「スリルのある話」カテゴリーアーカイブ

金のひげの巨人

きんのひげのきょじん

フランスの昔話

「かしこいモリー」や「ジャックと豆の木」とよく似たスリル満点の楽しい話です。

ATU328「少年が鬼の宝を盗む」

主人公が盗む鬼の宝が、いかにもふしぎな呪物で、想像力をかき立てます。

長い話ですが、スピーディに進むので、退屈することはありません。主人公も、敵役の巨人(たち)も陽気で、楽しく聞くことができます。

中学年から聞けると思います。


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ガラスの山

がらすのやま

フランスの昔話

フランスのロレーヌ地方の話です。ロレーヌ地方は、ドイツ語ではロートリンゲンといいます。ちょうどフランスとドイツのあいだにあって、かつてはひとつの国でした。そこで、独自の文化が残っています。

ATU400「いなくなった妻を捜す夫」
この話型の話はとても人気があるようです。グリム童話にも3話入っています。(KHM92「黄金の山の王様」、93「からす」、193「太鼓たたき」)
どうして妻(姫)がいなくなったか、探す旅の道中の出来事、妻を奪還するための戦い、と、ストーリーが進むので、長い話になります。
いろいろなおなじみのモティーフが組み合わさっていって、いかにも昔話らしい話になっていきます。

ここでは、冒頭が、羽衣のモティーフで始まります。日本の「天人女房」とそっくりです。そして、見てはいけないというタブーを冒したために、妻は白鳥になって飛び去ります。

妻を捜して旅する伯爵は、極端に年とった隠者三人に出会います。3回のくりかえしがあります。
とちゅうで、動物たちの分配をアドヴァイスするというモティーフがあります。
動物たちは、お礼に贈り物をくれますが、その贈り物が、妻を救い出すのに、ぴったりの力を持っています。状況の一致ですね。
魔法がとけるときには、場所の一致や時間の一致が奇跡を感じさせてくれます。
竜の頭が七つあるとか、竜の命のありかが図形的であるとか、まるで昔話の語法のオンパレードですね。


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りこうなうさぎと勇敢なやぎ

りこうなうさぎとゆうかんなやぎ

ブラジルの昔話

うさぎとやぎのチームプレーがうまいですね。
りこうなうさぎに対して、やぎは、おくびょうな部分もあるし、りこうな部分もあるし、のんきな部分も持っています。うさぎがトリックスターだとすると、やぎは、凡人、ふつうの私たちのような性格ですね。でも、友情のおかげで、「勇敢なやぎ」に成長します。

ブラジルの昔話には、先住民族が伝えた話と、ヨーロッパから侵略してきた白人たちの持ってきた話と、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人たちが持ってきた話があります。
「りこうなうさぎと勇敢なやぎ」は、どれだと思いますか?
ブラジルにはいないライオンが登場していますね。そう、黒人が伝えた話です。


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ヤーノシュと天までとどく木

ヤーノシュとてんまでとどくき

ハンガリーの昔話

ぶた飼いの少年が王国をつぐ話。
極端に高く危険な来を登り、異界に行き、竜をやっつけてお姫さまと結婚するという典型的な男の子の成長話です。

竜(または鬼・巨人)の心臓が、体の中にないというモティーフは、意外性があって好まれるようです。ひとつの話型にもなっています。

天までとどく木は、ハンガリーの昔話の代表的なモティーフです。
シャーマニズムの信仰世界がもとになっているそうです。現在もハンガリー社会に伝承されていて、日常会話や広告文にまで多用されているとのこと。シャーマンの太鼓に多く描かれていて、農民の道具類にも見られます。

http://shamana.jp/wp-content/uploads/2019/09/3-1.jpg


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コースチンの息子

こーすちんのむすこ

ウクライナの昔話

三人の息子の竜退治の話。

竜が、空から太陽と月を星を盗み出すという設定からして、とんでもないファンタジーです。
三人息子のうち、やっぱり末っ子が一番活躍します。でも、いざというときには上のふたりもちゃんと駆けつけて戦います。それが気分がいい(笑)
橋の上での竜と馬と息子の掛け合いが、かっこよくて気持ちがいいです。

スラブ民族の竜は、口を開けると上あごが天に届き、下あごが地に付きます。竜の大きさや勢いや恐ろしさをそういうふうに表現します。

切った張ったの戦い場面はありますが、まるでゲームやアニメのように図形的であとくされがありません。

3年生くらいから楽しめると思います。


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金の杯

きんのさかずき

ジョージアの昔話

ジョージア(グルジア)共和国で採録された話。

ATU467「すばらしい花(宝石)の探索」。
この話型の類話はあまり多くはないようです。

長い話ですね。
でも、呪物や彼岸者が次々に出て来て、魔法が満載で、飽きさせません。

そして、ストーリーを貫いているのは、ふたりの盗賊との友情です。
期限までに帰らなければ人質が処刑されるというのは、太宰治『走れメロス』を思い出させます。じつは、太宰は、古代ギリシャの伝承とシラーの詩をもとにメロスを書きました。つまり、この友情ストーリーは、さかのぼれば紀元前4世紀ごろからあって、その流れは今に続いているということです。
友情や誠実さというものは、常に人の心を打つもののようです。

