長い春のために

ながいはるのために

オランダの昔話

ATU1541「長い冬のために」という話型で、愚か者の話です。

キーワードの「長い春」は、「長い冬」だったり「非常時」「良い日」だったりします。

お人よしのおかみさんや困っているお百姓を上手くだまして、男はひどいやつですが、これがトリックスターの一面なのです。

日常生活でだれにでもある思い違いや失敗を笑い飛ばすのが愚か者の話。
語りあって笑い飛ばすことで、自分も他人も許すことができるし、共感が寛容を生みます。そのためのトリックスターであり、そのためにストーリーが極端になっているのです。


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お話をして命が助かる話

おはなしをしていのちがたすかるはなし

ウクライナの昔話

深い森のある国には、森の中に森女っていうのがいるんですね。妖精や山男やババ・ヤガーの仲間なんでしょうか。

森女は、どうしてお話がきらいなのでしょうね。

でも、パンの作り方や食べ方が、お話になるんですね。パンの一生っていうお話でしょうか。
そういえば、ずうっと昔、ストーリーテリングの本の中で、子どもたちに何時間でも電話帳を読んで楽しませるおじさんの語り手がいたって読んだことがある。そのときは理解できなかったけれど、今は少し分かるような気がします。
聞き手がいて語り手がいたら、何でもお話になるんです。


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愚か村の人たち

おろかむらのひとたち

フランスの昔話

世界じゅうにある愚か村話のひとつです。
愚か村話については《昔話雑学》をみてください。こちら⇒

この話の前半は、ATU1450「賢いエルゼ」という話型で、グリム童話にもあります。

後半は、ATU1384「夫が妻と同じくらいの愚か者を3人探す」という長い名前の話型(笑)。
夫が妻の愚かさに激怒して、家を出て行きます。「おまえみたいに愚かな者が3人いたら、もどって来るが、もし見つからなかったら、帰って来ない」と宣言して。そして、すぐに3人見つけるという話。
まあ、世の中ってそんな物なのかもしれませんね。
この後半は、枠物語になっています。こちら⇒
ここで3つの愚か話が語られます。そして、3つとも、どこにでもあるモティーフです。

ふと思ったのですが、落語がそうであるように、同じ話でも人は飽きずに笑うのですね。聞くたびに思い当たることがあって新鮮なんでしょうね。


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りこうなうさぎと勇敢なやぎ

りこうなうさぎとゆうかんなやぎ

ブラジルの昔話

うさぎとやぎのチームプレーがうまいですね。
りこうなうさぎに対して、やぎは、おくびょうな部分もあるし、りこうな部分もあるし、のんきな部分も持っています。うさぎがトリックスターだとすると、やぎは、凡人、ふつうの私たちのような性格ですね。でも、友情のおかげで、「勇敢なやぎ」に成長します。

ブラジルの昔話には、先住民族が伝えた話と、ヨーロッパから侵略してきた白人たちの持ってきた話と、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人たちが持ってきた話があります。
「りこうなうさぎと勇敢なやぎ」は、どれだと思いますか?
ブラジルにはいないライオンが登場していますね。そう、黒人が伝えた話です。


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ガムバール

アルメニアの昔話

この話の主人公は、貧しい若者ガムバールです。彼の人生を導くのは、かしこい妻(皇帝の娘)です。
ストーリーはガムバールの行動に沿って進みますが、ほんとうの主人公はかれの妻ではないかという気がします。

物語の真ん中で、ふしぎな井戸が現れます。けれどもそれを中心に物語が進むのではなく、ガムバールと妻の行動に焦点が当てられています。

これらのことから、この話は、とても小説的な雰囲気を持ちます。
それで、彼岸や彼岸の援助者が登場するけれども、まほうの話ではなく、人間たちの話に分類しました。

「たとえ十メーラくれるといっても不正直な仕事は断るんですよ」「愛する者こそが、常に美しく見える」「あなたたちも、自分の幸福は、待たねばなりません。」など、ところどころに、印象的な文言が出て来ます。

