「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

太陽の娘

たいようのむすめ

ジョージアの昔話

壮大なファンタジーです。

冒頭、三人兄弟が畑を耕しますが、末っ子だけは収穫がありません。
昔話の主人公は、こんなふうに端っ子の存在です。端っこの存在が、さまざまな苦難を経て幸せを手に入れます。

この話の主人公は、太陽の娘と暮らし始めたとき、働くのが嫌で怠けてばかりいますが、妻が助けて楽な生活を送ります。主人公は必ずしも勤勉でなくてもよいのです。昔話はいろんな人生を描いているからです。
現実にはひとりの人間の中に怠け心もあれば、ある時期、怠け者になったりします。それを肯定しているのが、昔話です。


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「太陽の娘」前半の語りが聞けます。
「太陽の娘」後半が聞けます。

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うるわしの王女マリア

うるわしのおうじょまりあ

ロシアの昔話

ATU302C「魔法の馬」
この話型の敵役は、竜であることが多いです。でもこの「うるわしの王女マリア」では不死身のコシチェイが敵役です。ロシアの昔話によく出てくるキャラクターです。
魔法の馬の持ち主である魔女も、ロシアらしくヤガーばあさんになっています。

主人公の妹たちのもとに鷹・鷲・からすが求婚にやって来ます。この鳥たちは、それぞれ鳥の王たちです。つまり彼岸の存在で、主人公にとっては援助者となります。
このモティーフを中心として、これだけでひとつの話型を作っています。ATU552「動物と結婚した少女たち」です。

イワン王子は、不死身のコシチェイにさらわれた王女マリアを探して旅し、課題をクリアしていきます。
これも、ATU400「いなくなった妻を探す夫」というひとつの話型を作っています。大変よくある類話です。

イワンがヤガーばあさんのテストに合格したのは、旅の途中で助けた渡り鳥とライオンとミツバチのおかげです。
この動物の恩返しも人気のある話です。ATU554「恩に報いる動物たち」としてたくさんの類話があります

こんなふうにつぎつぎと人気のある話型が連結して長い大きな話となっています。長いけれど、語っていて楽しく、あきることがありません。


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「うるわしの王女マリア」前半の語りが聞けます。
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知恵を売った少年

ちえをうったしょうねん

インドの昔話

ATU910C「事を始める前に慎重に考えよ」
買った教えや授けられた教訓にまつわる話は、世界じゅうにあるようです。

「知恵を売った少年」では、商人の息子に2つ、おうさまにひとつ知恵を売ります。
商人の息子にうったひとつ目と、王さまに売った知恵は、状況の一致がおもしろいです。

高学年から大人のおはなし会で、長いおはなしのあとにどうぞ。


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ガラスの山のお姫さま

がらすのやまのおひめさま

ノルウェーの昔話

三人兄弟の末っ子が、主人公。
ふたりの兄さんにばかにされながら、課題を解決して幸せをつかむ。昔話らしく、主人公のみが、恩寵を得ているのです。

つるつる滑る氷のようなガラスの山、そのてっぺんに座るお姫さま、お姫さまの膝には、金のりんご。くっきりと印象的なイメージで語られていきます。

ATU530「ガラス山の姫」
世界中に類話はありますが、ヨーロッパ中心に語られていたようです。


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プチジャンとかえる

フランスの昔話

ATU402「動物花嫁」

このかえる、とってもチャーミングですね。

類話は世界にたくさんあります。読み比べると面白いです。
重厚なグリム童話KHM63「三枚の鳥の羽」と、豪華なロシアの「蛙の王女」⇒こちらに比べて、フランスの「プチ・ジャンとかえる」は明るく楽しい物語です。あちこちに笑いのツボが隠されています。

