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かぜをひいたうさぎ

ミャンマーの昔話

ミャンマーは多民族国家です。
古くから、さまざまな民族が移動してきて、そのたびに戦いがありました。
かつて第2次大戦のおりには、日本軍も占領していました。『ビルマの竪琴』は有名ですね。
現在は、クーデターにより、軍事政権になっています。
為政者がころころ変わる中で、個人はどのように生き延びればいいのでしょう。
「かぜをひいたうさぎ」では、くまのように正直でも、さるのようにごまをすっても、生きられません。
うそをついて逃げるうさぎの生き方もアリだということでしょう。


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動物たちの恩返し

どうぶつたちのおんがえし

カビール(アルジェリア)の昔話

カビールは、アルジェリア山間部に住むベルベル人の一部族です。
地理的、歴史的にヨーロッパに近いので、ここで紹介した「動物たちの恩返し」などのように、ヨーロッパによく見られる昔話と同系のものが残っています。
とはいえ、登場する動物やアイテムなど、土俗的で農民的な雰囲気が感じられます。

題名のとおり「動物報恩」の話ですが、後半は「難題婿」の求婚者テストのモティーフで構成されています。
どちらのモティーフも、昔話ではおなじみのものですね。

道中で助けてやる動物の属性と、難題解決の手段が、ぴたりと一致しています。
状況の一致です。それが、物語をすっきりさせているし、奇跡を生んでいます。
聞いている子どもたちは、きっと、つぎは何(羽?はり?・・・)を使うかを楽しんで予想するでしょう。

主人公が「悪さばかりして手のつけられない若者」だというのは、愚か王子やのろまな末っ子と同じで極端な存在であり孤立性をあらわします。
人は、子どものとき、自分をこのように感じることはよくあるし、いっぽう、大人は、育てている子どもを見てこのように感じることもよくあります。
そんなはみだしっ子が、さまざまな経験を経て成長する姿が描かれている話です。


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おんどりが屋根の上で鳴くわけ

おんどりがやねのうえでなくわけ

朝鮮半島の昔話

日本の天人女房とそっくりの話です。
水浴びをしている天女の羽衣を盗んで、男は、天に帰れなくしてしまう。ところが、天女は羽衣を見つけて天に飛び去ります。
男は、天女を求めて天に上って行きます。
天上でさまざまな試練があって、男は天から落ちてしまうという話ですね。このさまざまの試練には、天の神さまの妨害とか難題とかがあります。
「おんどりが屋根の上で鳴くわけ」は「浦島太郎」のような形になっています。この結末の形も世界じゅうに分布しています。

ATU400「いなくなった妻を捜す夫」に分類されます。


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さかなと指輪

さかなとゆびわ

イギリスの昔話

イギリスはイングランドの昔話。

この話は、「運命の説話」に分類されるもので、話型名は「予言」(ATU930)。

グリム童話KHM29「三本の金髪を持った悪魔」では、冒頭で、貧しい男の子が王の娘と結婚すると予言されますが、この「指輪とさかな」は、男女が逆になっていて、男爵の息子が貧しい娘と結婚すると予言されます。
どちらも、川に流されて助けられ、親切な夫婦にたいせつに育てられます。
どちらにもウリアの手紙のモティーフ⇒こちらがあって興味深いです。

日本にも、運定めの話はたくさん伝わっています。⇒こちら。これもふしぎです。


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コックのペレ

スウェーデンの昔話

ATU505「恩に報いる死者」
「死人の恩返し」の話です。この話型の典型的なものが、ノルウェーの「旅の仲間」です。⇒こちら

「恩に報いる死者」の導入部は、紀元前2世紀に、聖書外典の「トビト記」に記録されているから、とっても古い話だと分かります。
そんなに古くから今に伝えられてきた昔話には、深いメッセージがあります。
マックスリュティは、それを、「救済」だと説明しています。⇒こちら
この話型がわたしたちの心を打つのは、それなりの理由があるのです。


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ランプのしんつくり

シベリアの昔話

魔法使いは出てこないのですが、すごいファンタジーです。
シベリアの厳しい自然のなかで、エネルギッシュに生き抜いていく主人公が魅力的です。

解説に、この話を語りついだシベリアの先住民ボゲール族には、人間は三つの部分から成り立っているという信仰があると書かれています。肉体と、たましいと、影のたましいです。

そして、人間と他の生きものは、たがいに行き来できるので、がちょうたちや木のかぎやらも三つの部分からできていて、影の魂を持っているのです。

人類が文明化されない古い時代の死生観や自然観が感じられる話です。


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音声(YouTube)が表示されない場合はこちら⇒



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村のおばあさん

むらのおばあさん

インドの昔話

インドの北西部にあるグジャラート州に伝わるはなし。
グジャラート州は、マハトマ・ガンジーの生地です。
さまざまな民族の往来する地域なので、宗教も複雑ですが、この話は、いい意味での宗教的な色合いが強く感じられます。と同時に、為政者はどうあるべきかを訴えています。

高学年のおまけの話にどうぞ。


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かますのいいつけ

ロシアの昔話

三人兄弟の末っ子が主人公。この話の末っ子は、愚かなだけでなくて、怠け者です。
ATU675「怠け者の少年」
怠け者で愚かな少年が、魚、かえる、へびなどを逃がしてやって、そのお礼に、願いが何でもかなう力を授けてもらう話。

「かますのいいつけ わたしの望み」という唱え言葉が印象的です。

ヨーロッパの昔話の定番通り、命の危険に遭遇しますが、お姫さまと結婚してめでたしめでたしで終わります。
主人公の性格と周りの(力のある)大人たちの反応が、ユーモラスです。

子どもは、どうにもならないほど怠ける時期がありますが、いつかは「絵にも描けないような美しい」人格を手に入れるものです。
昔話は、子どもを励ますだけでなく、大人に子育ての極意を教えてもくれます。


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あたしはあたし

フランスの昔話

ちょっと怖い話。

ラミナは、フランスのバスク地方の妖精です。ほかにもいろいろな昔話や伝説に登場します。
人の魂を奪う恐ろしい存在なのですが、案外まぬけで、失敗しては悔しがるそうです。
家から追い出すとその家が没落することもあります。遠野の座敷童子のようですね。
毛むくじゃらの背の低い、人間の姿をした妖精と言われています。

夏のお楽しみ会や怖い話のお話会でどうぞ。


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ひとりでに鳴るグースリ

ひとりでになるグースリ

ロシアの昔話

ATU850「姫のあざ」という話型。姫のあざの特徴を述べることができる人と姫が結婚することが約束される話。

この話は、約束のモティーフがふたつ出て来ます。
ひとつめは、額につののある白髪の老人との約束。
「グースリをやる代わりに、家の中で一番大切なものをよこせ」
家に帰ると、それは父親のことでした。この約束は、主人公に不幸をもたらします。が、じつは、それを契機にして、主人公は自分の人生を自分の足で歩き始めます。
ふたつめは、話型名にもなっている王さまのおふれです。
「姫の目じるしを言い当てた者と姫を結婚させる」
主人公は、つののある老人からもらったグースリを上手く使って、つまり自らの知恵で、お姫さまを手に入れるのです。

前半に登場する、かぶどろぼうの小さな男の子が、なんだかかわいいですね。後半のお姫さまも子ぶたも、かわいい。

短いけれど、子どもの自立を凝縮して描いていて、とってもいい話です。
2年生くらいから聞けると思います。

グースリは、弦楽器で、指で引いて演奏します。時代によって、弦の数や楽器の形は様々だそうです。


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