「不思議な話」カテゴリーアーカイブ

スウォハムの行商人

スウォハムのぎょうしょうにん

イギリスの昔話

「ノーフォーク州スウォハム」と、地名が明記されていますから、その土地の「伝説」のようです。
けれども、まったく同じ話がヨーロッパ各地に伝わっており、さらにさかのぼると中近東に起源を持つとなれば、これは、土地から離れた、より普遍的な「昔話」と考えたほうがよいでしょう。

ATU1645「宝は自分の家にあり」。
マケドニアの「福の神はくさったさくらんぼの中に」と同じ話型です。⇒こちら
日本の「みそ買い橋」は、「スウォハムの行商人」が日本語に翻訳されてそれをもとに日本の話として語り直されたものです。⇒こちら
この3話、くらべてみてくださいね。

「伝説」と「昔話」の違いについては、《昔話雑学》をご覧ください。⇒こちら


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死者の国へ行った男

ししゃのくにへいったおとこ

ニカラグアの昔話

インディアンに伝わるふしぎな昔話。

あの世は湖の向こうにあります。日本では三途の川を渡りますが、同じように水がかかわっています。

この世に帰ってきたら長い年月がたっていたというのは「浦島太郎」と同じです。「ペドロのふしぎな話」⇒こちらや「さかべっとうの浄土」⇒こちらはその逆で時間がたっていません。
どちらにせよ、あちらの世界とこちらの世界は時間の流れ方が異なるのです。
そういえば、「ペドロのふしぎな話」も「さかべっとうの浄土」も水が境界に介在します。

高学年向き。


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王さまの病気

おうさまのびょうき

マルタの昔話

大笑いしながら心が温まる話ですね。
この魔法、偶然といってしまえばそれまでですが、主人公のまっすぐな思いが生んだ奇跡だと感じます。

地中海のマルタ島は、日本の屋久島の半分くらいの面積の島です。そんな小さな島に伝わる小さなほほえましい昔話です。


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お話をして命が助かる話

おはなしをしていのちがたすかるはなし

ウクライナの昔話

深い森のある国には、森の中に森女っていうのがいるんですね。妖精や山男やババ・ヤガーの仲間なんでしょうか。

森女は、どうしてお話がきらいなのでしょうね。

でも、パンの作り方や食べ方が、お話になるんですね。パンの一生っていうお話でしょうか。
そういえば、ずうっと昔、ストーリーテリングの本の中で、子どもたちに何時間でも電話帳を読んで楽しませるおじさんの語り手がいたって読んだことがある。そのときは理解できなかったけれど、今は少し分かるような気がします。
聞き手がいて語り手がいたら、何でもお話になるんです。


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村のおばあさん

むらのおばあさん

インドの昔話

インドの北西部にあるグジャラート州に伝わるはなし。
グジャラート州は、マハトマ・ガンジーの生地です。
さまざまな民族の往来する地域なので、宗教も複雑ですが、この話は、いい意味での宗教的な色合いが強く感じられます。と同時に、為政者はどうあるべきかを訴えています。

高学年のおまけの話にどうぞ。


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ペドロのふしぎな話

ぺどろのふしぎなはなし

ベネズエラの昔話

不思議な雰囲気を持つ話です。
まず盗賊を追いかけている男がいったい何者なのかという疑問が、暗闇の中に浮かび上がります。

川を越えると、そこは知らない土地。
水が異界との境界になっている話はよくあります。
「かしこいモリー」の髪の毛一本橋。橋だから、川をわたるんですね。
「浦島太郎」の、海の向こうにある異郷の地。
グリム童話の「踊ってぼろぼろになった靴」では、地下に湖があって、それを越えてお城に着きます。
などなど。
三途の川もそうですね。

ペドロはあちらの世界で結婚し、孫も生まれ、年老いて、やっと故郷に帰ってきます。すると、ふるさとの家では、たったひと晩しかたっていないのです。
「浦島太郎」の逆バージョンです。たった3日だと思っていたのが300年たっていたというのが浦島太郎ですね。
時間の経過の点では、《日本の昔話》で紹介した「さかべっとうの浄土」こちら⇒と同じですね。でも、「さかべっとうの浄土」の主人公は、異界から帰ってきたとき、出て行った時と同じ年齢です。ところが、ペドロは異界での年数分だけ年を取って帰ってきます。

異界についての人間の想像力を面白いなあと感じます。


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ひと口ぶんにはひと口ぶん

ひとくちぶんにはひとくちぶん

アラビアの昔話

アラビア半島は、『アラビアンナイト』でおなじみですね。壮大なファンタジーの伝わる地域です。
アラビアンナイトだけでなく、さまざまな昔話が語られて文献に残って来たそうです。これは、その中の一冊からの再話です。

物乞いが恩返しをするんだけれど、この物乞いはただの人間ではありません。
ふしぎななかにも心があたたかくなる話です。


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みち

インドの昔話

へびが人に死をあたえるために、さまざまなたくらみを凝らします。
ちょっと暗鬱な思いになりますが、これも人の世の真実です。

人びとはこのような物語を語り聞くことによって、客観的な目で人生を見つめ合ったのだと思います。
ふつうなら内省的なことがらを語りの場で他の人たちと共有できたのでしょう。

原題は「死神」です。

中高生から。


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くるぞくるぞ

アルメニアの昔話

この話は、ある地方の伝説です。
同じような伝説や昔話が世界じゅうにあるようです。

崖や川べりなど、人里に近い自然の中から、気味の悪い声が聞こえて来て、だれも近づかなくなる。
あるとき、勇気のある者が出かけて、その声に応えると、声の主が現れる。
その正体は金貨や宝物だった、という話。

だれにも使われなかった隠されたお金は、化けるのです。
経済活動の必要を説いているのでしょうか。
また、自然界に宝を見つけよということでしょうか。

ATU326「怖さとは何か知りたがった若者」の類話です。
『日本昔話通観』では、IT106「危ない危ない」に分類されています。


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かめ女房

かめにょうぼう

ギリシアの昔話

漁師の若者が亀を連れて帰ると、留守の間に家のそうじや炊事がばっちりてきている。かくれて見ていたら、亀の中から美しい娘が出て来た。
このシチュエーション、亀を魚や狐に取りかえても、成り立ちますね。しかも、日本でもヨーロッパでもよくあるシチュエーションです。
妻が異類の、異類婚姻譚です。

ただし、日本の異類女房のように結末は離別ではありません。むしろ、後半は絵姿女房にそっくりです。
王さまが、妻を手に入れようとして無理難題を出します。けれども、妻は亀の化身で、海の女神である母と弟の豆ちゃんが力を貸して解決してくれます。
この豆ちゃん、かわいいでしょう?かわいくて、子どもに聞かせたくて再話しました。
全体に地中海の明るさを感じます。


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