ぜひ、高学年の子どもたちに語ってください。


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マルーラ

ギリシアの昔話

太陽の神、金のりんご。明るい雰囲気なのは、地中海の話だからでしょうか。

母親との約束で、太陽の神ヘーリオスは十二歳になったマルーラを連れ去ります。このモティーフはよくありますが、誘拐するのは魔女や悪者であることが多いようです。けれども、ヘーリオスは恐ろしい存在ではありません。悲しんでいるマルーラを見て、家に帰らせます。

マルーラを家まで送る動物として、ライオン、きつねは失格で、しかが送ることになります。
木の上のマルーラの姿が水にうつっているのを見て、魔女の娘が自分の姿だと勘違いするモティーフ。魔女の娘は三人です。
帰宅のとき、マルーラに気付くのは、犬、ねこ、おんどりです。
3回のくりかえしが重なって、リズムが生まれていますね。

マルーラが結局は母のもとに帰ることを思えば、この話を喜ぶ年齢は、あまり高くないと思います。


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海でも陸でも走る船

うみでもりくでもはしるふね

ノルウェーの昔話

ATU513B「水陸両用船」

王さまが、海でも陸でも走るふしぎな船を造ったものに、姫と結婚させるというおふれを出します。3人兄弟が挑戦しますが、末っ子が成功する話。よくあるパターンですが、どうやって成功するのか、その成り行きにわくわくします。

魔法の船については、空を飛ぶ船や、絵にかいた船が動きだすという話もあります。
古くは、紀元前250年ごろのギリシアのロドス島の詩人アポロニウスが書いた英雄叙事詩「アルゴナウティカ」に出て来るそうです。

主人公は、とちゅうで出会った男たちを船に乗せて行きます。男たちは、並外れた能力をもっています。その男たちに主人公は助けられます。
グリム童話の「六人男世界をのし歩く」を思い出しますね。話型的にはとっても近いです。


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注:語りは上記のテキストと表現が異なる部分があります。
これから語られる方は、テキストのほうが語りやすいと思います。




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ペトロシネッラ

イタリアの昔話

グリム童話の「ラプンツェル」やイタリアの「プレッツェモリーナ」の類話です。ATU310「塔の中の乙女」。その類話でも、『ペンタメローネ」の「ペトロシネッラ」は、記録された中ではいちばん古い形です。

前半のストーリーは、「ラプンツェル」と同じですが、後半は呪的逃走のモティーフですね。三枚のお札と同じです。

「プレッツェモリーナ」のページも併せて読んでください。こちら⇒

出典の『ペンタメローネ』について、ちょっと説明しておきますね。

『ペンタメローネ』

イタリアのジャンバッティスタ・バジーレ(1575~1632)によって集められた説話集(1634~1636年成立)。
枠物語(こちら⇒)で、10人が1日1話語った物語を50話集めてあるので、『五日物語』といわれています。
「長ぐつをはいた猫」「眠れる森の美女」「シンデレラ」なども収められていて、その古い形を知ることができます。
物語の舞台はナポリで、ナポリの風俗や習慣、信仰など、人びとの生活を、ナポリの方言で生き生きと表現されています。
バジーレは、小説家ですが、民俗学の先駆者とも考えられています。


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勇敢な娘

ゆうかんなむすめ

オランダの昔話

題名の通り、とっても勇敢な娘の話です。
寂しいお城でひとりきりで留守番をするお手伝いの娘。そこへ盗賊団が忍び込もうとします。
娘が、とびらの下から潜り込もうとするどろぼうの首を、斧の一撃で切り落とすところは、ぎょっとします。けれども、血も流れないし、むしろ、どろぼうたちのあたふたぶりがユーモラスです。昔話の平面性が現れているところで、切り紙細工のように描かれます(⇒こちら)。

後半は、ロマンチックな展開かなと思いきや、恐ろしい屋敷に連れ込まれます。
頭に銀のふたの乗っている若者は、盗賊の一味というより、彼岸からの存在のように感じます。
この屋敷からの逃走譚は、日本の昔話「油取り」と同じです。でも、油取りの主人公とは異なり、娘は、あくまでも勇敢です。

スリルがあって、怖くて、笑える話です。
高学年にどうぞ。
ATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」


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