「異界へ行く話」カテゴリーアーカイブ

カトリンがくるみをパチリと割った話

かとりんがくるみをぱちりとわったはなし

イギリスの昔話

ATU306「踊ってすり切れた靴」
グリム童話に類話があります(KHM133)が、あの話と同じ話型です。
「踊ってすり切れた靴」では、地下の不思議な世界で踊りまくるのはお姫さまたちですが、「カトリンが~」では王子さまです。
王子さまを妖精の手から救い出すのが主人公の少女カトリンです。「踊ってすり切れた靴」では旅の兵隊がお姫さまたちを救い出します。救い出すのはどちらの話でも、たまたまやって来た旅人ですね。
リュティによると、昔話の主人公は、本質的なものと出会うために旅に出るのですが、この話ではふしぎな世界にとらわれている人を救い出します。そしてそのことで自分自身が幸せになります。


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りこうなエレーナ姫

りこうなえれーなひめ

ロシアの昔話

悪魔は必ずしも主人公に悪さをするばかりではありません。
この話では、悪魔は、助けてくれたお礼に、なんでも兵隊のいうとおりにします。

悪魔に美しい娘が三人いるというのも意外で面白いですね。

ところで、ハトになった娘たちに知恵をさずけるというエレーナ姫は、いったい何者なのでしょう。

ATU306「踊ってすり切れた靴」の類話です。


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靴をはきつぶすお姫さまたち

くつをはきつぶすおひめさまたち

ハンガリーの昔話

ATU306「踊ってすり切れた靴」
ヨーロッパを中心に伝わっている話のようです。グリム童話にもあります。KHM33。
グリム童話では、援助者としてひとりのおばあさんが登場します。おばあさんは、挑戦者の兵隊に、「ぶどう酒を飲んではダメ」「寝たふりをせよ」というふたつの言葉による贈り物とすがたが見えなくなるマントをくれます。
けれども、今回紹介したハンガリーの話では、おばあさんは出て来ません。眠くなるのは、眠り薬のせいではなく、どこからともなく吹いてくる風(超自然の力)です。若者が眠気に打ち勝つのは、末のお姫さまの恋心のおかげです。あとは自分自身の力で幸せを勝ちとります。

地下の世界の銅の森、銀の森、金の森、そして黒いお城。不思議な世界です。


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パシュクンジ

ジョージアの昔話

ATU301「三人のさらわれた姫」

この話には、超自然の敵が出て来ます。魔人のデフ。地上のデフと、地下のデフがいます。末っ子とデフとの戦いが、アニメチックでとても盛り上がります。
パシュクンジは、超自然の援助者です。末っ子を上の世界に連れ帰ってくれますが、とちゅうで肉を食べさせなければなりません。肉がなくなって、末っ子が自分の体の一部をあたえるというモティーフがおもしろいです。

この昔話は、世界じゅうでもっともよく知られた話のひとつだそうです。
長い話ですが、ぜひ子どもたちに聞かせたいです。高学年向き。


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小さなからす

フランスの昔話

病気の父親の眼を治すために、三姉妹の末っ子が、からすと結婚します。
この冒頭のモティーフは、「猿婿」や「蛇婿」など日本の異類婚姻譚とそっくりですね。異なるのは、異類(からす)がじつは魔法にかけられた王子さまで、からすと結婚した娘が幸せになるところです。

嫉妬した姉さんたちの策略で、末娘は王子さまを失います。王子を探して旅に出ますが、ここが話の中心になっています。
ATU425「いなくなった夫探し」


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太陽の娘

たいようのむすめ

ジョージアの昔話

壮大なファンタジーです。

冒頭、三人兄弟が畑を耕しますが、末っ子だけは収穫がありません。
昔話の主人公は、こんなふうに端っ子の存在です。端っこの存在が、さまざまな苦難を経て幸せを手に入れます。

