臼は、クレープとパイを出してくれる。
どこかで見たことのあるような、ファンタジックなモティーフが、軽快に続きます。

後半は、悪い旦那さんと金のとさかのおんどりの、ひき臼をめぐる闘いです。もちろん、おんどりが勝ちます。
「半分のにわとり」とよく似ていますね。類話です。でも、前後のモティーフが異なると、物語の雰囲気がずいぶん変わります。

このおんどりは、天にいて金のとさかを持つから、彼岸者です。

STU715A「すばらしいオンドリ」


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語りを聞けます

海の水はなぜからい

うみのみずはなぜからい

ノルウェーの昔話

ATU565「魔法のひき臼」

クリスマス・イヴのこと、貧しい弟が、金持ちの兄さんに食べ物を乞います。
いじわるな兄さんは、ベーコンをくれますが、「まっすぐ地獄へ行っちまえ」といいます。なんだかみじめで最低の状況です。
ところが、そのおかげで弟は地獄でまほうの引き臼を手に入れて、大金持ちになるのです。

この類話は世界中にあって、日本でも古くから語られています。
もともとは、北欧が発祥ではないかといわれています。

グリム童話では、KHM103「おいしいおかゆ」が類話です。
ずいぶん雰囲気が異なりますね。「おいしいおかゆ」では、地獄ではなく森の中。悪魔ではなく、おばあさん。やっぱり彼岸者ですが、援助者です。いじわる兄さんではなくお母さんです。お母さんにできないことを、小さな女の子がやってのけて、みんなをおかゆから救う。幼い子が満足できる話です。
「海の水はなぜからい」は、もう少し複雑な構造になっています。小学2年生くらいから楽しめるのではないでしょうか。クリスマス会や新年会にどうぞ。


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語りを聞けます。

地のはての井戸

ちのはてのいど

スコットランドの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」少女が継母からひどい仕打ちを受け、とてもつらい仕事をしなければならない。少女は彼岸者から幸をもらい、継母は実子にも同じことをさせるんだけど、不親切な実子は、不幸をもらう。というお話。

グリム童話KHM13「森の中の三人のこびと」、KHM24「ホレばあさん」(こちら⇒)、アメリカの昔話「ものをいう卵」(こちら⇒)などが類話です。
いろんな話型のエピソードと結びついているので、バリエーションが豊富です。

「地のはての井戸」には、ホレばあさんにあたる彼岸者は出て来ませんが、馬とウニに出会います。ウニが娘に幸せを与えてくれます。他の類話では、ウニではなくてしゃれこうべだったりします。

低学年から聞けると思います。


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蛙の王女

かえるのおうじょ

ロシアの昔話

いかにもロシアらしい雰囲気の話です。

「話に聞いたこともなければ、絵でも見たことがない」「昔ばなしには聞くけれど、とても想像できないほど」「心配しないでおやすみなさい。朝になればよい知恵も浮かぶでしょう」「短かったか長かったか、どれほど歩いたか」などは、ロシアの昔話によく出てくる常套句です。

転がる糸玉、ミルクの川にキセーリの岸、にわとりの足の上にたつ家、ペーチカ、お風呂、どれもロシアの昔話におなじみの風景です。

ババ・ヤガーと不死身のコシチェイも、ロシアらしい登場人物。

けれども、ストーリーは、ロシア特有ではありませんね。
前半はグリムの「三枚の鳥の羽」にそっくりです。後半の動物の恩返しは、世界じゅうにあります。命が卵の中にあるモティーフもよく知られています。

ATU402「動物花嫁」とATU400「いなくなった妻を捜す夫」が結合しています。
よく似た話でも、民族が違うと、こんなふうに変わるのですね。

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蛙の王女

風にのったヤン・フェッテグラーフ

かぜにのったヤン・フェッテグラーフ

ドイツの昔話

真っ暗な道を歩いて行くと、ふしぎなおばあさんに会います。
ものしりグレーテ。
魔女でしょうか?
いえ、キリスト教が入ってくる以前の「賢い女」なのでしょう。糸紡ぎは、女神の仕事だし、この世ができたときからここで糸を紡いでいるのだから。
このおばあさんは、四つの風の母親です。日本の昔話「風の神と子ども」を思い出します。

主人公ヤンは、南風に死ぬことのない国に連れて行ってもらいます。

異界から異界へと移動する、ものすごくスケールの大きい話ですね。それなのに、おばあさんと息子たちの会話は、とっても俗っぽいし、死ぬことのない国のお姫様も王様も、部屋の様子も、日常的です。昔話の面白さですね。

