ペトロシネッラ

イタリアの昔話

グリム童話の「ラプンツェル」やイタリアの「プレッツェモリーナ」の類話です。ATU310「塔の中の乙女」。その類話でも、『ペンタメローネ」の「ペトロシネッラ」は、記録された中ではいちばん古い形です。

前半のストーリーは、「ラプンツェル」と同じですが、後半は呪的逃走のモティーフですね。三枚のお札と同じです。

「プレッツェモリーナ」のページも併せて読んでください。こちら⇒

出典の『ペンタメローネ』について、ちょっと説明しておきますね。

『ペンタメローネ』

イタリアのジャンバッティスタ・バジーレ(1575~1632)によって集められた説話集(1634~1636年成立)。
枠物語(こちら⇒)で、10人が1日1話語った物語を50話集めてあるので、『五日物語』といわれています。
「長ぐつをはいた猫」「眠れる森の美女」「シンデレラ」なども収められていて、その古い形を知ることができます。
物語の舞台はナポリで、ナポリの風俗や習慣、信仰など、人びとの生活を、ナポリの方言で生き生きと表現されています。
バジーレは、小説家ですが、民俗学の先駆者とも考えられています。


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とらのまつ毛

朝鮮半島の昔話

虎のまつ毛をかざして見ると、人間の本性が分かる。

日本の昔話「狼の眉毛」とそっくりの話です。「狼の眉毛」は国内のあちこちで記録があるのですが、外国の話ではこの1話しか見つけられませんでした。それがふしぎで珍しいので紹介したいと思い、再話しました。

日本の場合、狼が呪宝をくれる呪宝譚のひとつです。
狼は、日本の伝承では神さま、もしくは神さまに近い存在です。こちら⇒《昔話雑学》。自然神ですね。
では、虎は?
朝鮮半島や中国では、虎はやはり神さまに近い存在です。
日本の話が朝鮮半島に渡って換骨奪胎されたのでしょうか。

日本の「狼の眉毛」では、狼の眉毛を手に入れた主人公は、眉毛を使って幸せになります。でも、朝鮮半島の「とらのまつ毛」では、まつ毛はたいして役に立っていませんね(笑)

そのうち、「狼の眉毛」も語れるように再話したいと思っています。


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勇敢な娘

ゆうかんなむすめ

オランダの昔話

題名の通り、とっても勇敢な娘の話です。
寂しいお城でひとりきりで留守番をするお手伝いの娘。そこへ盗賊団が忍び込もうとします。
娘が、とびらの下から潜り込もうとするどろぼうの首を、斧の一撃で切り落とすところは、ぎょっとします。けれども、血も流れないし、むしろ、どろぼうたちのあたふたぶりがユーモラスです。昔話の平面性が現れているところで、切り紙細工のように描かれます(⇒こちら)。

後半は、ロマンチックな展開かなと思いきや、恐ろしい屋敷に連れ込まれます。
頭に銀のふたの乗っている若者は、盗賊の一味というより、彼岸からの存在のように感じます。
この屋敷からの逃走譚は、日本の昔話「油取り」と同じです。でも、油取りの主人公とは異なり、娘は、あくまでも勇敢です。

スリルがあって、怖くて、笑える話です。
高学年にどうぞ。
ATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」


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旅の仲間

たびのなかま

ノルウェーの昔話

ノルウェーのペテル・クリスティン・アスビョルンセン(1812~1885年)は、大学生のころグリム童話を読んで昔話に興味を持ち、友だちのヨルゲン・モーといっしょに、ノルウェーに伝わる伝承を集めました。それは、『ノルウェーの民話』として出版されました。正60話と続50話、あわせて110話です。これは、グリム兄弟にもいい物だと評価されたそうです。

「旅の仲間」は、続編に入っています。これは、ジョージ・ダセントによって英訳されていて、ここから再話しました。

長い話ですが、ストーリーは一直線に進みます。そして、氷の柱に閉じこめられた死体や、一度座ったら離れないいすや、三人の魔女の持つ呪物(剣・金の糸玉・ぼうし)、トロル山に住むトロルなど、つぎつぎと現れるモティーフに、わくわくします。

ここに登場する入江は、氷河の作ったフィヨルドです。フィヨルドの風景を写真などで確かめると、金の橋の光景が目に浮かぶでしょう。

最後に、主人公がわが子を切ろうとする場面、旅の仲間が去ってゆく場面は、感動的です。

ATU507「怪物の花嫁」

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

音声(YouTube)が表示されない場合はこちら⇒


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金のとさかのおんどりとひき臼

きんのとさかのおんどりとひきうす

ロシアの昔話

小学2年生くらいまでの幼い子むきのおはなしです。

貧乏だけど善良なおじいさんとおばあさん。
木の実が芽を出して天までとどく。木を上って行ったら空に着いた。
空を歩いていると、金のとさかのおんどりがいて、ひき臼があったので持って帰る。ひき臼は、クレープとパイを出してくれる。
どこかで見たことのあるような、ファンタジックなモティーフが、軽快に続きます。

