むっつのしんり
ドイツの昔話
貧しくて極限状況になった主人公が、悪魔との契約で窮地から脱出するのですが、契約の期限が来て、今度は悪魔からどうやって逃げるかという問題にぶつかります。このような話は、たくさん残っています。
キリスト教の色合いの強い話なのですが、宗教と関係なくても人間生きていればそのようなことにぶつかります。人生を何とか切り開いていくにはどんな態度でいればよいのか、教えてくれるようです。
ATU812
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ドイツの昔話
悪魔というのは、本来、恐ろしい存在なのですが、なぜか人間にやっつけられる愚かな面があります。
そんな話が世界じゅうにあって、国際昔話話型カタログ(ATU)では、「愚かな鬼(巨人、悪魔)の話」として第1000番から200種類ほどあります。
こんな話を生み出す民衆の精神がとても健康で愛すべきだなあと感じます。
「ちょうむすび」は、人間が悪魔に、悪魔のできないことをやらせて、自分の魂を救う話型に属します。
類話には、悪魔に、おならや息をつかまえて結び目をつくらせたり、こぼしたブランデーで結び目を作らせたり、音をつかまえさせたりします。
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まだらのめうしよ、ふるふる
田んぼのお米を食べる鳥をつかまえたのですが、命を助けてやると、恩返しにまだらの雌牛をくれます。
この鳥は、主人公のおじいさんを助けてくれる援助者ですね。
鳥は、雌牛といっしょに言葉の贈り物もします。「まだらの雌牛よ、フルフルといってはいけませんよ」
ところが、おじいさんは、さっそくこの言葉を唱えます。そしてそのおかげで富を手に入れるのです。
昔話では、禁令は破られるという構造を持っていますが、あまりにもストレートなので、思わず笑ってしまいます。
ATU563「テーブルとロバとこん棒」。
よく知られているノルウェーの昔話「北風に会いに行った少年」と同じ話型ですが、主人公のおじいさんが、したたかなのに、のんびりした空気感があっておもしろいです。
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うたうふくろ
子どもが、悪者に袋に入れて連れて行かれる話は、ほかでも聞いたことがありますね。語りの森でも紹介しています。⇒紙のおうちのヤンネマン
ただ、袋の中で歌を歌わされる話は、そんなに多くないようです。
ところで、日本でも、ひと昔前には、「子取りに取られる」とか、「サーカスに売られる」とかいって、大人たちが、子どもを誘拐されないように恐がらせたものです。
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ぱんのかわ
若い悪魔が、貧しい人から、わずかなパンの皮を盗んで得意になっていたら、家に帰るとおじいさんから叱られます。
悪いことをするのが悪魔の仕事ですから、若い悪魔のやったことは、悪いこととは言えないというのでしょう。
では、何が本当に悪いことなのかと好奇心がわいてきますが、それはさておき、パンの皮とは極端に豪華なものをお返しにくれます。しかもまじめに一生懸命働いて。
おかしくて、ほっと心が温まるお話です。
ところで、悪魔の家って、どんな家なんでしょうね。
地獄のことかと思いましたが、ちょっとイメージが違うようです。
ATU810A「悪魔が罪ほろぼしをする」。
ちょっと珍しい話で、北欧から東欧にかけて語られているようです。
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やまのこびと
早春のアルプスの風景が見えるような冒頭です。
ところが、のどかな美しさの向こうに、恐ろしい所がかくれていたんですね。ふたりの娘が、そこへ行ってテストさせられます。
昔話のパターンにのっとって、先に出かけた娘は失敗。あとででかけた娘は、成功して、姉を助け、大金持ちになります。
こびとに試されるテストは、見てはいけない部屋のテストです。このモティーフはよく使われます。日本の昔話「みるなのくら」⇒こちらもそうですね。
こびとに「とんがり帽子のギアン・ピッチェン」と、名前がついているのは、もとは伝説だったということなのでしょうか。
ATU311「妹による救出」
世界じゅうに類話があるようです。
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心臓が体の中にないので、だれにも殺されることがないという敵役が、昔話には出て来ます。
では、ほんとうにやっつけられないかというと、自分の心臓がどこにあるのかという秘密を、つい話してしまって、身を滅ぼします。たいていは、妻に、話すのです。
この話の主人公は男性ですが、女性が心臓のありかを聞き出すシーンが見せ場です。
形としては、動物の恩返しの部分が前半、敵をやっつける部分が後半ですが、サラマルをやっつけるには、前半の動物の恩返しの部分が不可欠です。
それで、長い話になりますが、次にどうなるのかと展開に目が離せないので、時間を感じさせません。
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つきのひかり
ATU365「死んだ花婿が花嫁を連れ去る」という話型です。
レオノーレといって、古代の死者信仰に基づく伝説だそうです。フランスの類話「白いハンカチ」も見てください。⇒こちら
怖いですね。そして悲しい。
戦争が若者の想いを犠牲にしていく姿が、死者の行列から読み取れます。
主人公が死を選ばないでどこまでも生きて、新たな道を歩こうとする、そして幸せになるところに、希望を感じます。そこが「白いハンカチ」や『おはなしのろうそく19』の「金の髪」とは一味違う所です。
ぜひ語ってください。
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