結末句もすばらしいです。


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かめと天のおまつり

かめとてんのおまつり

アメリカインディオ

南米の先住民に伝わる昔話。

動物たちが競争する話は世界じゅうにあります。動物競争譚といいます。

この話では、かめとハゲタカが、前半は、どちらが早く天に着くかで競争しますが、かめが天にのぼれるわけがありません。そこで、知恵を使います。日本の昔話「たにしとたぬき」のたにしと同じ知恵です。

後半は、どちらが早く地上に着くかの競争です。これはどう考えてもかめの勝ちですが、危険ですね。
岩とかめが言葉が通じるのがおもしろいです。
この部分は由来譚です。どうしてかめの甲羅にはヒビがあるかという由来譚も、世界じゅうにあります。


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かぜをひいたうさぎ

ミャンマーの昔話

ミャンマーは多民族国家です。
古くから、さまざまな民族が移動してきて、そのたびに戦いがありました。
かつて第2次大戦のおりには、日本軍も占領していました。『ビルマの竪琴』は有名ですね。
現在は、クーデターにより、軍事政権になっています。
為政者がころころ変わる中で、個人はどのように生き延びればいいのでしょう。
「かぜをひいたうさぎ」では、くまのように正直でも、さるのようにごまをすっても、生きられません。
うそをついて逃げるうさぎの生き方もアリだということでしょう。


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動物たちの恩返し

どうぶつたちのおんがえし

カビール(アルジェリア)の昔話

カビールは、アルジェリア山間部に住むベルベル人の一部族です。
地理的、歴史的にヨーロッパに近いので、ここで紹介した「動物たちの恩返し」などのように、ヨーロッパによく見られる昔話と同系のものが残っています。
とはいえ、登場する動物やアイテムなど、土俗的で農民的な雰囲気が感じられます。

題名のとおり「動物報恩」の話ですが、後半は「難題婿」の求婚者テストのモティーフで構成されています。
どちらのモティーフも、昔話ではおなじみのものですね。

道中で助けてやる動物の属性と、難題解決の手段が、ぴたりと一致しています。
状況の一致です。それが、物語をすっきりさせているし、奇跡を生んでいます。
聞いている子どもたちは、きっと、つぎは何(羽?はり?・・・)を使うかを楽しんで予想するでしょう。

主人公が「悪さばかりして手のつけられない若者」だというのは、愚か王子やのろまな末っ子と同じで極端な存在であり孤立性をあらわします。
人は、子どものとき、自分をこのように感じることはよくあるし、いっぽう、大人は、育てている子どもを見てこのように感じることもよくあります。
そんなはみだしっ子が、さまざまな経験を経て成長する姿が描かれている話です。


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おんどりが屋根の上で鳴くわけ

おんどりがやねのうえでなくわけ

朝鮮半島の昔話

日本の天人女房とそっくりの話です。
水浴びをしている天女の羽衣を盗んで、男は、天に帰れなくしてしまう。ところが、天女は羽衣を見つけて天に飛び去ります。
男は、天女を求めて天に上って行きます。
天上でさまざまな試練があって、男は天から落ちてしまうという話ですね。このさまざまの試練には、天の神さまの妨害とか難題とかがあります。
「おんどりが屋根の上で鳴くわけ」は「浦島太郎」のような形になっています。この結末の形も世界じゅうに分布しています。

ATU400「いなくなった妻を捜す夫」に分類されます。


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さかなと指輪

さかなとゆびわ

イギリスの昔話

イギリスはイングランドの昔話。

この話は、「運命の説話」に分類されるもので、話型名は「予言」(ATU930)。

グリム童話KHM29「三本の金髪を持った悪魔」では、冒頭で、貧しい男の子が王の娘と結婚すると予言されますが、この「指輪とさかな」は、男女が逆になっていて、男爵の息子が貧しい娘と結婚すると予言されます。
どちらも、川に流されて助けられ、親切な夫婦にたいせつに育てられます。
どちらにもウリアの手紙のモティーフ⇒こちらがあって興味深いです。

日本にも、運定めの話はたくさん伝わっています。⇒こちら。これもふしぎです。


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