後半は、悪い旦那さんと金のとさかのおんどりの、ひき臼をめぐる闘いです。もちろん、おんどりが勝ちます。
「半分のにわとり」とよく似ていますね。類話です。でも、前後のモティーフが異なると、物語の雰囲気がずいぶん変わります。

このおんどりは、天にいて金のとさかを持つから、彼岸者です。

STU715A「すばらしいオンドリ」


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海の水はなぜからい

うみのみずはなぜからい

ノルウェーの昔話

ATU565「魔法のひき臼」

クリスマス・イヴのこと、貧しい弟が、金持ちの兄さんに食べ物を乞います。
いじわるな兄さんは、ベーコンをくれますが、「まっすぐ地獄へ行っちまえ」といいます。なんだかみじめで最低の状況です。
ところが、そのおかげで弟は地獄でまほうの引き臼を手に入れて、大金持ちになるのです。

この類話は世界中にあって、日本でも古くから語られています。
もともとは、北欧が発祥ではないかといわれています。

グリム童話では、KHM103「おいしいおかゆ」が類話です。
ずいぶん雰囲気が異なりますね。「おいしいおかゆ」では、地獄ではなく森の中。悪魔ではなく、おばあさん。やっぱり彼岸者ですが、援助者です。いじわる兄さんではなくお母さんです。お母さんにできないことを、小さな女の子がやってのけて、みんなをおかゆから救う。幼い子が満足できる話です。
「海の水はなぜからい」は、もう少し複雑な構造になっています。小学2年生くらいから楽しめるのではないでしょうか。クリスマス会や新年会にどうぞ。


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ゆびの五人兄弟

ゆびのごにんきょうだい

ルーマニアの昔話

幼い子向きのおはなし。

子どもには、自分の体への好奇心があります。それで、手遊び、指遊びがたくさん伝承されています。指の名前を覚えるのも楽しみます。
この話は、そんな指を登場人物にした、かわいい冒険物語です。
この指たちはとても小さな存在ですが、力を合わせて大きなくまをやっつけます。いかにも昔話ですね。
また、それぞれの指たちにそれぞれの個性があるのもおもしろいです。

語られたのはルーマニアなので、ヤシの実は珍しいと思います。珍しいから貴重だという見方もあるし、異国情緒もあるんだと思います。


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とうもろこしおばさん

アメリカ・インディアンの昔話

北米インディアンには、トウモロコシの起源に関する話がたくさんあります。部族によってさまざまなヴァリエーションがあるようです。再話したのは、クリーク族に伝わる話。独特の雰囲気を追ったこの話は、昔話というより、神話というところでしょうか。

もともと、トウモロコシは、原産地が北アメリカです。人びとにとって重要な穀類でした。だから、おばあさん(女神)の愛が現れた物と考えたのかもしれません。

日本では、『古事記』に、穀物の起源神話があります。逃げてきたスサノオにオオゲツヒメが、鼻や口から食べ物を出してきて食事を与えますます。怒ったスサノオはオオゲツヒメを殺します。すると、オオゲツヒメの頭からカイコが生まれ、目から稲、耳から粟、というふうに、体の部分部分から様々な穀類が生まれるのです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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地のはての井戸

ちのはてのいど

スコットランドの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」少女が継母からひどい仕打ちを受け、とてもつらい仕事をしなければならない。少女は彼岸者から幸をもらい、継母は実子にも同じことをさせるんだけど、不親切な実子は、不幸をもらう。というお話。

グリム童話KHM13「森の中の三人のこびと」、KHM24「ホレばあさん」(こちら⇒)、アメリカの昔話「ものをいう卵」(こちら⇒)などが類話です。
いろんな話型のエピソードと結びついているので、バリエーションが豊富です。

「地のはての井戸」には、ホレばあさんにあたる彼岸者は出て来ませんが、馬とウニに出会います。ウニが娘に幸せを与えてくれます。他の類話では、ウニではなくてしゃれこうべだったりします。

低学年から聞けると思います。


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七十持ちのじいさん

ななじゅうもちのじいさん

モンゴルの昔話

おろかな巨人の話。
主人公のおじいさんの名前がおもしろいですね。

巨人は、牛をよこすか、それともベーコンをよこすかと、脅かしているのですが、あまり恐くありません。おじいさんがのらりくらりと指図するのに、素直に従おうとしています。
おじいさんとの会話は鎖のようにつながって、累積譚(こちら⇒)のようです。モンゴルの言葉で語れば言葉遊びのような楽しさがあるのかなと思います。

中学年以上のおまけの話にどうぞ。


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