「男の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

水の精ネックと少年

みずのせいネックとしょうねん

スウェーデンの昔話

水の精は、水にまつわる妖精、精霊のことです。北欧に伝わる水の精はネックと呼ばれています。ただし、ネックは男性の姿をしていて、女性の水の精はニクシ―と呼ばれるそうです。

かつては、日本でも、川の神、海の神、山の神、田の神とか神木など、人間の周りの自然環境のなかに神がいました。そこへ仏教などの宗教が入ってきたりして、古来の神が妖怪として扱われるようになっていったそうです。カッパは、水の神の零落した姿ですね。

ネックは精霊だから、一種の妖怪ですが、古来の神に近いのかなと感じます。でも、この話のなかでは、ちょっとまぬけで親しみ深く、憎めない存在ですね。

幼児から低学年向きに再話しました。


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語りを聞けます。




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雌牛のブーコラ

めうしのブーコラ

アイスランドの昔話

小さな男の子が、大事な雌牛を連れもどすために長い旅に出ます。
前半の三回のくりかえしが楽しく、子どもたちはくすくす笑います。
ブーコラの鳴き声がだんだん大きくなってきて、目的地に近づいていることがわかります。
やっとブーコラを見つけましたが、このまま無事に帰れるとは聞き手も思っていません。やっぱり、トロルが追いかけてきます。
「トロル」は、北欧の妖怪ですが、『三匹のやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン作/瀬田貞二訳/福音館書店刊)で知っている子どもたちがたくさんいます。

後半は、呪的逃走のモティーフです。《昔話雑学》⇒こちらで確認してください。
行きて帰りし物語。幼い子どもにピッタリのおはなしです。

音声は1年生。
子どもたちがハラハラしながら聞いているせいで、語るスピードまで上がります。

テキストは『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

1年生のライブが聞けます。



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三人兄弟と鬼ばば

さんにんきょうだいとおにばば

アメリカの昔話

1958年に翻訳刊行された民話集の中に見つけた話です。
主人公はたいそう貧しい、たどり着いた家は一軒、そこにばあさんがひとり。孤立的ですね。若者が鬼婆の家にたどり着き、お金をとってにげきるまでのエピソードが三回、三回とも完全に同じ言葉でくりかえされています。教会堂や畑、井戸と言葉が通じるのは、一次元性のあらわれです。あまりに昔話の語法にぴったりなのがおもしろくて紹介しました。
1、2年生向きかなと思います。
 
昔話では、主人公が彼岸者から宝を盗んで幸せになる話、よくありますね。「ジャックと豆の木」「かしこいモリー」など。「主人公は泥棒している」と感じない年齢の子どもに語りたいです。とくに、ここに紹介した「三人兄弟と鬼ばば」は、原題に「鬼婆」とあるのですが、ストーリーの中ではただの「ばあさん(原話では老婆)」としか表現されていません。兄弟の首をちょん切るところに鬼婆らしさが見えるだけです。疑問を感じさせないようにスピーディに軽快に語りたいです。


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語りを聞けます。




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金剛山のとら

くむがんさんのとら

朝鮮半島の昔話

金剛山は北朝鮮にある有名な山です。クムガンサンと読みます。原題は「大彪退治」。

「焦げ飯」は、ご飯をたいたときにおかまに焦げ付いているおこげのご飯のこと。朝鮮半島の説話のなかでは、猟師が狩りに出かける際には、いつもおこげを持っていくそうです。
男の子の修業もオーバーな表現ですが、とらのお腹の中がひとつの村がすっぽり入るほど大きいというファンタジーがおもしろいですね。

音声は4年生のライブです。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




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酋長カイレ

しゅうちょうカイレ

コロンビアの昔話

不思議な話です。
娘と結婚する若者は、たぶんカイレが仕留めた死者の首が再生した者でしょう。
そして、彼が月にいちど帰っていくところは死者の国。その一族の国では、若者は鹿のすがたをしているように思えてなりません。
人と動物、この世とあの世、永遠の魂がその二つの次元をいったり来たりする世界観は、アイヌの昔話を思い起こさせます。

中学生に語りたいと思って再話しました。
子どもに語ってみると井戸端会議その1 と →その2 を読んでみてください。
あまりにも手ごたえがあって驚きました。

テキストは『語りの森昔話集2ねむりねっこ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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七羽のはと

ななわのはと

ドイツの昔話

森の中で道に迷ってこまっていると灯りがひとつ見えます。洋の東西を問わず昔話によくあるシチュエーション。状況の一致。

主人公は、池に水浴びにきた七羽のはとが美しい乙女になるのを目撃します。そして、いちばん美しい娘の肌着を盗んで、その娘を妻にします。羽衣をうばわれて天に帰れなくなった天女の話を思い出しませんか?そうです、日本では「天人女房」とよばれる話型の話で、たなばた伝説や羽衣伝説で有名ですね。

