「笑い話」カテゴリーアーカイブ

おしりの金めっき

おしりのきんめっき

スイスの昔話

昔話の主人公には、けなげで誠実な子どももいるし、この話のようないたずらっ子もいます。
それは、この世の中の人間模様そのものです。
また同時に、ひとりの人間の中にあるさまざまな面を投影しているともいえると思います。
昔話を語るとき、一面だけの人間像だけ選ぶのは、もったいないと思います。
笑い話の中に秘められた少年の生きるたくましさに拍手を送りたいです。

それにしても、最初にアドヴァイスをしたおじさんは、いったいだれなんでしょうね。


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サン・ベルリコカンの温泉へ

サン・ベルリコカンのおんせんへ

フランスの昔話

風邪をひくと大変なのは、動物たちも同じです(笑)
みんなで、温泉の水を飲みに出かけます。

ATU130「動物たちの夜の宿」
グリム童話「ブレーメンの音楽隊」と同じ話型です。
「ブレーメンの音楽隊」も楽しい話ですが、年を取って飼い主に殺されるのを逃れて新天地ブレーメンに旅立つのと比べて、こちらは温泉旅行と、ずいぶん気楽ですね。それに、ちゃんと温泉の水を飲んで風邪を治して家に帰ります。

低学年でも聞けると思います。
ブレーメンの音楽隊との違いを指摘してくれるかもしれませんね。


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動物が話をしていたころ

どうぶつがはなしをしていたころ

フランスの昔話

「動物が話をしていたころ」というのは、この話の発端句(こちら⇒昔話雑学)で、発端句が題名になっています。おもしろいですね。

ATU175「タール人形と穴ウサギ」という話型です。
いたずら者のウサギをつかまえるために、タールをぬり付けた人形を畑に置いておいて、ウサギが人形をなぐったりけ飛ばしたりするたびに、タールのせいで人形にくっ付きます。身動きできなくなってウサギはつかまります。

アメリカのジョエル・チャンドラー・ハリスの『リーマスじいやの物語』で有名です。調べてみるとヨーロッパも含め世界じゅうに類話がありました。「動物が話をしていたころ」はフランスの昔話です。

アメリカの黒人の間で語り継がれてひろがったので、元はアフリカ起源かといわれています。最近の研究では、インドから広がったのだという説もあります、なんにせよ、おもしろい話は世界をめぐりますね。

かしこいかめは、ここでは、トリックスターの役割をしています。


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福の神はくさったさくらんぼの中に

ふくのかみはくさったさくらんぼのなかに

マケドニアの昔話

ATU「宝は自分の家にあり」
夢で「ある場所に行けば好い事がある」と聞いて行ってみるが見つからず、そこで出会った人から「夢など信じるな」といわれてその人の夢の話を聞く。その夢のおかげで、宝は自分の家にあることが分かるという話。

この話型は、ヨーロッパでは、橋と関わって語られることが多いです。夢に見て出かけて行く所が、イギリスのロンドン橋やチェコのカレル橋、ドイツのモーゼル橋などなど。
日本の「みそ買い橋」(こちら⇒)は、イギリスの昔話「スウォファムの行商人」からの翻案です。

「福の神はくさったさくらんぼの中に」には、橋は出て来ません。さて橋のあるのと無いのと、どちらのほうが古い形なのでしょう。


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主人と召使い

しゅじんとめしつかい

アルメニアの昔話

力や立場の弱い者が、知恵を使って強い者に勝つ話です。
このテーマは、昔話にはよくあります。おそらく、このような話を語りついだ人びとは、社会的弱者だったのでしょう。そして、社会的弱者は、世間の人口の大多数だったと思います。だから、支持されて語りつがれたのでしょうね。
主人が腹を立てては言い訳をする姿が痛快です。

昔話はファンタジー(架空の話)ですが、必ずしも魔法が出て来るとは限りません。この「主人と召使い」のようなどこにでもありそうな(でも常識ではあり得ない)話もあるのです。


