「異界へ行く話」カテゴリーアーカイブ

矢のくさり

やのくさり

アメリカ・インディアン トリンギット族の昔話

原話の出典には、「トリングギット族」とありますが、一般的には「トリンギット族」。北アメリカ大陸の太平洋岸に暮らしている先住民族です。彼ら自身は「リンギット」と呼び、「人間」を意味します。おなじみのトーテムポールを作る人たちです。日本のアイヌと似た文化を持っていて、交流が続いているそうです。

狩猟民族だから、たいせつな「矢」には特別の価値があるのでしょう。シンボルとしての矢には、「保護。自分を守る」という意味があります。クロスした二本の矢は「友情」。折れた矢は「平和」を意味します。

村長の息子が月への畏敬の念を忘れたために、月が罰をくだします。その罰は、村長の息子自身を痛めつけるというものではありません。むしろそれをたしなめた友達をさらって痛めつけるというものでした。このことが「罰」であるためには、少年たちの友情の深さが根底になければなりませんね。

主人公である村長の息子は、友人をすくうために危険な旅に出ます。月、星、矢、葬式の太鼓・・描かれる情景は澄みきった冷たい空気を感じさせます。テーマの扱いとともに、異文化の新鮮な発見があります。

にもかかわらず、おばあさんがくれたいくつかのものを後ろに投げながら逃走するモティーフは、日本の昔話「三枚のお札」とおなじ。帰ってきたら自分の葬式をしていたというモティーフは奈良の昔話「天狗のまな板石」とおなじ。
《日本の昔話》で確認してください。

高学年の子どもたちに聞かせたいお話です。

テキストは『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

語りを聞けます。




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オーバーン・メアリー

イギリスの昔話

ケルトの昔話。長い話です。ヨーロッパの昔話によく出てくるエピソードが次々とつながって、聞き手を飽きさせません。原題は「THE BATTLE OF THE BIRDS(鳥たちの戦争)」ですが、話型名「主人公の逃走を助ける少女」AT313にちなんで、「オーバーン・メアリー」と題しました。

開けてはいけないといわれたのに袋を開けてしまう。だれにもキスさせてはいけないといわれたのに、飼い犬がキスをする。など、禁令と禁令破りではらはらします。

主人公がオーバーン・メアリーといっしょに巨人から逃げるとき、リンゴの切れ端が彼女に変わって返事をします。巨人が追いかけてくると、馬の耳から木や小石を出して後ろに投げ、それは森や山になります。まるで「三枚のお札」です。

骨の再生は、古い宗教とかかわりのあるモティーフ。最後の古いかぎと新しいかぎもいかにも昔話らしいモティーフです。

最後の2文は結末句です。昔話雑学を参考にしてください。

こういう長いストーリーは、わかりやすい言葉でテンポよく語るのがコツ。子どもの「それで?それで?」に応えるように語りましょう。


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こびとのおくりもの

オーストリアの昔話

ヨーロッパ版の 「 こぶとりじいさん 」 です。
日本の話では山の中で鬼がコブを取りますね。ここでは、森の中で小人がコブを取ってくれます。日本の話と同じく、ちゃんと踊りの歌もあるんですよ。「 月曜日、火曜日、… 」 という曜日の歌なんですけど、子どもたちはそれが気にいったらしく、すっかり覚えて道で会っても歌ってくれます ( 笑 )。
音声は2年生のライブです。


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2年生のライブが聞けます。




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ジャックと豆の木

ジャックとまめのき

イギリスの昔話

音声は、2年生に語っているところ。
だいたい3年生くらいが一番ノッてきますが、ハラハラドキドキ、笑いありなので、もっと小さい子でも楽しめます。私は、幼稚園の5歳児さんの卒園まぎわ二月に語ります。15分はかかる話ですが、子どもたちはまじろぎもせずに聞いた後、「 短~い! 」 といいますね。初めは映画や紙芝居とは違うので 「 あれ? 」 っという感じですが、すぐにストーリーに入り込みます。


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天までとどいた木

ドイツの昔話

長い話です。
三人兄弟の末っ子、まぬけなヘルムが主人公。よくあるモティーフです。
このヘルムが旅をするのですが、まず木を登る途中で七人のお婆さんに次々に会います。天に上ると、そこはひとつの世界で、課題をクリアしてお姫さまと結ばれる。けれど、タブー違反を犯して、さらにはるかかなた暗闇の世界に向けて旅に出ます。そこでさらなる課題が待ちかまえています。
男の子が、まるで階段を上るように成長していく、幼さから脱皮していくことが語られています。


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豆のつる

まめのつる

リトアニアの昔話

こぼれた豆が芽を出して天まで届く。天上の世界にいたのは神さま! 笑い話です。
音声は小学3年生。子どもたちの声、聴いてください。「 ハッピーエンドと違うやん 」 っていってるでしょ。その向こうでおじさんの声が聞こえませんか?これは担任の先生の声。「 世界にはいろんな話があるいうことやなあ 」 っておっしゃってる ( 笑 )
なぜお父さんが一人になってよかったのか、自論を展開してる子もいましたよ。


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3年生のライブが聞けます。




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