よく似た話が世界中にあるのがふしぎです。この「七羽のはと」は、ATU(国際昔話話型カタログ)では、400番「いなくなった妻を捜す夫」に分類されています。313番「呪的逃走」と結びつくことが多いそうです。「七羽のはと」も、伯爵と妻は、ばらの花と茂み、礼拝堂と神父に変身して、追っ手を出しぬきますね。呪的闘争のモティーフを持っています。

この話の最後に、魔女が、別れていく娘に贈り物をします。娘を自立させる母親の心境になって、ほろっとします。


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年とった栗毛の馬

としとったくりげのうま

北米インディアンの昔話

先住民族の残している昔話は、広大な自然の中で展開する話が多いように思います。この北米インディアンの話も、遥かな大草原と、そこを移動するバッファローの群れが目に見えるようです。
そしてそこには、神話的な空気が漂います。骨を積み上げて再生させるのは、シャーマンの業です。

極端に貧しい、村社会の底辺にいた少年が、勇気とまっすぐな心を持ち、彼岸の力によって首長の地位にのぼります。いかにも昔話らしいハッピーエンドの物語です。


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矢のくさり

やのくさり

アメリカ・インディアン トリンギット族の昔話

原話の出典には、「トリングギット族」とありますが、一般的には「トリンギット族」。北アメリカ大陸の太平洋岸に暮らしている先住民族です。彼ら自身は「リンギット」と呼び、「人間」を意味します。おなじみのトーテムポールを作る人たちです。日本のアイヌと似た文化を持っていて、交流が続いているそうです。

狩猟民族だから、たいせつな「矢」には特別の価値があるのでしょう。シンボルとしての矢には、「保護。自分を守る」という意味があります。クロスした二本の矢は「友情」。折れた矢は「平和」を意味します。

村長の息子が月への畏敬の念を忘れたために、月が罰をくだします。その罰は、村長の息子自身を痛めつけるというものではありません。むしろそれをたしなめた友達をさらって痛めつけるというものでした。このことが「罰」であるためには、少年たちの友情の深さが根底になければなりませんね。

主人公である村長の息子は、友人をすくうために危険な旅に出ます。月、星、矢、葬式の太鼓・・描かれる情景は澄みきった冷たい空気を感じさせます。テーマの扱いとともに、異文化の新鮮な発見があります。

にもかかわらず、おばあさんがくれたいくつかのものを後ろに投げながら逃走するモティーフは、日本の昔話「三枚のお札」とおなじ。帰ってきたら自分の葬式をしていたというモティーフは奈良の昔話「天狗のまな板石」とおなじ。
《日本の昔話》で確認してください。

高学年の子どもたちに聞かせたいお話です。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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オーバーン・メアリー

イギリスの昔話

ケルトの昔話。長い話です。ヨーロッパの昔話によく出てくるエピソードが次々とつながって、聞き手を飽きさせません。原題は「THE BATTLE OF THE BIRDS(鳥たちの戦争)」ですが、話型名「主人公の逃走を助ける少女」AT313にちなんで、「オーバーン・メアリー」と題しました。

開けてはいけないといわれたのに袋を開けてしまう。だれにもキスさせてはいけないといわれたのに、飼い犬がキスをする。など、禁令と禁令破りではらはらします。

主人公がオーバーン・メアリーといっしょに巨人から逃げるとき、リンゴの切れ端が彼女に変わって返事をします。巨人が追いかけてくると、馬の耳から木や小石を出して後ろに投げ、それは森や山になります。まるで「三枚のお札」です。

骨の再生は、古い宗教とかかわりのあるモティーフ。最後の古いかぎと新しいかぎもいかにも昔話らしいモティーフです。

最後の2文は結末句です。昔話雑学を参考にしてください。

こういう長いストーリーは、わかりやすい言葉でテンポよく語るのがコツ。子どもの「それで?それで?」に応えるように語りましょう。


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ジャックと豆の木

ジャックとまめのき

イギリスの昔話

音声は、2年生に語っているところ。
だいたい3年生くらいが一番ノッてきますが、ハラハラドキドキ、笑いありなので、もっと小さい子でも楽しめます。私は、幼稚園の5歳児さんの卒園まぎわ二月に語ります。15分はかかる話ですが、子どもたちはまじろぎもせずに聞いた後、「 短~い! 」 といいますね。初めは映画や紙芝居とは違うので 「 あれ? 」 っという感じですが、すぐにストーリーに入り込みます。


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2年生のライブが聞けます。




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