「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

コックのペレ

スウェーデンの昔話

ATU505「恩に報いる死者」
「死人の恩返し」の話です。この話型の典型的なものが、ノルウェーの「旅の仲間」です。⇒こちら

「恩に報いる死者」の導入部は、紀元前2世紀に、聖書外典の「トビト記」に記録されているから、とっても古い話だと分かります。
そんなに古くから今に伝えられてきた昔話には、深いメッセージがあります。
マックスリュティは、それを、「救済」だと説明しています。⇒こちら
この話型がわたしたちの心を打つのは、それなりの理由があるのです。


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ランプのしんつくり

シベリアの昔話

魔法使いは出てこないのですが、すごいファンタジーです。
シベリアの厳しい自然のなかで、エネルギッシュに生き抜いていく主人公が魅力的です。

解説に、この話を語りついだシベリアの先住民ボゲール族には、人間は三つの部分から成り立っているという信仰があると書かれています。肉体と、たましいと、影のたましいです。

そして、人間と他の生きものは、たがいに行き来できるので、がちょうたちや木のかぎやらも三つの部分からできていて、影の魂を持っているのです。

人類が文明化されない古い時代の死生観や自然観が感じられる話です。


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かますのいいつけ

ロシアの昔話

三人兄弟の末っ子が主人公。この話の末っ子は、愚かなだけでなくて、怠け者です。
ATU675「怠け者の少年」
怠け者で愚かな少年が、魚、かえる、へびなどを逃がしてやって、そのお礼に、願いが何でもかなう力を授けてもらう話。

「かますのいいつけ わたしの望み」という唱え言葉が印象的です。

ヨーロッパの昔話の定番通り、命の危険に遭遇しますが、お姫さまと結婚してめでたしめでたしで終わります。
主人公の性格と周りの(力のある)大人たちの反応が、ユーモラスです。

子どもは、どうにもならないほど怠ける時期がありますが、いつかは「絵にも描けないような美しい」人格を手に入れるものです。
昔話は、子どもを励ますだけでなく、大人に子育ての極意を教えてもくれます。


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ひとりでに鳴るグースリ

ひとりでになるグースリ

ロシアの昔話

ATU850「姫のあざ」という話型。姫のあざの特徴を述べることができる人と姫が結婚することが約束される話。

この話は、約束のモティーフがふたつ出て来ます。
ひとつめは、額につののある白髪の老人との約束。
「グースリをやる代わりに、家の中で一番大切なものをよこせ」
家に帰ると、それは父親のことでした。この約束は、主人公に不幸をもたらします。が、じつは、それを契機にして、主人公は自分の人生を自分の足で歩き始めます。
ふたつめは、話型名にもなっている王さまのおふれです。
「姫の目じるしを言い当てた者と姫を結婚させる」
主人公は、つののある老人からもらったグースリを上手く使って、つまり自らの知恵で、お姫さまを手に入れるのです。

前半に登場する、かぶどろぼうの小さな男の子が、なんだかかわいいですね。後半のお姫さまも子ぶたも、かわいい。

短いけれど、子どもの自立を凝縮して描いていて、とってもいい話です。
2年生くらいから聞けると思います。

グースリは、弦楽器で、指で引いて演奏します。時代によって、弦の数や楽器の形は様々だそうです。


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ヤーノシュと天までとどく木

ヤーノシュとてんまでとどくき

ハンガリーの昔話

ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。

竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。

天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。

http://shamana.jp/wp-content/uploads/2019/09/3-1.jpg


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ムズィカ

ウクライナの昔話

知恵が足りないと思われていても、音楽に秀でていて世の中の人を幸せにする主人公。
子どもの自然な欲求と才能を育てる大切さを思います。

まぶたに塗ると悪魔の正体が見えるというモティーフは、イギリスの昔話「妖精の塗りぐすり」にあります。
日本では狼のまゆ毛、韓国ではとらのまつ毛も同じように人間の正体を見抜くふしぎな力を持っています。

ムズィカが、おおかみにおそわれたときは、あきらめて死を受け入れようとしたのに、地獄では、悪魔たちを焼くような音楽を鳴らしてやろうと立ち向かいます。
自分の力を自覚して行動する青年に成長しています。

音楽が「悪い人の心をナイフもなしにひきさく」力を持つということばに感動しました。

ストーリーも複雑ではないし 、難解な語彙もありません。
小学生から大人まで、それぞれの年齢で感じることの多いお話です。


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コースチンの息子

こーすちんのむすこ

ウクライナの昔話

三人の息子の竜退治の話。

竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。

スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。

切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。

3年生くらいから楽しめると思います。


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おしりの金めっき

おしりのきんめっき

スイスの昔話

昔話の主人公には、けなげで誠実な子どももいるし、この話のようないたずらっ子もいます。
それは、この世の中の人間模様そのものです。
また同時に、ひとりの人間の中にあるさまざまな面を投影しているともいえると思います。
昔話を語るとき、一面だけの人間像だけ選ぶのは、もったいないと思います。
笑い話の中に秘められた少年の生きるたくましさに拍手を送りたいです。

それにしても、最初にアドヴァイスをしたおじさんは、いったいだれなんでしょうね。


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金の杯

きんのさかずき

ジョージアの昔話

ジョージア(グルジア)共和国で採録された話。

ATU467「すばらしい花(宝石)の探索」。
この話型の類話はあまり多くはないようです。

長い話ですね。
でも、呪物や彼岸者が次々に出て来て、魔法が満載で、飽きさせません。

そして、ストーリーを貫いているのは、ふたりの盗賊との友情です。
期限までに帰らなければ人質が処刑されるというのは、太宰治『走れメロス』を思い出させます。じつは、太宰は、古代ギリシャの伝承とシラーの詩をもとにメロスを書きました。つまり、この友情ストーリーは、さかのぼれば紀元前4世紀ごろからあって、その流れは今に続いているということです。
友情や誠実さというものは、常に人の心を打つもののようです。

ぜひ、高学年の子どもたちに語ってください。


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ヨーナスの馬

ヨーナスのうま

リトアニアの昔話

主人公ヨーナスを乗せて走る馬は、鳥のように、風のように、星のように走ります。
この馬は、馬小屋で一番みすぼらしい馬です。
極端な端っこの存在にもっとも価値があるのが、昔話です。
ヨーナス自身も十二人兄弟の末っ子でまぬけなヨーナスと呼ばれています。その彼が、お城のまほうをとき、お姫さまを救うのです。

ナイトキャップ取りかえのモティーフあり、呪的逃走ありでスリル満点の話です。

最後の「わたしも、お城の宴会に行って~口には入らなかったのさ。」はヨーロッパの昔話によくでてくるる結末句(こちら⇒昔話雑学)です。


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