ヤンが故郷に帰るモティーフは、「浦島太郎」と同じです。馬から下りてはいけないと言われたのに、情に負けて馬を下りてしまいます。浦島太郎と同じ、タブーを破って、異界からの贈り物を使えなかった時点で、死が訪れます。

スケールの大きさ、壮大なファンタジーに惹かれて再話しました。最後が主人公の死で終わるので、子どもに語れるかしらと思いましたが、練習しているうちに、もう700年以上も生きたんだから、すごい体験をしたんだから、結局は幸せだったんじゃないかなと思えました。

死神については、興味津々ですが、未調査です(笑)

風にのったヤン・フェッテグラーフ

七羽のはと

ななわのはと

ドイツの昔話

森の中で道に迷ってこまっていると灯りがひとつ見えます。洋の東西を問わず昔話によくあるシチュエーション。状況の一致。

主人公は、池に水浴びにきた七羽のはとが美しい乙女になるのを目撃します。そして、いちばん美しい娘の肌着を盗んで、その娘を妻にします。羽衣をうばわれて天に帰れなくなった天女の話を思い出しませんか?そうです、日本では「天人女房」とよばれる話型の話で、たなばた伝説や羽衣伝説で有名ですね。

よく似た話が世界中にあるのがふしぎです。この「七羽のはと」は、ATU(国際昔話話型カタログ)では、400番「いなくなった妻を捜す夫」に分類されています。313番「呪的逃走」と結びつくことが多いそうです。「七羽のはと」も、伯爵と妻は、ばらの花と茂み、礼拝堂と神父に変身して、追っ手を出しぬきますね。呪的闘争のモティーフを持っています。

この話の最後に、魔女が、別れていく娘に贈り物をします。娘を自立させる母親の心境になって、ほろっとします。

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語りを聞けます。

矢のくさり

やのくさり

アメリカ・インディアン トリンギット族の昔話

原話の出典には、「トリングギット族」とありますが、一般的には「トリンギット族」。北アメリカ大陸の太平洋岸に暮らしている先住民族です。彼ら自身は「リンギット」と呼び、「人間」を意味します。おなじみのトーテムポールを作る人たちです。日本のアイヌと似た文化を持っていて、交流が続いているそうです。

狩猟民族だから、たいせつな「矢」には特別の価値があるのでしょう。シンボルとしての矢には、「保護。自分を守る」という意味があります。クロスした二本の矢は「友情」。折れた矢は「平和」を意味します。

村長の息子が月への畏敬の念を忘れたために、月が罰をくだします。その罰は、村長の息子自身を痛めつけるというものではありません。むしろそれをたしなめた友達をさらって痛めつけるというものでした。このことが「罰」であるためには、少年たちの友情の深さが根底になければなりませんね。

主人公である村長の息子は、友人をすくうために危険な旅に出ます。月、星、矢、葬式の太鼓・・描かれる情景は澄みきった冷たい空気を感じさせます。テーマの扱いとともに、異文化の新鮮な発見があります。

にもかかわらず、おばあさんがくれたいくつかのものを後ろに投げながら逃走するモティーフは、日本の昔話「三枚のお札」とおなじ。帰ってきたら自分の葬式をしていたというモティーフは奈良の昔話「天狗のまな板石」とおなじ。
《日本の昔話》で確認してください。

高学年の子どもたちに聞かせたいお話です。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。

オーバーン・メアリー

イギリスの昔話

ケルトの昔話。長い話です。ヨーロッパの昔話によく出てくるエピソードが次々とつながって、聞き手を飽きさせません。原題は「THE BATTLE OF THE BIRDS(鳥たちの戦争)」ですが、話型名「主人公の逃走を助ける少女」AT313にちなんで、「オーバーン・メアリー」と題しました。

開けてはいけないといわれたのに袋を開けてしまう。だれにもキスさせてはいけないといわれたのに、飼い犬がキスをする。など、禁令と禁令破りではらはらします。

主人公がオーバーン・メアリーといっしょに巨人から逃げるとき、リンゴの切れ端が彼女に変わって返事をします。巨人が追いかけてくると、馬の耳から木や小石を出して後ろに投げ、それは森や山になります。まるで「三枚のお札」です。

骨の再生は、古い宗教とかかわりのあるモティーフ。最後の古いかぎと新しいかぎもいかにも昔話らしいモティーフです。

最後の2文は結末句です。昔話雑学を参考にしてください。

こういう長いストーリーは、わかりやすい言葉でテンポよく語るのがコツ。子どもの「それで?それで?」に応えるように語りましょう。

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