「動物の話」カテゴリーアーカイブ

さるとわに

インドの昔話

『子どもと家庭のための奈良の民話二』所収の「さるの肝」とよく似ています。
奈良の話では、さるの肝を欲しがるのは、竜宮のおと姫さまですが、インドの「さるとわに」では、わにの奥さんが、嫉妬のあまりさるの心臓を食べたいというのです。
妻のせいで親友をなくしてしまうわに。なんだか悲しい話ですが、そんなことってあるよなあと思わせます。

ATU91「猿の心臓は薬」。
類話は世界中にありますが、古代インドの『ジャータカ』や『パンチャタントラ』にも記録があるので、インド発祥ではないかと思われます。

日本では、「くらげの骨なし」という話型で広く語られています。

フトモモの実は夏に黄色く熟し、直径4cmほど。味は薄いがバラのような芳香があるそうです。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りが聞けます。


⇒動物たちの話一覧へ

くまとしまりす

ロシアの昔話

かわいらしいお話です。
なぜなに話なので、もともと幼い子に語られたものでしょう。

ロシアのなかでも北東部、シベリアで語られているおはなしです。
厳しい冬を超えてお日さまが顔を出す頃の季節感にあふれています。

シマリスは、シベリアでは日常的にみられる野生動物です。

春先のおはなし会でどうぞ。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りが聞けます。


⇒動物たちの話一覧へ

動物たちの冬ごもり

どうぶつたちのふゆごもり

ロシアの昔話

協力して作業をしようというときに、怠け心のせいで断り、その成果だけを手に入れようというわがまま者の話はよくあります。それがこの話の前半です。
そして後半では、そんなわがまま者たちが、危機に瀕しては一転して協力して、悪者を追いはらいます。

幼い子が喜ぶ話です。
「冬を避けて夏を探しに行くんです」のくりかえしがリズミカルで印象的です。

ATU130「動物たちの夜の宿(ブレーメンの町音楽師)」と130A「動物たちが家を建てる」が合体しています。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りが聞けます。


⇒動物たちの話一覧へ

りこうなうさぎと勇敢なやぎ

りこうなうさぎとゆうかんなやぎ

ブラジルの昔話

うさぎとやぎのチームプレーがうまいですね。
りこうなうさぎに対して、やぎは、おくびょうな部分もあるし、りこうな部分もあるし、のんきな部分も持っています。うさぎがトリックスターだとすると、やぎは、凡人、ふつうの私たちのような性格ですね。でも、友情のおかげで、「勇敢なやぎ」に成長します。

ブラジルの昔話には、先住民族が伝えた話と、ヨーロッパから侵略してきた白人たちの持ってきた話と、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人たちが持ってきた話があります。
「りこうなうさぎと勇敢なやぎ」は、どれだと思いますか?
ブラジルにはいないライオンが登場していますね。そう、黒人が伝えた話です。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りが聞けます。

⇒動物たちの話一覧へ

かめと天のおまつり

かめとてんのおまつり

アメリカインディオ

南米の先住民に伝わる昔話。

動物たちが競争する話は世界じゅうにあります。動物競争譚といいます。

この話では、かめとハゲタカが、前半は、どちらが早く天に着くかで競争しますが、かめが天にのぼれるわけがありません。そこで、知恵を使います。日本の昔話「たにしとたぬき」のたにしと同じ知恵です。

後半は、どちらが早く地上に着くかの競争です。これはどう考えてもかめの勝ちですが、危険ですね。
岩とかめが言葉が通じるのがおもしろいです。
この部分は由来譚です。どうしてかめの甲羅にはヒビがあるかという由来譚も、世界じゅうにあります。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りが聞けます。


