「女の子の成長の話」カテゴリーアーカイブ

ばらの花とけもの

ばらのはなとけもの

オーストリアの昔話

ATU425C「美女と野獣」典型的な「美女と野獣」の昔話です。
ATU425というのは、「いなくなった夫捜し」という話型名のグループです。でも、この「美女と野獣」は、夫をさがすというモティーフはありません。

「美女と野獣」については、マックス・リュティ『昔話の解釈』から、井戸端会議に報告しているので読んでください。こちら⇒

夫が野獣や大蛇など、異類であることから、異類婚姻譚と考えられますが、日本の「猿婿」「蛇婿」とは、ずいぶん異なりますね。
日本の場合、夫は、あくまでも猿やへびであって、自然界のほんものの動物です。呪いをかけられた人間ではなく、最後は殺される運命です。日本のけもの婿の話で、ハッピーエンドなのは、「たにし息子」くらいでしょうか。


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語りを聞けます

ペトロシネッラ

イタリアの昔話

グリム童話の「ラプンツェル」やイタリアの「プレッツェモリーナ」の類話です。ATU310「塔の中の乙女」。その類話でも、『ペンタメローネ」の「ペトロシネッラ」は、記録された中ではいちばん古い形です。

前半のストーリーは、「ラプンツェル」と同じですが、後半は呪的逃走のモティーフですね。三枚のお札と同じです。

「プレッツェモリーナ」のページも併せて読んでください。こちら⇒

出典の『ペンタメローネ』について、ちょっと説明しておきますね。

『ペンタメローネ』

イタリアのジャンバッティスタ・バジーレ(1575~1632)によって集められた説話集(1634~1636年成立)。
枠物語(こちら⇒)で、10人が1日1話語った物語を50話集めてあるので、『五日物語』といわれています。
「長ぐつをはいた猫」「眠れる森の美女」「シンデレラ」なども収められていて、その古い形を知ることができます。
物語の舞台はナポリで、ナポリの風俗や習慣、信仰など、人びとの生活を、ナポリの方言で生き生きと表現されています。
バジーレは、小説家ですが、民俗学の先駆者とも考えられています。


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語りが聞けます。

勇敢な娘

オランダの昔話

ゆうかんなむすめ

題名の通り、とっても勇敢な娘の話です。寂しいお城でひとりきりで留守番をするお手伝いの娘。そこへ盗賊団が忍び込もうとします。
娘が、とびらの下から潜り込もうとするどろぼうの首を、斧の一撃で切り落とすところは、ぎょっとします。けれども、血も流れないし、むしろ、どろぼうたちのあたふたぶりがユーモラスです。昔話の平面性が現れているところで、切り紙細工のように描かれます。

後半は、ロマンチックな展開かなと思いきや、恐ろしい屋敷に連れ込まれます。頭に銀のふたの乗っている若者は、盗賊の一味というより、彼岸からの存在のように感じます。
この屋敷からの逃走譚は、日本の昔話「油取り」と同じです。でも、油取りの主人公とは異なり、娘は、あくまでも勇敢です。

スリルがあって、怖くて、笑える話です。
高学年にどうぞ。
ATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」


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地のはての井戸

ちのはてのいど

スコットランドの昔話

ATU480「親切な少女と不親切な少女」少女が継母からひどい仕打ちを受け、とてもつらい仕事をしなければならない。少女は彼岸者から幸をもらい、継母は実子にも同じことをさせるんだけど、不親切な実子は、不幸をもらう。というお話。

グリム童話KHM13「森の中の三人のこびと」、KHM24「ホレばあさん」(こちら⇒)、アメリカの昔話「ものをいう卵」(こちら⇒)などが類話です。
いろんな話型のエピソードと結びついているので、バリエーションが豊富です。

「地のはての井戸」には、ホレばあさんにあたる彼岸者は出て来ませんが、馬とウニに出会います。ウニが娘に幸せを与えてくれます。他の類話では、ウニではなくてしゃれこうべだったりします。

低学年から聞けると思います。


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プレッツェモリーナ

イタリアの昔話

イタリア語でプレッツェモロというのは、パセリのこと。だから、プレッツェモリーナは、パセリちゃん。

3年生くらいからがきっと楽しめるだろうと思います。

グリム童話の「ラプンツェル」の類話です。「ラプンツェル」は創作の物語がもとになっていますが、「プレッツェモリーナ」は口承で、イタリアのカルヴィーノが集めた昔話集の中のひとつです。
同じ類話でもずいぶん雰囲気が違います。じつは、グリム「ラプンツェル」以外は、どの類話も、概して明るくちょっと滑稽(こっけい)です。このことについては、マックス・リュティの説明があり、《井戸端会議》でとりあげているので、見てください(こちら⇒

ATU310、話型名「塔の中の乙女」
ヨーロッパを中心にアジア・アフリカに分布しています。
もっとも古い記録は、イタリアのバジーレの集めた昔話集『ペンタメローネ』(1634-36)です。大修館書店から翻訳が出ているので、ぜひ読んでみてください。「ペトロシネッラ」という題名です。
ペトロシネッラは、プレッツェモリーナの古語だそうです。そう、パセリちゃんね。イタリア語の分かる人は、こちらの動画もどうぞ。 (こちら⇒

もともとこの話型は、後半が呪的逃走です。
主人公と王子が、後ろに三つのどんぐりを投げて魔女から逃げます。


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ババ・ヤガー

ロシアの昔話

はい、私たちのサークル名です ( 笑 ) ババ・ヤガーはふしぎな魔力を持っていて、その力で人を助けることもあるし、人を害することもあります。二面性を持っています。日本のやまんばも 同じですね。この話では、ひたすら恐ろしい魔女です。
小屋の中で機織りをしていますね。糸紡ぎをしていることもあります。機織りも糸紡ぎも、本来女神の仕事です。こういうところに、キリスト教以前の神のなごりが見えるのかなあと思ったりします。
それから、日本のやまんば(こちら⇒)は、追いかけるのが好き。「 三枚のお札 」 も 「 馬方やまんば 」 も、めちゃ走りますね。ここのババ・ヤガーも走ります。