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十人兄弟

じゅうにんきょうだい

中国の昔話

特異な力を持つ兄弟たちが、力を合わせて暴君をやっつけるというストーリーで、たいていは、暴君は最後に水に押し流されるという結末を持ちます。
中国では有名な昔話です。漢族だけでなく、少数民族にも広がりを持っています。
絵本『王さまと九人のきょうだい』(君島久子/岩波書店)は、雲南省イ族のはなし。
兄弟は、11人、6人、7人と、さまざまだそうです。
冒頭で、子どもがいない夫婦に念願の子どもができるという部分は、紹介した「十人兄弟」にはありません。始皇帝の圧制で万里の長城から泣き声が聞こえるところから始まり、始皇帝がすっぽんのえじきになって終わる。ストーリーがすっきりして分かり易いと思います。

子どもに語るときは、万里の長城と始皇帝について軽く説明しましょう。

君島久子著『「王さまと九人の兄弟」の世界』(岩波書店)には、歴史的な説明もあって興味深いです。


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はえ打ちの勇者

はえうちのゆうしゃ

イスラエルの昔話

スルタンというのは、イスラム王朝の君王の称号。11世紀のセルジューク朝に始まるとされています。

主人公は、物乞いから王さまにまで、上り詰めるんですね。昔話の極端性がよく出ています。極端に低い身分ですが、幸せになるといったら、極端に幸せになるのです。
臆病者の主人公が幸せになるきっかけは、たまたまハエを千匹打ち殺したからです。そのあと、つぎつぎと偶然が重なって行きます。まっとうな苦労を重ねているわけではありません。性格は臆病だし、ずるいし、お世辞にもりっぱな人とはいえません。
昔話ではそんな主人公がときどき出てきますね。
そんな話を聞いて、笑い、主人公の幸せな結末に満足できるのはなぜでしょう。きっと、自分の中に「はえ打ちの勇者」的なものが存在するからだと思います。そして、そのような生き方をも肯定するのが昔話なのです。
倫理的道徳的なお説教はひとまず置いて、男の様子をイメージして笑ってください。

ATU1640。話型名「勇敢な仕立て屋(ひと打ちで七匹)」
笑話です。
グリム童話には、KHM20「勇敢なちびの仕立屋」があります。


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食いほうだいに食ったねこ

くいほうだいにくったねこ

ノルウェーの昔話

累積譚(るいせきたん)です。

ATU2028「すべてを吞み込む動物が腹を切り開かれる」
すべてを呑み込む動物は、おおかみであったり、はつかねずみ、くま、ひよこ、しらみ、娘、トロル、巨人、かぼちゃなどで、伝承によって様々です。
アフリカの「フライラのひょうたん」(こちら⇒)は、ひょうたんが飲みこみます。

じつはこの話はとても古くて、〈呑みこみの神話〉ともいわれていて、北欧神話『エッダ』にもあるそうです(未見)。
オーストラリアの一部族や、世界じゅうに残っているようで、興味深いです。

累積譚の語りかたについては《昔話雑学》こちら⇒へどうぞ。


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危機一髪

ききいっぱつ

インドの昔話

インドの昔話を読んでいると、ヨーロッパや日本の昔話になれた目では、意外な展開におもしろさを感じます。
ストーリーの違いもさることながら、宗教や文化の違いからくる生き方というか哲学というか、そういうテーマ的なものも多彩だと感じます。
それでも、悪は滅びるとか、誠実であると報われるとか、基本は同じですが。

出典『インドの民話』の序論で、編者のラーマーヌジャンは、女性が主人公の物語は女性が語ることが多かったと書いています。
男性を助け、救い、元気を取り戻させ、男性のために謎を解いたりするのことが、女主人公の役割となります。この「危機一髪」もそんな話のひとつです。

カースト制や一夫多妻制の中で語られたことを理解したうえで、女性の強さを楽しみたいです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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アルジャおばあさんのめんどり

イタリアの昔話

弱い者が自分を脅かす強い者をやっつける話、たくさんありますね。
子どもは自分が弱い存在だと本能的に知っていますから、強い者から逃げたり、強い者をだましたり、やっつけたりする話を求めているんだと思います。

「アルジャおばあさんのめんどり」は動物昔話です。幼い子どもが喜ぶ話です。
知らない地名が出てきますが、音の響きのよさで語ればいいと思います。

ATU122「嘘の言い訳で獲物が逃げることができ、動物は獲物を失う」という話型です。
グリム童話の「キツネとがちょうたち」など、色んなバージョンがあっておもしろいです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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