「笑い話」カテゴリーアーカイブ

はえ打ちの勇者

はえうちのゆうしゃ

イスラエルの昔話

スルタンというのは、イスラム王朝の君王の称号。11世紀のセルジューク朝に始まるとされています。

主人公は、物乞いから王さまにまで、上り詰めるんですね。昔話の極端性がよく出ています。極端に低い身分ですが、幸せになるといったら、極端に幸せになるのです。
臆病者の主人公が幸せになるきっかけは、たまたまハエを千匹打ち殺したからです。そのあと、つぎつぎと偶然が重なって行きます。まっとうな苦労を重ねているわけではありません。性格は臆病だし、ずるいし、お世辞にもりっぱな人とはいえません。
昔話ではそんな主人公がときどき出てきますね。
そんな話を聞いて、笑い、主人公の幸せな結末に満足できるのはなぜでしょう。きっと、自分の中に「はえ打ちの勇者」的なものが存在するからだと思います。そして、そのような生き方をも肯定するのが昔話なのです。
倫理的道徳的なお説教はひとまず置いて、男の様子をイメージして笑ってください。

ATU1640。話型名「勇敢な仕立て屋(ひと打ちで七匹)」
笑話です。
グリム童話には、KHM20「勇敢なちびの仕立屋」があります。


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食いほうだいに食ったねこ

くいほうだいにくったねこ

ノルウェーの昔話

累積譚(るいせきたん)です。

ATU2028「すべてを吞み込む動物が腹を切り開かれる」
すべてを呑み込む動物は、おおかみであったり、はつかねずみ、くま、ひよこ、しらみ、娘、トロル、巨人、かぼちゃなどで、伝承によって様々です。
アフリカの「フライラのひょうたん」(こちら⇒)は、ひょうたんが飲みこみます。

じつはこの話はとても古くて、〈呑みこみの神話〉ともいわれていて、北欧神話『エッダ』にもあるそうです(未見)。
オーストラリアの一部族や、世界じゅうに残っているようで、興味深いです。

累積譚の語りかたについては《昔話雑学》こちら⇒へどうぞ。


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危機一髪

ききいっぱつ

インドの昔話

インドの昔話を読んでいると、ヨーロッパや日本の昔話になれた目では、意外な展開におもしろさを感じます。
ストーリーの違いもさることながら、宗教や文化の違いからくる生き方というか哲学というか、そういうテーマ的なものも多彩だと感じます。
それでも、悪は滅びるとか、誠実であると報われるとか、基本は同じですが。

出典『インドの民話』の序論で、編者のラーマーヌジャンは、女性が主人公の物語は女性が語ることが多かったと書いています。
男性を助け、救い、元気を取り戻させ、男性のために謎を解いたりするのことが、女主人公の役割となります。この「危機一髪」もそんな話のひとつです。

カースト制や一夫多妻制の中で語られたことを理解したうえで、女性の強さを楽しみたいです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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アルジャおばあさんのめんどり

イタリアの昔話

弱い者が自分を脅かす強い者をやっつける話、たくさんありますね。
子どもは自分が弱い存在だと本能的に知っていますから、強い者から逃げたり、強い者をだましたり、やっつけたりする話を求めているんだと思います。

「アルジャおばあさんのめんどり」は動物昔話です。幼い子どもが喜ぶ話です。
知らない地名が出てきますが、音の響きのよさで語ればいいと思います。

ATU122「嘘の言い訳で獲物が逃げることができ、動物は獲物を失う」という話型です。
グリム童話の「キツネとがちょうたち」など、色んなバージョンがあっておもしろいです。

テキストは、『語りの森昔話集5ももたろう』に掲載しています。こちら⇒書籍案内

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ライオンの王

エジプトの昔話

この昔話は、古代エジプトのファラオの国の影響が残っているコルドファン地方で語られていて、1923年に記録されたそうです。
古代エジプトは紀元前3000年位から紀元前30年といわれているから、ほんとうに古くから現代まで語られてきたわけです。もしかしたら5千年もの間語りつがれていたかもしれない。
人びとの考え方の変化によって、話の内容は変わっているかもしれないけれど、とにかく驚くべき長命のおはなしですね。

後半に、ライオンたちが肩車をしてはしごを作り、木に登っていくモティーフがあります。どこかで見た光景ですね。
日本の昔話では、狼がはしごを作ります。「千匹狼」とか「鍛冶屋の姥」などと呼ばれる話です。
世界的には、ATU121「オオカミたちが積み重なって登る」という話型があります。ここでも狼ですが、虎の場合もあります。
よく知られているのがフランスの昔話で「きこりとおおかみ」。これは、福音館書店から絵本で出ていて、おすすめです。山口智子再話/堀内誠一画。

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パティルの水牛

インドの昔話

パティルのすいぎゅう

話型名「運のいいハンス」
グリム童話の「幸せハンス」の類話です。
「幸せハンス」についてのマックス・リュティの興味深い解釈を、ブログ井戸端会議に紹介しています。こちら⇒

主人公が、つぎつぎに値打ちのないものと交換する話としては、ブータンの「ヘレーじいさん」があります。こちら⇒
これらはどれも笑い話ですが、どこがおもしろくて笑えるのかというと、思わず値打ちのないものと交換してしまうところ、そのたびに満足するところ、その愚かさでしょう。愚かさを笑うのは、優越感からと、自分にもそんな部分があるとの共感からとですね。
笑い話ならば、オチがあるはずです。オチつまり物語の結末が、類話によってずいぶん違います。語り手のの思いや、民族性によるのでしょう。興味深いです。これも井戸端会議で確かめてください。こちら⇒