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ジャルジューフ

イエメンの昔話

アラビア半島イエメンに伝わる昔話です。主人公が「アラーの神さま」といっていることからわかるように、イスラム教が信仰されています。

ジャルジューフというのは、本文にあるように、荒野の精霊です。
精霊は、イスラム教が伝わる以前から信仰されてきた自然宗教の超自然的な存在のこと。本来は悪ではありません。ここでは対イスラムだから妖怪としてあつかわれているのです。日本で山の神が山姥に、川の上がかっぱになったのと似ています。

ジャルジューフが、人食いでありつつ、主人公や息子を愛する姿を見ると、あわれをさそいます。文明の対立もしくは宗教の対立が表れているのでしょうか。

ジャルジューフが死ぬところで、「もう一太刀切ってくれ」「踏んづけてくれ」「つばをはきかけてくれ」といいますが、アリはその手に乗りません。少しでも相手の言うとおりにしたら、すべて言いなりになって立場が逆転してしまうのです。主体的に生きなければなりません。

ATU311「妹による救出」。グリム童話の「フィッチャーの鳥」と同じ話型です。
恐いおはなし。

マルヤムは、アラビア語でマリアさまの意。


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カタリネラ―七足の鉄のくつと三本のつえ

カタリネラーななそくのてつのくつとさんぼんのつえ

イタリアの昔話

コルシカ島に伝わる昔話です。

七、三は昔話が好む数(昔話の固定性)ですね。鉄は硬い物、つえは鋭い物で、これも昔話が好む物の性質です(抽象性)。
主人公は三人姉妹の末っ子(孤立性)。
三人の援助者と、呪いを解くための三つの宝。
七足の鉄のくつをはきつぶし、三本の木のつえが(ドアをたたくことで)すりへるまで歩かなくてはならないという、極端に長い旅(極端性)。
援助者は、百年ものあいだ人に会ったことがないという、極端に長い時間。
昔話の語法にぴったりあった、分かりやすい聞きやすい話です。

しかも、イメージの豊かさにほれぼれします。
山のてっぺんにある魔法の城、その大広間、居並ぶ石の像。
大地から浮かび上がるお城。
大地から浮かび上がる水車。
山を登る主人公の周りで、森の木々は歌い、石は動き、動物はしゃべりだす。
想像してみてください。

さらに、この話では音楽が彩を添えます。
呪宝の梨、クルミ、アーモンドは、音楽を奏で歌を歌います。
ラストの一文は、一度使われた贈り物は二度と使われないし、日常的には使われないという、昔話の語法にはずれています。が、この部分、大好きです。
再話しているとき、頭の中で常に音楽が流れていました。それもあって、特に会話文では音楽的なリズムや音に気を使いました。

ATU444。話型名「魔法にかけられた王子が魔法を解かれる」
ヨーロッパに分布する話です。
呪いをかけられた者を乙女の真心が救済するという話は、ヨーロッパ中世に好まれた文学の素材だそうです。それが口承に下りてきたのですね。

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リカベール・リカボン

フランスの昔話

ATU500話型名は、「超自然の援助者の名前」
井戸端会議の、グリム童話「ルンペルシュティルツヒェン」を調べたときに見つけた昔話です。こちら⇒
主人公の設定、彼岸者の間抜けさ、などから、笑い話としてのおもしろさを楽しめると考えて再話しました。

リカベール・リカボンは、自分の名前を告げています。本来なら言ってはならないはずで、間抜けだなと思います。が、主人公は、気楽に考えてしまって、名前を忘れてしまうのです。やっぱり間抜けですね。
怠け者で忘れん坊の主人公に聞き手はいやされるのではないでしょうか。

歌の部分は、歌ってもいいし、ただ唱えるだけでもいいと思います。
1700年前後のお伽噺(ペローの姪レリチェ・ド・ヴヴィランドン)の物語(昔話をもとにした創作)に「リクダン・リクダン」というのがあって、この話には、歌に楽譜がついています。

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トロットリーナとおおかみ

イタリアの昔話

ATU333「赤ずきん」の類話です。幼児から低学年向きの話として再話しました。
 
とげの道といばらの道がファンタジックだなと思います。また、「トロットリーナ、トロットリーナ、三時におまえをつかまえる」「おおかみ、おおかみ、そうはいかない」の掛け合いは、まるで鬼ごっこの囃子言葉か童歌のようです。内容は恐い話ですが、子どもがよろこぶ恐さだと思います。
 
グリム童話の赤ずきんは、おおかみに食べられますが、トロットリーナは、「おしっこをしたい」といって、うまくおおかみから逃げだします。「便所に行きたい」で思い出すのは、「三枚のお札」「天道さん金の鎖」ですね。訳者の剣持弘子先生は、『イタリアの昔話』のあとがきで「本来この話は逃走譚ではなかったかとさえ思えてくる」と書いておられます。
 
トロットリーナという女の子は「赤ずきん」の主人公とはずいぶん違います。まず、お母さんが病気になったので生活は彼女にかかっています。そのきびしさからか、トロットリーナは花を摘んで道草をするようなことはありません。お母さんに化けたおおかみを見ても、すぐに正体を見破ります。そして、知恵を使ってひとりでおおかみから逃げだします。おばさんのスカートの中に隠してもらいますが、それも彼女の知恵です。
強いトロットリーナ、かっこいいですね。

テキストは『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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