ムズィカ

ウクライナの昔話

知恵が足りないと思われていても、音楽に秀でていて世の中の人を幸せにする主人公。
子どもの自然な欲求と才能を育てる大切さを思います。

まぶたに塗ると悪魔の正体が見えるというモティーフは、イギリスの昔話「妖精の塗りぐすり」にあります。
日本では狼のまゆ毛、韓国ではとらのまつ毛も同じように人間の正体を見抜くふしぎな力を持っています。

ムズィカが、おおかみにおそわれたときは、あきらめて死を受け入れようとしたのに、地獄では、悪魔たちを焼くような音楽を鳴らしてやろうと立ち向かいます。
自分の力を自覚して行動する青年に成長しています。

音楽が「悪い人の心をナイフもなしにひきさく」力を持つということばに感動しました。

ストーリーも複雑ではないし 、難解な語彙もありません。
小学生から大人まで、それぞれの年齢で感じることの多いお話です。


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コースチンの息子

こーすちんのむすこ

ウクライナの昔話

三人の息子の竜退治の話。

竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。

スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。

切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。

3年生くらいから楽しめると思います。


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誠実

せいじつ

ロシアの昔話

バルカル・カラチャエフは、ロシアの中でも南西にある小さな共和国です。

家に住む《幸せ》は、日本で言えば福の神のようなものでしょうか。または、東北地方の座敷童子のようなものかもしれません。

真っ白な雪の中に続くほのかな足跡。
明るいモノトーンの景色を背景にして、この一家の人間らしい暖かさがすばらしい。
ふだんあまりものをいわないおとなしい末っ子の妻の願いも素敵だけれど、それを聞いてすぐに反省して賛成する年寄りや家族たちもすてきです。


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イリヤ・ムーロメツの三つの旅

イリヤ・ムーロメツのみっつのたび

ロシアの昔話

分かれ道に道しるべがあって、選んだ道で運命が決まるというモティーフがあります。日本の「やまなしもぎ」も、三本の分かれ道に笹が立っていて「行けっちゃがさがさ」「行くなっちゃがさがさ」と鳴っているという場面がありますね。
昔話は、「言葉の出来事による繰り返し」という語法があって、言われたことは出来事で繰り返されます。だから、「右へ行けば殺される」と書いてあれば、その道を選ぶと必ず殺されるのです。
ところが、この話の主人公イリヤは、運命に挑戦するかのように道を進んで行きます。しかも、もどって来て、道しるべを書きかえてしまう。
読んでいて、語法を逆手にとる(笑)痛快さと、自分の道は自分で切り開く勇敢さに、気持ちが晴ればれしました。

これはロシアの話ですが、舞台となっているのは現ロシアではなく、ソビエトよりさらに前の古いロシアです。
その頃のロシアの都はキエフでした。キエフは今はウクライナの首都です。
ロシアもウクライナもひとつの文化圏として、勇士イリヤの話に心躍らせていたんですね。国境って、いったい何でしょう。


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おしりの金めっき

おしりのきんめっき

スイスの昔話

昔話の主人公には、けなげで誠実な子どももいるし、この話のようないたずらっ子もいます。
それは、この世の中の人間模様そのものです。
また同時に、ひとりの人間の中にあるさまざまな面を投影しているともいえると思います。
昔話を語るとき、一面だけの人間像だけ選ぶのは、もったいないと思います。
笑い話の中に秘められた少年の生きるたくましさに拍手を送りたいです。

それにしても、最初にアドヴァイスをしたおじさんは、いったいだれなんでしょうね。


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ペドロのふしぎな話

ぺどろのふしぎなはなし

ベネズエラの昔話

不思議な雰囲気を持つ話です。
まず盗賊を追いかけている男がいったい何者なのかという疑問が、暗闇の中に浮かび上がります。

川を越えると、そこは知らない土地。
水が異界との境界になっている話はよくあります。
「かしこいモリー」の髪の毛一本橋。橋だから、川をわたるんですね。
「浦島太郎」の、海の向こうにある異郷の地。
グリム童話の「踊ってぼろぼろになった靴」では、地下に湖があって、それを越えてお城に着きます。
などなど。
三途の川もそうですね。

ペドロはあちらの世界で結婚し、孫も生まれ、年老いて、やっと故郷に帰ってきます。すると、ふるさとの家では、たったひと晩しかたっていないのです。
「浦島太郎」の逆バージョンです。たった3日だと思っていたのが300年たっていたというのが浦島太郎ですね。
時間の経過の点では、《日本の昔話》で紹介した「さかべっとうの浄土」こちら⇒と同じですね。でも、「さかべっとうの浄土」の主人公は、異界から帰ってきたとき、出て行った時と同じ年齢です。ところが、ペドロは異界での年数分だけ年を取って帰ってきます。

異界についての人間の想像力を面白いなあと感じます。


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サン・ベルリコカンの温泉へ

サン・ベルリコカンのおんせんへ

フランスの昔話

風邪をひくと大変なのは、動物たちも同じです(笑)
みんなで、温泉の水を飲みに出かけます。

ATU130「動物たちの夜の宿」
グリム童話「ブレーメンの音楽隊」と同じ話型です。
「ブレーメンの音楽隊」も楽しい話ですが、年を取って飼い主に殺されるのを逃れて新天地ブレーメンに旅立つのと比べて、こちらは温泉旅行と、ずいぶん気楽ですね。それに、ちゃんと温泉の水を飲んで風邪を治して家に帰ります。

低学年でも聞けると思います。
ブレーメンの音楽隊との違いを指摘してくれるかもしれませんね。


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ひと口ぶんにはひと口ぶん

ひとくちぶんにはひとくちぶん

アラビアの昔話

アラビア半島は、『アラビアンナイト』でおなじみですね。壮大なファンタジーの伝わる地域です。
アラビアンナイトだけでなく、さまざまな昔話が語られて文献に残って来たそうです。これは、その中の一冊からの再話です。

物乞いが恩返しをするんだけれど、この物乞いはただの人間ではありません。
ふしぎななかにも心があたたかくなる話です。


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金の杯

きんのさかずき

ジョージアの昔話

ジョージア(グルジア)共和国で採録された話。

ATU467「すばらしい花(宝石)の探索」。
この話型の類話はあまり多くはないようです。

長い話ですね。
でも、呪物や彼岸者が次々に出て来て、魔法が満載で、飽きさせません。

そして、ストーリーを貫いているのは、ふたりの盗賊との友情です。
期限までに帰らなければ人質が処刑されるというのは、太宰治『走れメロス』を思い出させます。じつは、太宰は、古代ギリシャの伝承とシラーの詩をもとにメロスを書きました。つまり、この友情ストーリーは、さかのぼれば紀元前4世紀ごろからあって、その流れは今に続いているということです。
友情や誠実さというものは、常に人の心を打つもののようです。

ぜひ、高学年の子どもたちに語ってください。


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みち

インドの昔話

へびが人に死をあたえるために、さまざまなたくらみを凝らします。
ちょっと暗鬱な思いになりますが、これも人の世の真実です。

人びとはこのような物語を語り聞くことによって、客観的な目で人生を見つめ合ったのだと思います。
ふつうなら内省的なことがらを語りの場で他の人たちと共有できたのでしょう。

原題は「死神」です。

中高生から。


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