重荷を下ろして楽になったハンス、嬉しい心のうちを歌いながら帰って行くヘレーじいさん。どちらも、なるほどと考えさせられますが、パティルは、物乞いにわずかだけど全てをあたえることで、全てを手に入れています。
無一文で帰って来たパティルをやさしく迎えるおかみさんは、まるで「かさじぞう」のおばあさんのようです。ふたりが翌日の朝日のもとで見た光景に、思わず涙が出ます。


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七十持ちのじいさん

ななじゅうもちのじいさん

モンゴルの昔話

おろかな巨人の話。
主人公のおじいさんの名前がおもしろいですね。

巨人は、牛をよこすか、それともベーコンをよこすかと、脅かしているのですが、あまり恐くありません。おじいさんがのらりくらりと指図するのに、素直に従おうとしています。
おじいさんとの会話は鎖のようにつながって、累積譚(こちら⇒)のようです。モンゴルの言葉で語れば言葉遊びのような楽しさがあるのかなと思います。

中学年以上のおまけの話にどうぞ。


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うさぎとねずみ

シベリアの昔話

数ある累積譚(こちら⇒)のひとつです。

ATU2030「おばあさんと彼女の豚」

うさぎは干し草を食べていて、葉で口を切ってしまったので、干し草に仕返しをしようとします。つぎつぎと手助けを頼み、聞入れてもらえないと、脅迫します。
結局うさぎの思い通りになって、干し草への復讐は成就するのですが、干し草がなくなっちゃって、いいのかな?
うさぎはかしこいのか、愚かなのか。子どもたちはいろんなとらえ方をするでしょうね。
真剣に考えてもいいし、でも累積譚はもともと言葉遊びだから、煙に巻いて笑っておしまいでもいいですね。

国際昔話話型カタログによると、ヨハン・フィッシャルト『遊び一覧』(1575年)に載っていて、子どもの遊びとしても知られているそうです。
1575年と言えば、日本では、武田勝頼と織田信長・徳川家康連合軍が、三河の国の長篠で戦った年。古くからある話なんですね。

累積譚は、「逃げだしたホットケーキ」など、いろいろなタイプのものがあります。しっかりした話のおまけにもなるし、2~3話レパートリーに入れておくといいでしょう。《昔話雑学》に「累積譚」として説明しています(こちら⇒)。


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さいふと笛とぼうし

さいふとふえとぼうし

フランスの昔話

ATU566「3つの魔法の品と不思議な果物」
この話型では、お金のなくならないさいふ、どこへでも行けるコート(または帽子)、兵隊を出す(または力をさずけてくれる)笛といった魔法の品と、不思議な果物(食べると頭に角が生える、または鼻が伸びる、またはロバに変身する、など)を主人公が手に入れて、それを使って幸せになります。
ただ、フランスのこの「さいふと笛とぼうし」、何が主人公の幸せなのかよくわかりませんね。分からないながらも、なんだかとっても愉快な結末です。

この話型の起源は古く、ヨーロッパ中世の文献にすでに記録されているそうです。
グリム童話のKHM122「キャベツろば」も同じ話型ですね。グリムのほうはちょっと教訓的です。

魔法の品については、《昔話雑学》「呪宝譚」を見てください。こちら⇒


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なぞなぞの好きなお姫さま

なぞなぞのすきなおひめさま

トリニダード・トバゴの昔話

ATU851「謎を解けない姫」
姫に解けない謎を出すことができた者と姫が結婚する話。主人公の男は、自分が経験したり見たりしたことをもとに謎を出します。
紹介したトリニダード・トバゴの「なぞなぞの好きなお姫さま」は、お姫さまが謎を解けずに主人公と結婚して終わりますが、お姫さまが謎の答えを知るために、寝ている主人公の所にしのびこんで、答えを聞きだすというモティーフが付くこともあります。その場合は、男は証拠としてお姫さまの着物を取っておき、あとでお姫さまの策略を暴きます。グリム童話22「謎」がこのパターンです。比較してみてください。

ところで、冒頭で、母親が毒入りの弁当を息子のジャックに持たせますね。ちょっとびっくりです。これはどう考えたらいいでしょう。
グリムの「謎」では、毒を盛るのは母親ではなく、森の中の悪いおばあさんになっています。
イタリアの類話「ソルダティーノ」では、なぞ解きに行くという息子に対して、母親はこう考えます。「王女さまに殺されるよりは、その前に、この手で息子を殺したほうがましだ」そして、パンケーキに毒を入れるのです。
ジャックの母親もこの心理だと解釈すればいいのかもしれません。でも、こじつけのようで無理があるような気がします。

そこで、この話全体がナンセンスな笑い話である、というところに解決を見つけました。
中盤の鎖のような展開は状況の一致が繰り返されます。小さな奇跡の連続です。日本の笑い話「間のいい猟師」のような展開ですね。
冒頭で母親が毒を入れた場面で、聞き手が「え~っ」とびっくりした後、考える間をあたえず、すぐさま中盤に入って行きます。驚きは笑いに変わります。
最後のジャックの出す謎は、中盤の出来事の言葉によるくりかえしです。ここも意外性があって笑えるところ。このなぞなぞの部分は遊びのようにリズミカルに語れるような言葉で再話しました。

結局、母親が毒を盛ったおかげで、ジャックはお姫さまと結婚して目的を果たすことができたのですね。

謎かけ姫については、ブログ井戸端会議で、マックス・リュティの解説を紹介しています(こちら⇒)。


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