きんのひげのきょじん
フランスの昔話
「かしこいモリー」や「ジャックと豆の木」とよく似たスリル満点の楽しい話です。
ATU328「少年が鬼の宝を盗む」
主人公が盗む鬼の宝が、いかにもふしぎな呪物で、想像力をかき立てます。
長い話ですが、スピーディに進むので、退屈することはありません。主人公も、敵役の巨人(たち)も陽気で、楽しく聞くことができます。
中学年から聞けると思います。
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この話の主人公は、貧しい若者ガムバールです。彼の人生を導くのは、かしこい妻(皇帝の娘)です。
ストーリーはガムバールの行動に沿って進みますが、ほんとうの主人公はかれの妻ではないかという気がします。
物語の真ん中で、ふしぎな井戸が現れます。けれどもそれを中心に物語が進むのではなく、ガムバールと妻の行動に焦点が当てられています。
これらのことから、この話は、とても小説的な雰囲気を持ちます。
それで、彼岸や彼岸の援助者が登場するけれども、まほうの話ではなく、人間たちの話に分類しました。
「たとえ十メーラくれるといっても不正直な仕事は断るんですよ」「愛する者こそが、常に美しく見える」「あなたたちも、自分の幸福は、待たねばなりません。」など、ところどころに、印象的な文言が出て来ます。
結末句もすばらしいです。
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どうぶつたちのおんがえし
カビールは、アルジェリア山間部に住むベルベル人の一部族です。
地理的、歴史的にヨーロッパに近いので、ここで紹介した「動物たちの恩返し」などのように、ヨーロッパによく見られる昔話と同系のものが残っています。
とはいえ、登場する動物やアイテムなど、土俗的で農民的な雰囲気が感じられます。
題名のとおり「動物報恩」の話ですが、後半は「難題婿」の求婚者テストのモティーフで構成されています。
どちらのモティーフも、昔話ではおなじみのものですね。
道中で助けてやる動物の属性と、難題解決の手段が、ぴたりと一致しています。
状況の一致です。それが、物語をすっきりさせているし、奇跡を生んでいます。
聞いている子どもたちは、きっと、つぎは何(羽?はり?・・・)を使うかを楽しんで予想するでしょう。
主人公が「悪さばかりして手のつけられない若者」だというのは、愚か王子やのろまな末っ子と同じで極端な存在であり孤立性をあらわします。
人は、子どものとき、自分をこのように感じることはよくあるし、いっぽう、大人は、育てている子どもを見てこのように感じることもよくあります。
そんなはみだしっ子が、さまざまな経験を経て成長する姿が描かれている話です。
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魔法使いは出てこないのですが、すごいファンタジーです。
シベリアの厳しい自然のなかで、エネルギッシュに生き抜いていく主人公が魅力的です。
解説に、この話を語りついだシベリアの先住民ボゲール族には、人間は三つの部分から成り立っているという信仰があると書かれています。肉体と、たましいと、影のたましいです。
そして、人間と他の生きものは、たがいに行き来できるので、がちょうたちや木のかぎやらも三つの部分からできていて、影の魂を持っているのです。
人類が文明化されない古い時代の死生観や自然観が感じられる話です。
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三人兄弟の末っ子が主人公。この話の末っ子は、愚かなだけでなくて、怠け者です。
ATU675「怠け者の少年」
怠け者で愚かな少年が、魚、かえる、へびなどを逃がしてやって、そのお礼に、願いが何でもかなう力を授けてもらう話。
「かますのいいつけ わたしの望み」という唱え言葉が印象的です。
ヨーロッパの昔話の定番通り、命の危険に遭遇しますが、お姫さまと結婚してめでたしめでたしで終わります。
主人公の性格と周りの(力のある)大人たちの反応が、ユーモラスです。
子どもは、どうにもならないほど怠ける時期がありますが、いつかは「絵にも描けないような美しい」人格を手に入れるものです。
昔話は、子どもを励ますだけでなく、大人に子育ての極意を教えてもくれます。
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ひとりでになるグースリ
ATU850「姫のあざ」という話型。姫のあざの特徴を述べることができる人と姫が結婚することが約束される話。
この話は、約束のモティーフがふたつ出て来ます。
ひとつめは、額につののある白髪の老人との約束。
「グースリをやる代わりに、家の中で一番大切なものをよこせ」
家に帰ると、それは父親のことでした。この約束は、主人公に不幸をもたらします。が、じつは、それを契機にして、主人公は自分の人生を自分の足で歩き始めます。
ふたつめは、話型名にもなっている王さまのおふれです。
「姫の目じるしを言い当てた者と姫を結婚させる」
主人公は、つののある老人からもらったグースリを上手く使って、つまり自らの知恵で、お姫さまを手に入れるのです。
前半に登場する、かぶどろぼうの小さな男の子が、なんだかかわいいですね。後半のお姫さまも子ぶたも、かわいい。
短いけれど、子どもの自立を凝縮して描いていて、とってもいい話です。
2年生くらいから聞けると思います。
グースリは、弦楽器で、指で引いて演奏します。時代によって、弦の数や楽器の形は様々だそうです。
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ヤーノシュとてんまでとどくき
ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。
竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。
天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。
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知恵が足りないと思われていても、音楽に秀でていて世の中の人を幸せにする主人公。
子どもの自然な欲求と才能を育てる大切さを思います。
まぶたに塗ると悪魔の正体が見えるというモティーフは、イギリスの昔話「妖精の塗りぐすり」にあります。
日本では狼のまゆ毛、韓国ではとらのまつ毛も同じように人間の正体を見抜くふしぎな力を持っています。
ムズィカが、おおかみにおそわれたときは、あきらめて死を受け入れようとしたのに、地獄では、悪魔たちを焼くような音楽を鳴らしてやろうと立ち向かいます。
自分の力を自覚して行動する青年に成長しています。
音楽が「悪い人の心をナイフもなしにひきさく」力を持つということばに感動しました。
ストーリーも複雑ではないし 、難解な語彙もありません。
小学生から大人まで、それぞれの年齢で感じることの多いお話です。
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こーすちんのむすこ
三人の息子の竜退治の話。
竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。
スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。
切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。
3年生くらいから楽しめると思います。
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