長いですが、中学年くらいから聞けるでしょう。


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緑ずきん

みどりずきん

イランの昔話

冒頭、猟師の娘は、父親がとらえてきた馬と結婚します。
ああ、異類婚姻譚だなと気づきますが、この馬が、じつは《翼のある天使》だというところから、いっきに壮大なファンタジーの世界に入っていきます。
魔神の母親やおばが娘に難題を出し、亡き者にしようと追いかけてきます。呪的逃走のモティーフが、はらはらさせてくれます。
主人公の娘がさまざまな試練を乗り越えることで、夫緑ずきんはすくわれ、ふたりは幸せになります。

結末の「この上もなくぜいたくに、この上もなく楽しく暮らしました。」は、現実を生きる語り手聞き手たちにとっての願望であり、夢でもあるのでしょう。
この結末句、気にいっています。


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まほうの馬

まほうのうま

ウズベキスタンの昔話

長い話ですが、昔話でよく使われるモティーフが、つぎつぎ出てくるので飽きません。
はらはらさせる呪的逃走のモティーフ、じれったいウリアの手紙のモティーフ、援助者が自分をを殺してくれと頼む感動的なモティーフなどです。

敵役のディフが道化の要素を持っていて、笑えます。
呪的逃走の部分でのおひめさまとディフのやりとりは、もともと音楽的な要素があったと思われます。遊びの歌かもしれません。

ウズベキスタンは、中央アジアにあって、多民族国家。
古代からシルクロードの中継地点でもあった所です。


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金のひげの巨人

きんのひげのきょじん

フランスの昔話

「かしこいモリー」や「ジャックと豆の木」とよく似たスリル満点の楽しい話です。

ATU328「少年が鬼の宝を盗む」

主人公が盗む鬼の宝が、いかにもふしぎな呪物で、想像力をかき立てます。

長い話ですが、スピーディに進むので、退屈することはありません。主人公も、敵役の巨人(たち)も陽気で、楽しく聞くことができます。

中学年から聞けると思います。


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ガムバール

アルメニアの昔話

この話の主人公は、貧しい若者ガムバールです。彼の人生を導くのは、かしこい妻(皇帝の娘)です。
ストーリーはガムバールの行動に沿って進みますが、ほんとうの主人公はかれの妻ではないかという気がします。

物語の真ん中で、ふしぎな井戸が現れます。けれどもそれを中心に物語が進むのではなく、ガムバールと妻の行動に焦点が当てられています。

これらのことから、この話は、とても小説的な雰囲気を持ちます。
それで、彼岸や彼岸の援助者が登場するけれども、まほうの話ではなく、人間たちの話に分類しました。

「たとえ十メーラくれるといっても不正直な仕事は断るんですよ」「愛する者こそが、常に美しく見える」「あなたたちも、自分の幸福は、待たねばなりません。」など、ところどころに、印象的な文言が出て来ます。

結末句もすばらしいです。


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動物たちの恩返し

どうぶつたちのおんがえし

カビール(アルジェリア)の昔話

カビールは、アルジェリア山間部に住むベルベル人の一部族です。
地理的、歴史的にヨーロッパに近いので、ここで紹介した「動物たちの恩返し」などのように、ヨーロッパによく見られる昔話と同系のものが残っています。
とはいえ、登場する動物やアイテムなど、土俗的で農民的な雰囲気が感じられます。

題名のとおり「動物報恩」の話ですが、後半は「難題婿」の求婚者テストのモティーフで構成されています。
どちらのモティーフも、昔話ではおなじみのものですね。

道中で助けてやる動物の属性と、難題解決の手段が、ぴたりと一致しています。
状況の一致です。それが、物語をすっきりさせているし、奇跡を生んでいます。
聞いている子どもたちは、きっと、つぎは何(羽?はり?・・・)を使うかを楽しんで予想するでしょう。

主人公が「悪さばかりして手のつけられない若者」だというのは、愚か王子やのろまな末っ子と同じで極端な存在であり孤立性をあらわします。
人は、子どものとき、自分をこのように感じることはよくあるし、いっぽう、大人は、育てている子どもを見てこのように感じることもよくあります。
そんなはみだしっ子が、さまざまな経験を経て成長する姿が描かれている話です。


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