この話の主人公は、太陽の娘と暮らし始めたとき、働くのが嫌で怠けてばかりいますが、妻が助けて楽な生活を送ります。主人公は必ずしも勤勉でなくてもよいのです。昔話はいろんな人生を描いているからです。
現実にはひとりの人間の中に怠け心もあれば、ある時期、怠け者になったりします。それを肯定しているのが、昔話です。


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「太陽の娘」前半の語りが聞けます。
「太陽の娘」後半が聞けます。

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うるわしの王女マリア

うるわしのおうじょまりあ

ロシアの昔話

ATU302C「魔法の馬」
この話型の敵役は、竜であることが多いです。でもこの「うるわしの王女マリア」では不死身のコシチェイが敵役です。ロシアの昔話によく出てくるキャラクターです。
魔法の馬の持ち主である魔女も、ロシアらしくヤガーばあさんになっています。

主人公の妹たちのもとに鷹・鷲・からすが求婚にやって来ます。この鳥たちは、それぞれ鳥の王たちです。つまり彼岸の存在で、主人公にとっては援助者となります。
このモティーフを中心として、これだけでひとつの話型を作っています。ATU552「動物と結婚した少女たち」です。

イワン王子は、不死身のコシチェイにさらわれた王女マリアを探して旅し、課題をクリアしていきます。
これも、ATU400「いなくなった妻を探す夫」というひとつの話型を作っています。大変よくある類話です。

イワンがヤガーばあさんのテストに合格したのは、旅の途中で助けた渡り鳥とライオンとミツバチのおかげです。
この動物の恩返しも人気のある話です。ATU554「恩に報いる動物たち」としてたくさんの類話があります

こんなふうにつぎつぎと人気のある話型が連結して長い大きな話となっています。長いけれど、語っていて楽しく、あきることがありません。


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「うるわしの王女マリア」前半の語りが聞けます。
「うるわしの王女マリア」後半の語りが聞けます。

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楽師と幽霊

がくしとゆうれい

クロアチアの昔話

ATU470「死人の恩返し」
導入部で、されこうべが、結婚式のまんじゅうを食べさせてくれたお礼だといって、主人公を異界へつれていきます。
助けられたカメが竜宮城へつれていってくれる「浦島太郎」と同じですね。
そして、異界ではたった三日しかたっていないのに、帰ってきたら百年以上たっています。異界とこの世では時間の流れが違うのです。
日本の昔話「春の野道で」⇒こちらでは、おじいさんがされこうべにお酒を飲ませますが、異界へ行くことはありません。同じモティーフを使っていても、雰囲気もテーマもずいぶん異なりますね。

あちらの世界で幽霊を訪ねてくる三人の男のモティーフが印象的です。
人生ってそういうものかなあと考えさせられます。


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緑ずきん

みどりずきん

イランの昔話

冒頭、猟師の娘は、父親がとらえてきた馬と結婚します。
ああ、異類婚姻譚だなと気づきますが、この馬が、じつは《翼のある天使》だというところから、いっきに壮大なファンタジーの世界に入っていきます。
魔神の母親やおばが娘に難題を出し、亡き者にしようと追いかけてきます。呪的逃走のモティーフが、はらはらさせてくれます。
主人公の娘がさまざまな試練を乗り越えることで、夫緑ずきんはすくわれ、ふたりは幸せになります。

結末の「この上もなくぜいたくに、この上もなく楽しく暮らしました。」は、現実を生きる語り手聞き手たちにとっての願望であり、夢でもあるのでしょう。
この結末句、気にいっています。


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お月さまをさがしに行くはなし

おつきさまをさがしにいくはなし

パプア・ニューギニアの昔話

イリモというのは、東南アジアに生えている高木です。
「イリモ」というのは、パプア・ニューギニアでの呼び名で、日本では「エリマ」と呼ばれて合板の材料として輸入されています。大きいものは高さ70メートルにもなるそうです。

この話は、月の満ち欠けについての伝承です。
幼い子に、月は満ち欠けがあるんだよと教える話ですね。
月や太陽についての由来ばなしは、いろいろな民族が持っています。天体に物語を見る、素朴な空想が楽しいです。


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