⇒動物たちの話一覧へ

かぜをひいたうさぎ

ミャンマーの昔話

ミャンマーは多民族国家です。
古くから、さまざまな民族が移動してきて、そのたびに戦いがありました。
かつて第2次大戦のおりには、日本軍も占領していました。『ビルマの竪琴』は有名ですね。
現在は、クーデターにより、軍事政権になっています。
為政者がころころ変わる中で、個人はどのように生き延びればいいのでしょう。
「かぜをひいたうさぎ」では、くまのように正直でも、さるのようにごまをすっても、生きられません。
うそをついて逃げるうさぎの生き方もアリだということでしょう。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。


⇒動物たちの話一覧へ

おおかみと犬

おおかみといぬ

ウクライナの昔話

ATU101「老犬が子ども(羊)の救出者になる」とATU100「オオカミが歌って捕まる」が組み合わさっています。

ATU101では、おおかみが、犬を助けた見返りにお百姓の羊を盗む手助けをしてくれといいますが、犬は断り、おおかみの友情を失って終わります。
けれども、ウクライナのこの話では、犬は、羊の代わりに宴会のごちそうをおおかみに提供して、ATU100につながります。おかげで二匹の友情は続きますが、結局、まぬけなおおかみが自滅します。犬が歌うなと止めるのに、おおかみは歌ってさんざんなぐられるのです。うまく二つの話型をつなげていますね。
この話は、イソップ寓話にもあります。

福音館書店から絵本が出ています。
『セルコ』内田莉莎子文/ワレンチン・ゴルディチューク絵
ラストがちょっと違うんですけどね。

グリム童話のKHM「老犬ズルタン」は、家畜と野獣の違いがはっきりしています。ズルタンの番犬としての立ち位置が、対人間のきびしさを感じさせます。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。


⇒ 動物たちの話一覧へ

サン・ベルリコカンの温泉へ

サン・ベルリコカンのおんせんへ

フランスの昔話

風邪をひくと大変なのは、動物たちも同じです(笑)
みんなで、温泉の水を飲みに出かけます。

ATU130「動物たちの夜の宿」
グリム童話「ブレーメンの音楽隊」と同じ話型です。
「ブレーメンの音楽隊」も楽しい話ですが、年を取って飼い主に殺されるのを逃れて新天地ブレーメンに旅立つのと比べて、こちらは温泉旅行と、ずいぶん気楽ですね。それに、ちゃんと温泉の水を飲んで風邪を治して家に帰ります。

低学年でも聞けると思います。
ブレーメンの音楽隊との違いを指摘してくれるかもしれませんね。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。


⇒ 動物たちの話一覧へ

動物が話をしていたころ

どうぶつがはなしをしていたころ

フランスの昔話

「動物が話をしていたころ」というのは、この話の発端句(こちら⇒昔話雑学)で、発端句が題名になっています。おもしろいですね。

ATU175「タール人形と穴ウサギ」という話型です。
いたずら者のウサギをつかまえるために、タールをぬり付けた人形を畑に置いておいて、ウサギが人形をなぐったりけ飛ばしたりするたびに、タールのせいで人形にくっ付きます。身動きできなくなってウサギはつかまります。

アメリカのジョエル・チャンドラー・ハリスの『リーマスじいやの物語』で有名です。調べてみるとヨーロッパも含め世界じゅうに類話がありました。「動物が話をしていたころ」はフランスの昔話です。

アメリカの黒人の間で語り継がれてひろがったので、元はアフリカ起源かといわれています。最近の研究では、インドから広がったのだという説もあります、なんにせよ、おもしろい話は世界をめぐりますね。

かしこいかめは、ここでは、トリックスターの役割をしています。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。



⇒ 動物たちの話一覧へ

うさぎとライオン

タゲスタンの昔話

タゲスタンはカスピ海の西、カフカス山地の東、ロシアの一部です。
小さな者が強い者に知恵を使って勝つ話はどこにでもあるのですね。

みんなが、ライオンに食べられても仕方がないと思っているのに、うさぎだけは自分から食べられに行くなんてまっぴらだと考えます。この生き方に共感して再話しました。
このうさぎはトリックスター(こちら⇒)として登場しています。


下のボタンからテキストをダウンロードできます。

語りを聞けます。



<<<動物たちの話一覧へ<<<